点描の踏切板

小匙一杯の知能指数で描く肖像画の口髭はやけに尖って、先端に蟻が四匹集って宴を開く。目隠しでより明確に見える世界は、家庭科で習った返し縫いだけで作られた継ぎ接ぎの貉が集う巣穴だ。其処に在るディスカウント店で可愛い札を首から下げた御人形は、口がきけるから値引中なのだと店員から説明があった。連れて帰ってもよかったが、生憎口のきける冷蔵庫が家に居るので喧嘩をしてはいけない。惜しい気持ちも抱きつつ、遠慮をしておいた。

頭が空っぽに出来たなら何を詰め込もうか。出し損じた遺書か、初めて書いた小説擬きか。年を追う毎に段々と盤面の数字が減ってゆく大きな古時計は何を思う。振り子が下手くそに泣くから、規則的な動作は今や目も当てられない。タイム・カプセルの存在や、埋めた場所、中身に至る迄も憶えているのに、一緒になっていた友人達の顔も名前も思い出せない。友人だったか否かも判らない。誰だっけ、どれだっけ、何だっけ。

跳び箱を上手にとべたら褒めて貰えた。ドッヂボールで活躍しても褒めて貰えた。でも、自分の背中にひたりと寄り添い続けてニタニタ嗤う希死念慮を思い切り蹴り殺しても誰一人、褒めてはくれなかった。