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不合理を贅沢に変える「新しい仕組み」への思索

地方創生という言葉を聞くようになって久しいですが、事態が大きく進んでいるようには思えません。私自身、地方にルーツを持つ者として「どうすればいいのか」をずっと考え続けています。

安直に自分が戻ればいいのかもしれない。けれど、それでは一時の感傷で終わってしまう気がしています。必要なのは、そこに明確な価値があり、需要が生まれ、自然と選択肢に入るような「仕組み」を、今の、そしてこれからの技術で描き直すことではないでしょうか。

研ぎ澄まされすぎて、折れそうな都会

都会は資本主義ルールの極地です。経済合理性を是とし、あらゆる不便をお金で解決する。その結果、価値の尺度は「お金を持っているか」に集約され、私たちは常に未来の不安のために働き、蓄え、心配し続けています。

AIの発展は、この「効率の最大化」をさらに加速させるでしょう。鉛筆の芯をどこまでも鋭く研ぎ澄ませていくようなその競争は、確かに合理的ですが、**「いつかポキリと折れてしまうのではないか」**という、漠然とした不安を感じずにはいられません。資本主義は嫌いではないし、その合理性のおかげで今がある。でも、それだけだと何だか疲れてしまう。テンションが上がらないのです。

「公平」の罠と、地方ならではの「公正」

これまで地方は、都会と同じ利便性を求めて、無理にインフラを広げてきたように見えます。しかし、密度の低い土地で都会と同じ網(グリッド)を維持しようとすれば、必ず赤字になります。これは、すべての人に同じ高さの台座を配る**「公平(Equality)」**を、地方にも無理やり適用しようとした結果ではないでしょうか。

私が考えてみたいのは、その土地の個性に合わせた**「公正(Equity)」**なインフラの姿です。

例えば、自動運転やドローン配送が社会実装されれば、移動や物流の「裏表」は一気にひっくり返るはずです。AIとIoTセンサーの連携によって、人手不足を補いながら公共施設の規模を最適化できるでしょう。オフグリッドなインフラを構築すれば、老朽化した公共設備という「重荷」からも解放されるはずです。

既存の技術を掛け合わせ、新しい体験を編む

思えば、iPhoneも全くゼロから発明されたわけではありませんでした。タッチパネル、通信、GPS、音楽再生といった既存の技術を、最高に心地よい「体験」として掛け合わせたからこそ、私たちのライフスタイルを一変させたのだと思います。

今、私たちの周りには素晴らしい技術がすでに存在しています。そして各地には、この「新しいOS」を実装しようと格闘している先覚的な方々や自治体もいます。ひとつひとつの技術、ひとつひとつの活動をつなぎ合わせ、新しい価値を生み出す。iPhoneがそうであったように、既存のものを編み直すことで、地方という舞台に全く新しい「体験」を作れるのではないか。そう確信しています。

最大の課題:いかにして「苦労」を価値に変換するか

都会のルールは否定しません。でも、それとは別の「価値基準」でバランスを取れる場所がないと、人間は折れてしまう気がするのです。

そこで私が最も強調したいのは、先端技術で生活の土台を支えつつ、あえて残した「苦労」をいかにして価値に変え、人を引き付ける仕組みを作るかという点です。

かつてトム・ソーヤが退屈なペンキ塗りを「特権的な遊び」に見せて仲間を引き付けたように、不自由さを「自らの手で世界を更新する手応え」として再定義したい。

  • ワークアウトとしての労働: ジムで孤独に走る代わりに、村の修繕や薪割りに汗を流す。

  • 報酬の再定義: お金そのものを増やすのではなく、動いたことで得られる「火」や、目利きした最高の食材という直接的な豊かさを手に入れる。

  • 急がない移動: 全てをドローンに任せず、移動の「ついで」に誰かの用を足し、お裾分けを享受する。

テクノロジーは「何もしなくていい」状態を作るためではなく、人間が「自分の手で何かが直っていく手応え」を味わうための補助輪であってほしい。この**「苦労のラグジュアリー化」**を具体的にどうシステムに落とし込んでいくか。それが私の、これからの挑戦であり、最も深めていきたい課題です。

二つのOSを使い分ける、これからの営み

地方は決して「ゆるい」場所ではありません。都会より厳しい自然もあります。でも、そこにお金で解決できない「不自由」があるからこそ、自分の知恵と身体で生を実感できる瞬間が残っている。

都会の「合理」で頭を鋭く研ぎ澄ませ、地方の「不合理」で身体的な自信を補強する。

この二つのOSを、気分や深度に合わせて行き来できる仕組み。それが、研ぎ澄まされすぎて折れそうな私たちが、明日をちょっと楽しく生きるための、一つの処方箋にならないだろうか。そんなふうに、今、考えを巡らせています。


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