用法用量知らん顔

傷だらけなのは自分だけのような気がしていた。不明瞭な昨日と不明瞭な明日に挟まれて斜め向うの空を目指した人差し指に怪我を負う。如何して生まれなければならなかったのか。よりにもよっての虚空に吼えてみるのは、返事が無いと分り切っていたからだ。他人と痛み比べをしたって痛いのは此方だけ。明らかだから、そうしてしまう。背比べドングリの方が幾らか公平というものだ。

自己同一性を保てなくなり、高価な椅子を買う。其の華奢さときたら、嗜虐性の反吐を誘う。言語野が薄切にされ、遠くに白い服の聖女が歌う声がする。服の色なんて確かめられないのだけれど、四声を操るのだからそう信じ切れた。油彩画の襞に余りがちな慢心なんざ、ミートボール・パスタの何処かに逃がしてしまえ。絹の歯ざわりなんて、忘れちまった。憧れの三年生に焼いて貰ったCDの収録曲も。初めての後輩に教えた美味いラーメン屋の名前も。同級生と揃いで買ったピアスの行方も。此処にある感情を表すに適したラベルに記すべき単語の、意味も、綴りも。

無機質な翼が正義感を包み込んで、黒い白鳥と白い鴉の罪を掻っ裁く。下調べには青紙の数を地上二百メートルから確認していた。管楽器が揃って歌う自尊心で闘う為のファンファーレは誰にも止める事はできない。其れは蒸気機関車に飛込むのと同義。メタファーに富んだ品揃えが豊富な百円ショップでは十円玉と百円玉を使わずに支払った。紙幣に刷られた偉人が疎ましそうに財布からちらり、会計の遣り取りを覗き見ていた。けれど屹度此れも持病の一ツが寄越した便りで、帰宅ざまに香典袋に隠してしまうつもりだ。

服薬を辞めよ辞めよも逝けのうち。九階から〝誤って〟転落すべき時は近い。