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【第六天神社】元の御祭神は、織田信長が自称したという第六天魔王|けっこう参拝者が多いと思ったら…

茅ヶ崎駅と馬入橋の間の国道一号線を運転していると、歩道橋付近に、ふと目に入る神社があります。茅ヶ崎市の第六天神社です。
鳥居への階段を登っていく人々を見て、信心深さに感心すると予想を裏切られる結果に。
かつての御祭神であり、織田信長も自称した「第六天魔王」とは何者なのか? 首のない仏像、落雷にあった御神木、水準点などが混在し、聖域と日常が奇妙に微妙に交差する静かな神社。おそらくこの記事も第六天魔王の魔力によって書かされたものです。御祭神ではなくなっても、その力は衰えていないのかも。


第六天神社(だいろくてんじんじゃ)
茅ケ崎市十間坂3ー17ー18/駐車場無料・トイレなし
公式ホームページ:
神奈川県神社庁の紹介ページ
https://www.kanagawa-jinja.or.jp/shrine/1206069-000/ 
第六天神社の公式インスタグラム
https://www.instagram.com/dai6tenjinja/


■国道一号線に面した神社■

「茅ヶ崎駅前」交差点から平塚方面へ1キロちょっと。
上り車線のほうですが、第六天神社の鳥居が見えます。
笠木かさぎ(鳥居の一番上の水平な部分)が大きく沿っているのが特徴的です。

国道一号線直結。

それほど規模は大きくないのに、これだけ国道に直結している神社は珍しいです。
そして、けっこう多くの人が鳥居へ続く階段を登っていきます。朝などはもうかなりの数の人々。小学生も。
「う〜む、このあたりの人たちは信心深いなぁ。」
と感心してよく見てみると、みなさん鳥居をくぐらずに、左の方へ曲がっていってしまいます。

実はこの階段、神社への入り口と、歩道橋までの補助階段というふたつの役割をしています。左に曲がると、歩道橋があるのです。

階段を登って左へ曲がると歩道橋。直進すると神社の境内。

■御祭神は第六天魔王だった■

神仏習合、つまり神社と寺院が一体化していた時代、こちらの神社の御祭神は仏教の第六天魔王でした。本来の名前は他化自在天(たけじざいてん)
またの名をマーラ(魔羅)波旬(はじゅん)といいます。

ちょっとシモの話になりますが、男性器のことを「魔羅(まら)」というのは、この第六天魔王の別名に由来します。
これから説明しますが、なにしろ欲望の世界の支配者ですから。

この第六天魔王、織田信長が武田信玄に送った手紙の中で自称した神です。

他化自在天。寿命90億歳以上で美男子。あらゆる快楽を手にいれるという。
第六天魔王(たけじざいてん)を自称した織田信長。

ここで仏教の世界観を説明してもいいですか?
ダメと言われても説明しますけれどね。

よく仏教の入門書などに載っている、真ん中に須弥山しゅみせんという巨大な山があって…という形とは少し違った形で話を進めます。

まず、世界は縦に3ブロックに分かれていると思ってください。

そのうち下の方の第1ブロックにあたる範囲が第六天魔王の支配領域。
欲界(よっかい)と言います。
次の図でいうと、下の方の地獄界〜人間界〜他化自在天までが欲界。
文字通り、欲望が渦巻く世界です。

仏教の世界観のイメージ。

このうち、四天王天(してんのうてん)を第一天として、上へ数えていくと、他化自在天(たけじざいてん)が第六天にあたります。
そこに住んでいるので第六天魔王。
だから、言葉の区切りとしては、「第六天」+「魔王」なんですね。
なんとなく、「第六」+「天魔王」と思いがちですが。

住んでいる世界の名前も、支配者の名前も他化自在天です。
あー、ややこしい。
歯の治療に行く場所も「歯医者さん」と呼ぶし、そこで治療してくれる人も「歯医者さん」と呼ぶのと同じ感じでしょうか?

ここについては後でまた説明しますが、とりあえず第2ブロック、第3ブロックの概説に進みましょう。

第2ブロックは色界(しきかい)です。
なんか字だけを見ると、淫らな想像をしてしまう方もいるかもしれませんが、まーったく、そのような世界ではありません。

修行によって食欲も性欲も捨て去った方々が転生する世界です。清らかです。食事もせず、排泄もせず、清らかな光のような肉体で、精神的な喜びにあふれた世界です。
ここは第六天魔王には手が出せません。

しかし、色界の住人も寿命はめちゃくちゃ長いですが(「数億歳」とか、本当にめちゃくちゃ)、死ぬことは死にます。
すると、場合によってはまた欲界に生まれ変わることもあり得ます。
「どんな場合?」
という質問は、私の管轄外なので、どこかのお寺のお坊さんに聞いてみてください。

色界のイメージ。欲望ゼロ世界。

で、第3ブロックが無色界(むしきかい)
めちゃくちゃ高度な精神状態になった方が転生する世界で、肉体や物質が無く、精神だけが存在する世界。
でもやはり、いつかは死んで生まれ変わります。
「精神だけの状態で死ぬって、どういうこと?」
という質問は、私の管轄外なので、どこかのお寺のお坊さんに聞いてみてください。

