苦手はダイヤモンドの原石だった第2章 比べることで失った自信 -第1話-
苦手はダイヤモンドの原石だった
─恥ずかしさの奥に眠っていた“わたしの好き”─
✍️著:Emi
第2章 比べることで失った自信
第1話 風の中で失った声
小学生の頃の私は、人前で話すことが好きだった。
入学式では代表で挨拶をし、
中学では委員長や部長、生徒会として、
いつも前に立つことを任されていた。
けれど、ある頃から空気が変わっていった。
誰かの一言をきっかけに、
断れない空気、笑いの中心にいないといけないような雰囲気が、クラスの中に流れ始めた。
その時から、私は“耳を澄ませるように”なった。
周りの笑い声や掛け声を、
少し離れた場所にいても聞こえてきた。
そして、凍りついたような視線を感じたのも、この頃だった。
人の目を気にするようになり、
自分の存在の大きさや、声のトーンさえも探るようにしていた。
気づけば、自分の声はどんどん小さくなっていった。
「うるさい」と言われたわけじゃない。
でも、どこかで“届かない”と感じていた。
声を出しても、"心"までは届いていないような気がした。
その感覚を抱えたまま、私は“静かに”を選ぶようになった。
大きな声を出すよりも、空気を読むことを優先した。
それが“優しさ”だと思っていたのかもしれない。
“優しさ”という言葉で、
"自分を表現すること"を押し殺していたことに、
そのときの私はまだ気づいていなかった――。
甲高い笑い声や、グループが周囲に迷惑をかけることを、
「正しくない」と感じていた私は、
静かでいることこそが正解だと、
自分と約束してしまっていたのかもしれない。
風の音が静かになったように、
クラスの雰囲気はいつの間にか穏やかになっていた。
私はただ、その“風”を見ていた。
その中で「嫌だな」と言葉にしてくれた親友がいた。
彼女とは今でも繋がっていて、
今でも心を通わせながら笑い合っている。
けれどあの頃の私は、
流される人の多さと、
風がすべてを変えていくことを知った。
そしてもうひとつ、気づいたことがある。
どんな出来事にも、突然の終わりが来るということ。
まるで今の「風の時代」のように──
目に見えない流れが、
私たちの心の向きを変えていった。
あの頃の私は、
風に身を任せながら、
いつのまにか自分の声を小さくしていた。
でも──
本当はあの頃、心の奥で気づいていた。
私は“生き続けること”を、自分で選んだのだ。
ほんの一瞬、命の道が見え隠れしたあのとき、
私は「生きる」ことを選択した。
あの瞬間が、私が“自分を生きる”と決めた原点だった。
たとえ声が小さくなっても、
心のどこかで確かに、私の声は生きていた。
だからこそ、今こうして思う。
私は本当は、声を出したい人だった。
誰かの言葉に流されるのではなく、
自分の声で風を起こしたい人だった。
あの頃、私は風の中で、自分の声を見失っていた。
でも同時に──
その風の向こうで“もう一度声を取り戻す未来の私”が
静かに待っていることにも、
どこかで気づいていたのかもしれない。
💫次回予告:第2話「心の扉がそっと開いた日」
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