太く短く生きた人を、私は初めて見た。
若くして亡くなる人に触れたとき、私たちはつい言います。
「まだまだこれからだったのに」と。
それは本心です。
もっとできたことがあった。もっと見られた景色があった。もっと家族と過ごせた時間があった。もっと叶えられた夢があった。
残された人の立場に立てば、その言葉しか出てこないこともあります。
けれど今回、私は少し違う感情にも出会いました。
ご親族はもちろん、参列者の多くが口々に語っていたのです。
「あの人は本当に、全力で生きた人だった」と。
遊びも、仕事も、人付き合いも、家族への愛情も。何をするにも勢いがあり、熱量があり、妥協がまったくなかった。
毎秒、好きなことに向かっていた人。普通の人が数年かけて経験することを、数か月でやってしまうような人。人生の密度が、明らかに違ったのです。
一生に一度行けるかどうかという場所へ何度も行き、いつか叶えたいと思うだけで終わる夢を、次々と現実にしていた。
それは本人のためだけではなく、家族のためでもありました。子どもたちに見せた景色、与えた経験、味わわせた世界の広さ。年齢以上の財産を、すでにたくさん手渡していたように思います。
もちろん、もっと生きてほしかった。
その先の未来も見てみたかった。
本人だって、まだまだやりたいことだらけだったはずです。
闘病生活中は治療にも向き合い、希望を捨てず、改善の兆しもあった。だからこそ、誰もが「まだ終わらない」と信じていたのです。本人も「絶対に大丈夫だから」以外を語ることはありませんでした。愚痴をこぼさず、前だけを向き、最期まで新規事業を立ち上げ続けていました。
それでも運命は、決まっているのでしょうか。
その時は来てしまった。
その身体で、その名前で生きる時間は終わってしまった。
あまりにも悲しく、理不尽で、悔しい。私は大泣きしながらも、きっと彼はもう一度この世に戻ってくる最短ルートを探す活動をしているに違いない、というバイタリティのようなものを、ご遺体から感じていました。立派で強い印象を受けました。
私は、太く短く生きた人を初めて見たのです。
未来にやりたかったことは、きっと山ほどあったでしょう。毎日時間が足りない、あれもこれもやりたいと言っている人でしたから、人の何倍もやりたいことはあったと思います。けれど、過去に「やっておけばよかった」と悔やむことは、もしかしたら少なかったのではないか。そんなふうに感じるほど、全力で毎日を生きていた人でした。
後悔はあるでしょう。
本人にしかわからない無念もあるでしょう。
それでも、見送った多くの人が口をそろえて「あの人は何倍もの速さで生きていた」と語られる人生は、大きな誇りになっていると思います。
長く生きることは尊い。でも、濃く生きることにもまた、確かな光がある。残された私たちは、その光から何を感じるのか。
私は、「毎日を自分が生きていると実感できる日にしよう」と思いました。
遠慮ばかりして、なし崩し的に一日を消化することはやめようと。食べたいものを食べるという小さな選択、家族の思い出づくりを諦めない事。たとえ達成しなくても、やってみたいと思う事に手を出し、ここまでやってダメだったらと思えるまでやり続けてみる事。
人生は選択の連続で、運命はあるかもしれないけれど、大抵「その人らしく」毎日を生きているんですよね。人を羨ましく思って真似たとしても、それは決して、「私らしさ」にはならない。
「自分には何にもないな~」と思う時があるけれど、命はあるんですよね。まだ私たちには、今日がある。未来を進める選択肢が残されているんです。
今、家の中は百合の香りでいっぱいです。今朝リビングに入ってその香りに包まれたとき、「今日も命をありがとうございます」って自然に思ったんです。今日の命をどう生きよう、そんなことを想いました。
時に。人生には目標があって、そのゴールに向かって生きてこそ、という考えがあるのですが、人間の最終地点はみんな同じなんですよね。ゴールはみんな、同じ。
どういうルートを通ってそこにたどり着くかが違って、そのルートを毎日選択する、その権利が命があるということ。
その権利はとても尊く、ありがたいこと。
誰の物でもない、まずは自分のものであっていいということ。だから好きに生きたらいい。「好きなように生きている」という姿が見られるとき、それは誰かを元気づけるのかもしれません。
この数日間、私は生きているという実感を味わいながら過ごしていました。「何を食べようかな」って真剣に考えて、トマトを1つじゃなくて3つ食べました。そんなこと、なのだけれど、それが私が生きているという事です。
あなたも、好きに生きてください。そして好きに生きている証を残してください。それはまた誰かの「好きに生きる」につながるのだと思います。
これは、眩しいほど好きなことをたくさんしていた人から教えてもらった、生き方です。
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