脱走癖と林檎

サブ・カルチャーが一世を風靡する。省かれたら一斉に隆起する。貴方は何時にお休みになるのですかと間接照明を点け乍ら寝惚け眼で訊ねられましても、一体どうして斯様な思慮を抱えておちおちと冷え転がっていられましょうか。輪郭から枝葉の枯れ落ちてゆくハラワタは、屹度いつか司法解剖の末に〝眠りとは一時的な死である〟と云う或る種の達観への反発が認められ、誰の手にも負えない煤へと帰りましょう。

えっちらおっちら足を引き摺って辿り着いたのが理想郷なら何れ程に絶望した事だろう。背に当るのが体温を吸った寝具であるからして、今にも陥落しそうな砦は幼稚な秘密を護っていられるのです。害虫達からも顰蹙を買うざまを見せる素直の醜さには、マキシマイザーをうんと強く巻き入れましょうね。

剥き出しの剃刀は泥濘の恨み言に捨てました。血を拭いたタオルは矜持の微睡に埋めました。薬瓶は涙の灰で燃やし、注射器でしたら鉛の雨に隠して、縄ならばとうの昔に手品でパッと一振り、無かったものとして貰いました。赦されたいとの気持ちだけがメリーゴーラウンドから手を振ってくれます。誰から。何から。判りゃしませんが、わたくしなりに其の愛しき姿は大切に写真に収め、フイルムが泣き疲れた頃に抱きしめて眠るのでしょう。

キャンデーをあげるから、近くにおいでよ。