揮発した良心
なにか、どこか、様子がおかしいのです。ラムネ菓子の離脱症状でしょうか。猫の尾骨を図書館に忘れてきたからでしょうか。一対の目玉を持った薬草を沢山摘んできたからでしょうか。頭痛や眩暈等の身体症状ではなく、精神状態の問題でも屹度ありません。ですが今のわたくしは、箪笥に頭を突込めば桜の花弁が降る春先の実家に帰れる気がしてしまっているのです。建物ごと、疾うに壊されて長いというのに。
痩せた背を飾る翼らしき抽象画に沿わせる指に嵌めた装飾品の彫り細工は鍵盤を模しており、如何に音を愛しているかの主張とし、脊髄だけになった彼を彼たらしめています。黄色いハンカチーフが季節風で解凍されましたら、あの空の下で、あの丘で、また逢いましょう。不確かな約束を結ぶ頬が幼かった。
虚弱体質を治すには、心へ施すスカリフィケーションもまた有用です。一ツ、椿の形でも飾ってみては如何でしょうか。今度の休みには、気の合う仲間と誘いあって、賞味期限が切れて暫く常温放置されてしまった可哀想な蒲公英を皆で食べる集まりを行いましょう。その際、手土産は結構ですので、生きた状態でいらしてください。そして、必ず、生きたままお帰りください。