無色界のイメージ。体も物質も無い。精神のみの世界。

で、さらに高度な高度な精神状態になると、この第3ブロックも突破してしまいます。するともう生まれ変わらずに無となります。
欲望も苦しみも無い世界。喜びもありませんが。この究極の無の世界が涅槃(ねはん/ニルヴァーナ)。そこへ行くことを解脱(げだつ)と言います。

で、第六天魔王の話に戻ります。
もし多くの人(というか生物、精神)が、色界以上の世界に行ってしまうと、欲界の住民が減ってしまいます。
第六天魔王=他化自在天は、他人の喜びも自分の快楽にプラスできる能力を持っているので、欲界の住民が減ると、彼自身の快楽も減ってしまいます。

だから、欲界から他の世界に行かさないように、修行の邪魔をしたりするのですね。

では、なぜそのような魔王が御祭神だったのか?
ひとつには、「魔をもって魔を制する」という考え方。
貧乏神や疫病神などは、第六天魔王から見れば雑魚ざこです。
それに、第六天魔王にとっては、他者の喜びも自分の快楽にプラスされるのですから、快楽をマイナスにする貧乏神や疫病神は駆除すべき連中。

貧乏神や疫病神を退治する第六天魔王。弓矢だって片手で使えてしまう。さすが。

さらに、現世でのご利益って、結局は人間の欲望に基づいたものではないですか。
その欲望の実現を、欲の世界の最高支配者に直接お願いするということです。実現すればこれまた、第六天魔王の快楽にもプラスされますから。

予想以上に第六天魔王の説明が長くなってしまいました。
だらだらとこういう文章を綴ること自体が楽しい私ですから、きっと第六天魔王が自分の快楽を増すために、私に書かせたのでしょう。

■いったん参拝しましょう■

仏教関係の説明が長くなってしまいました。
訪問記なので、神社に戻りましょう。

境内はそれほど広くありませんが、非常にきれいに手入れされています。
とても気持ちのいい場所です。神社にしては瓦葺きの屋根が多い印象です。

鳥居の前から撮影。境内のほぼ全景。

手水舎も瓦葺き。お寺っぽくて、神仏習合の名残を感じさせます。

手水舎。遠くから見ると、一見鐘楼と間違えてしまう。

社殿は小規模ながら、大変美しい建物です。全体のバランスが見事。

拝殿。裏手に古びた本殿がある。

拝殿の彫刻に目を奪われました。この彫刻はなんの場面なんだろう?

拝殿の彫刻は何を表すのか?

写真をペーストして、chatGPTに、
「これって何を表した彫刻だと思う?」
と質問してみたところ、
「能の『高砂たかさご』の、相生あいおいの松を表したもの。なぜなら、右に熊手みたいな道具を持った老婆がいるから」
という、頓狂とんきょうな回答が返ってきました。
いや、持っているのは熊手じゃなくて槍だから。

落ち葉をかき集めた熊手。

Geminiにも同じ質問。
「これは、楠木正成が部下を連れて敵の陣地を視察している場面。なぜなら、写真の左に『楠公なんこう』と書かれた千社札が貼られているから」
との回答。そんな千社札は貼られていないです。

なんともAIが心許ないので、結局自分で調べることに。
結果は「神武天皇の国見の彫刻」でした。郷土史研究家の文章が参考になりました。
つまり、神武天皇が部下を連れて、自分の国を見渡している像とのこと。

拝殿にかかった社名の額にも立派な文字。

拝殿のすぐ左手には、境内社の八坂神社(やさかじんじゃ)があります。
八坂神社といえば、御祭神は須佐之男命(スサノオノミコト)
こちらもしっかりと拝みました。

境内社の八坂神社。

こちらの社も、彫刻が目をひきます。小さいながら獅子に目が嵌め込まれています。それに木目を活かした質感が素敵です。彫刻家ってすごいなあ。

八坂神社の彫刻。

■明治政府の神仏分離令によって御祭神が変更に■

拝殿の右手には古い仏像が並んでいました。
この仏像は弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしゆいぞう)でしょうか? 
ポーズだけなら、如意輪観音(にょいりんかんのん)に見えなくもないのですが、いかんせん法輪を持っていないので、違うようです。

「明和三」と刻まれています。西暦1766年。今年が2026年ですからちょうど260年前に奉納されたもの。国宝や重要文化財でなくても、おそらく数えきれない数の人々が手を合わせた貴重なものです。

静かに佇む仏像。

かと思うと、脱力感満点の仏像が並んでいたり。
胴体の上に石が載せられ、シンプルな顔が描かれています。

胴体の上に石が載せされた仏像の数々。

すべての仏像の首が無くなっています。
おそらく首の部分は、明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)のときに、人為的に壊されたのではないかと推測します。

廃仏毀釈はいぶつきしゃくというのは、明治政府の神仏分離令を受けて、一部のひとたちが拡大解釈&暴走をして、仏教を排除しようとした動き。多くの寺院や仏像が襲われ、破壊されました。

