【読書手術】 #毎週ショートショートnote
「サインイン」
麻酔科医が画面を見ながら読み上げる
「患者:読書大助、三十歳
病名:読解梗塞
術式:冗長文章影響緩和・比喩過剰耐性調整
既往歴:長編途中離脱
入力済み」
「確認」
無影灯の下、患者の胸には分厚い本
文章の重みが胸にのしかかっているせいか呼吸は浅い
「タイムアウト
最終確認」
看護師が読み上げる
「患者名:読書大助」
「確認」
「術式:冗長文章影響緩和」
「確認」
「執刀開始」
「認知圧迫確認
理解力限界です」
「摘出」
冗長表現の影響を示すモニターに沿い
慎重にメスを入れていく
「比喩中毒過剰」
「減量」
中毒の表示が赤から緑に変わり
負荷は軽減された
急にアラームが響く
「減らし過ぎか」
削り過ぎると読書意欲まで失われてしまう
「少し戻そう」
回りくどいと思われる比喩をいくつか戻すと患者の顔に赤みがさし波形も安定した
「サインアウト」
「切除標本:冗長表現二百字
比喩負荷軽減済み」
「確認」
執刀医は汗を拭きながら
「これでまた読めるだろう」
と言い
カルテにはこう残した
再発の可能性 高
(420字)
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