XSサイズの視野
都合の悪い思い出をハンドクリームに乗せて手指に擦り込み、繰返して流水で落とす。無駄に消えると解っていても止められなかった。パンデミック騒ぎから暫く、話題の頂点から降って以来埃を被っていた消毒液を久し振りに使ってもみたのに、綺麗には消えやしない。信じる者は救われると言うが、己の昨日すら信じられない身に救いとやらは縁が無いらしい。
可愛い花模様のダイアリーには変わり映えの窺えない様子が続き、有ったとしても頭痛が酷いだの天候とくらいしか付き合いのない淡色の日々、そして語彙が乏しく指示語を多用する程度の文章能力である証となっている。折角、帳面を付ける為にと買ってみた憧れの万年筆も寝転がったままインキを燻らせるばかりだ。
おもしろきこともなき世をおもしろく、できたらどんなによかったろうか。予測変換で繋げていった文章の先には不思議な洞が在しているとの噂話の輪にも、其の内足を運んでみるねと背を向けていた。同窓生達が個々人の感情や思想を持っていたと云う仮定の物語に竦んだままの足は、鰐の餌にもならないのだろう。
