セロトニン鷲掴み
この町の喫茶店やスーパーマーケットの上階に構えられた医療フロアは今日も混雑。消化器内科、歯科、霊媒科、黒歴史科、等等。中でも悪夢科の診療所はとみに賑わっている。長蛇の列は折り返され、二往復。斯様にも自分と近似した苦を持つ人間の数があるのだなと、同情に似てはいるが自分の方がもっと苦しいんだぞと云う下らない対抗意識が発火して直ぐ燻った。
心療内科を中心に『待ちは三時間・診察は三分間』と云う評判を頻繁に見掛ける。悪夢科診療も其方に漏れないが、自分としては暇潰しを幾つも持参するので不服はない。診療時間が三分間である事にも満足している。様子を伝え、応じた処方をいただく。充分だ。来ているのは診療所であり、お悩み相談室ではないからだ。
唯、時々待ち時間に診察室内の様子がどうなっているのかは気になる。ミッキーマウスと写真でも撮っているのではないだろうかと。だから長蛇の列を作っても患者が殺到するのではないかと。どうしてか今日は普段の通所より待ち時間が長い。いよいよ、グリーティングが行われている期待が膨らんでしまう。
ふわふわのぬいぐるみと優しい香りの処方箋を手に調剤薬局と帰路に向かう自分の足取りはとぼとぼと落胆を帯びていた。診察室に、ミッキーが居なかった。遅い時間に来たから帰ってしまったのかな。次は、なるべく早く来ようと思う。スマートフォンのストレージも多めに空けておいて。
