滑らかに象形
マイナー・スケールに紐付く程度の物知らずな指は月の微笑を想起させ、窓枠に閉じ込められた美学を蒸留する道具を片手に針金の梯子を下ろした。斜陽差し込む胸の内、迷う割には其れも無知。腰の曲がった紳士に調律された昼下がりは温柔な態度で蓄音機を傾けて、機嫌を良くした婦人はある筈もない洋菓子の靴からアラザンを取り除くのに夢中な様子。手を取り合って心中する角砂糖達は縦並びの立ち位置を惜しむでもなかった。
綿飴が負わされた幻想文学の頁を捲る指先は小さな傷がびっしりと守っており、少なくとも白鳩が食事の時間を報せる迄はと度入りの万華鏡が瞬きの隙を突いて紙の質感に光の反射を差し込んでくる。洒落た壁紙が興味深そうに覗き込む小口染めは次々に小学生の頃からの秘密を暴かれてゆき、溜息の栞はよく伸びたあの日の陰影と同じで、死を覚悟するような深さでありながら角が丸かった。
夜景を腹一杯に食べた雨に濡れて帰ってきたら、最初に何を見ようか。手拍子が上手な水溜りが綺麗だと教えてくれたあの子の為にと始めたかぎ編みの練習の続きをしようか。
