白雪姫の罪状
クラスのあの娘は吐きダコのある指で菓子パンを齧る。何故だか彼女がそうしたなら周りの雄はみな決まって酷い眩暈を覚えるらしく、多分に漏れず他の男子生徒が潰れてゆくのと同様にぐったりと椅子に捕まって座位を保っていると、あの娘は貴方もお腹が空いているかしら、としゃがんで、ひとちぎりふわり、口元に寄せられた。其れはとてもじゃあないが悪趣味な香水の臭いがして、反射的に両眼を固く閉ざして意識を保とうとする。「いらないの? とってもおいしいのよ」と頭上から降ってくる声は、虐めっ子の囃し声とよく似た周波数だった。迷走神経反射が加速してゆく。
髪が掴まれる。いらないの。また、問い掛けられる。より此方へ伸ばされる手の袖口は、制服が負った力に任せて細く白い手首の躊躇い傷を恥ずかしそうに見せてくれた。半ば自棄の精神で差し出された物体を口腔に招き入れる。餌付けを受ける様に、或いは躾を受ける様に。恐々にも薄らと視界を開けると、的外れな位置では数匹の虫がひっくり返って足を全部違う方向に蠢かせていた。どうして君は美しい。それも、残酷な形で。瞳に入るだけで、人死にさえ起こす。先月新たに法に加えられたと報道があった〝美罪〟は、こんなにも身近で犯されていたのだ。
