高層無形
此の儘ではいけない気がしてならず、積木を蹴り崩した。巣を奪われたみたいに烏骨鶏の雛が散り散りに逃げてゆく。窓硝子一枚を隔て噂話に興じているのは誰だっけ、何の動物だっけ。乱雑に重ねた雑誌の表紙を飾る人物がビニル紐の隙間から湿地帯の瞳孔で心の揺らぎを敏く追いかけてくる。
〝こそあど〟で完結する自問自答は一本脚跳びで進んでは戻り、気の利かない玉葱から野次を受けては足裏を朱肉に埋めた。こんな珈琲豆が土砂降りの時間には一寸御洒落をして出掛けませんか。ガジュマルが纏った衍字の泥を払ったら、悩みも悔みも何処かへ隠れていてくれるから。姿を消した後どうせなら殺すのは息だけでなくて良いのにね。昨日先延ばした事柄を今日も先延ばして、更に先では麝香で猫の神様が爪を研いでいる。盛者必衰の理りも右から左。何処かの夕飯の香りがする少し冷えた風も上手く通り抜ける。
大丈夫になれない日は、大丈夫でなくってもいいよ。明日も明後日も、大丈夫じゃないかもしれない。半年後も一年後も、何年も後も、ずうっとそうかもしれない。大丈夫って何なのだろう、と、ふとして立ち返る時、其処にはなんとか大丈夫だった足跡が残っているよ。はあ。左様ですか。ふざけるのも大概にしろ。おれを大丈夫にしてくれ。今すぐにだ。
