いきものばかり

昔読み漁った図鑑でもインターネットやテレビでも見たことのない、拳くらいの大きさをした毛玉みたいな生き物が、アップルパイを乗りこなし乍ら換気中の窓からマウス操作をする手の甲に流れ着いた。なんだおまえは、と丸いフォルムを指で弾くと、一ツ目にむっと力を入れて咬みつこうとしてくる。けれどそいつでは力及ばず、コロン、と前転してデスクに落っこちてしまった。

もてなしに共に食事でも、としたって冷蔵庫は空だ。菓子などの買い置きも無い。奴が乗ってきたパイが本当に食べ物なら一人と一匹で分け合うのが良案かもしれないが、其れでは愛想に欠けるだろう。なのに口に入れるものなんて、家にはカプセル錠の総合感冒薬くらいしかない。

牛乳でも買ってこようか。留守番は出来るかい? と言葉が分かるか否かは知れないなりに訊ねてみると、そいつは左右に揺れた。溜息を逃がして、また指で毛玉をひと弾き。甘えん坊さんめ。奴の乗り物はとても美味しそうな焼け具合をしているのだけれど、ああ、腹が減ってきたな。こいつの方は火でも通せば食えるのか。解らないが、暴れる毛束をつまんで生物をキッチンに連れて行くことにした。