恋は盲目、愛は牢獄

人工の快楽に揺蕩うナルキッソスの蒼白な唇を啄む小鳥、の足にキツく結ばれた手紙。記されたのは分不相応な庭園が実らせた果実の艶あるいは官能の首飾りへのイザナいであった。今日も頬を紅潮させ乍ら少女は生脚で欲を絞め殺している。最果に位置するカフェーの給仕は前歯が不揃いで、其其が小刻みに揺れながら噂話を交換していた。陳腐なデカダンスが飽和する。

あたしって、意気地なし。そう放り捨てられた剥き出しのI字剃刀は、持ち前の美貌が霞むまで涙を溜めて膝を折る。〝常識〟と云う名を持つ毒牙が掻っ捌いた人魚の腹を白蛇の巣から伸びる尾が愚弄する所為で、愛が足りないのだと繰返したエナメルのボンデージは意図的な甘ったるい囁きを漏斗で飲まされ息もつけないでいる様子だ。

立入禁止区域に置き捨てられた赤い靴が示す方角に、不服そうに自慢の髭を曲げる黒猫。今度は誰を玩具箱に連れ込むの。明日なら手足を捥いでもいいの。無垢の象徴を首飾りにした天使が隠れん坊をしている間にスープ皿に吐瀉物を盛っていたのは誰の罪なの。尊い問いのエスカレーションがおとなの教養をむしゃぶり尽くしてゆく。此処から視えた未来につける薬について、淡水魚は黙して語らなかった。