仏師とかにお願いして、立派な顔を復元できなくても、身近にある石を頭にして、童心に帰ったような顔を描いたところに、かえって強い信仰心を感じます。脱力感、おおいにけっこうじゃないですか。

その近くには、墓石らしきものが並んでいます。
線香をあげる窪み、花瓶を立てたであろう窪みがあるので、墓石ではないかとの推測です。

右の墓石に掘られているのは、「見ざる、言わざる、聞かざる」でしょうか?
真ん中はちょっとわかりません。
左は双身道祖神そうしんどうそしんをかたどったものかもしれません。

墓石らしきものも並ぶ。

やはり、神仏習合時代の名残が濃厚です。

■現在の御祭神は「六代目」の神■

境内の角に「天津神あまつかみ 第六天神社」と書かれています。
天津神(あまつかみ)とは、天上の高天原たかまのはらにおわす神々。

境内の外側の東南の角に掲げられた案内板。

天津神あまつかみのうち二柱ふたはしらが、第六天魔王に変わる、現在の御祭神です。
それが、淤母陀琉命(オモダルノミコト)阿夜訶志古泥命(アヤカシコネノミコト)。人体の完成を表した神々です。
ほとんどの人が聞いたこともない神様でしょう。

『古事記』では、神代七代と呼ばれる神々の第六代にあたる男女神。
下の画像が神代七代を表したものです。
(「AIイラスト日本神話|1.天地の想像と神々の出現」より)

神代七代。今見ると、神々が現代的すぎ。

神仏習合の時代に、
「六番目の神様だから」
という、実にシンプルな理由によって、六番目の天にいる第六天魔王の仮の姿とされていました。

そのため、神仏分離令で、神社に仏教系の御祭神が禁止された際に、第六天魔王にかわって御祭神とされたのは、自然な流れだったのでしょう。

ちなみに、箱根神社の、三の鳥居をくぐったところから始まる参道の途中にも、境内社として第六天神社があります。
こちらは淤母陀琉命(オモダルノミコト)のみを御祭神としています。

箱根神社の参道にある第六天神社。

■御神木の黒松■

神社の裏手には樹齢200年の黒松があり、御神木とされています。
なぜかというと、昭和20年代にこの松に落雷があって折れたため。
身をもって神社を守ってくれた御神木とされました。

御神木の松。手を触れて力をいただく。

「大木+落雷」というと、東口本宮冨士浅間神社奉雷の杉(ほうらいのすぎ)を思い出します。
こちらは平成30年(2018年)に落雷に遭っています。しかし折れませんでした。
折れても折れなくても、神社や地域の身代わりになって守ってくれたことに違いありません。

■神社以外にもう一つ大切なもの■

参拝も終わり、茅ヶ崎駅近くの一号線沿いとは思えない境内でのんびりします。座るところなどはないのですが、ぼーっと立っているだけでも落ち着きます。

何も無い境内がいい。向こう側の瓦葺きの建物が社務所兼、どうやら宮司さんのお住まい。

目の前を猫が横切ったり、鳩が近寄ってきたり、のどかな限りです。

一定の距離を保ちつつ、逃げない猫。

境内の片隅に水準点を見つけました。
水準点とは、
「国土地理院が管理する、日本の土地の高さ(標高)を測るための基準となる点。そのうち一等水準点とは、全国の国道や主要道路沿いに約2km間隔で約2万点設置され、東京湾の平均海面を0mとした標高を基準に、土木工事や地盤変動の監視に利用されるもの」。

水準点。全国に2万か所。多いのか少ないのかわかりにくい数。

立て看板にも、埋め込まれた金属にも
「大切にしましょう」と書かれています。
大切にしたかったのはやまやまなのですが、どうやって大切にしたらいいのかわからなかったので、大切にできませんでした。ごめんなさい、水準点。

実際の直径は10センチくらい。

■分布にかなり特徴がある第六天神社■

明治時代の神仏分離令で、仏教的な御祭神が別の御祭神となり、神社名も変わってしまった、第六天神社はかなり多いです。
昔は武蔵国と相模国(つまり、埼玉県・東京都・神奈川県)で約4000社の第六天神社がありました。それなのに、西日本にはほぼ皆無。

特に、東京都と千葉県の境あたりには多かったようです。
そういえば、そのあたりには、ネズミ殿どのたちが住んでいる夢の国もありますね。
白いアヒル殿どのは、神社の池にいるアヒルを彷彿とさせます(そうでもないか)。
あそこもある意味、喜びという欲望の世界。
みんながあそこで喜びを感じれば、第六天魔王の快楽も増します。
もしかしたら第六天魔王が、あの地に夢の国を誘致したのかもしれません。第六天魔王の力は、現代になってもまだまだ侮れないようです。

Geminiに「ネズミとアヒルのキャラクターが住んでいる夢の国のイラストをファンタスティックに生成して」と頼んだら、モロに「あのキャラクター」が描かれてしまい、著作権の関係で全体像をお見せできなくなった画像。

■御祭神■

淤母陀琉命(オモダルノミコト)
阿夜訶志古泥命(アヤカシコネノミコト)

■御朱印■


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