うつくしい午睡

息苦しくなって手掴めない水面に指を重ねた。最低気温は全国的に今季初めて涙と同じ数値となり、生き別れた補助輪が郷愁を擽る。絶望がよく視える屋上で展げた翅は潜在意識の書庫に我を忘れ、整頓の難しい憂慮が刮目するのは眉根を解いた町の違和感ばかりだった。樹の根で反時計回りでぬったりと歩みを繰り返す小人達はどうも回路が焼け切れており、気が動転した者から順に輪から逸れてゆく。其の様はまるで昨日、普段気にも留めない雑誌の表紙に居付く偶像の卵と目が合った瞬間の自分の様で、とてもじゃあないが他人事だと片付けられはしなかった。

後ろ暗さの満ち欠けは、録音してきた譫妄を押し退けてたった先先月迄の日記の背景に強がりの線描を添えている。仔細な示唆に富んだ気圧配置図が何を言いたいのかは充分には伝わらなくて、唯、俯いて拗ねていた幼体を愛しんで抱き留めた。ダ・カーポが何十と打たれた時間では天蛾だけは犠牲になれず、流木に擬態したい人間ならば次次と球体関節の身体へと羽化していった。悪い夢を見ない為のお薬は飲んだから、あとは今宵もどうか手を確りと繋いでいて。屹度離さないでいてくださいね。