稲妻で三つ編み

幼稚園の図工の時間にて意味もよく解っていない〝おかあさん、いつもありがとう〟を疑念も起さぬまま保育士の指導に従って書いた記憶を持している。埃を被った作品のよれた字列に添えた母の絵は、にっこりと笑った顔でスーツを着、足が六本あった。懐かしがって手に取るにはあまりに泥の臭いが強すぎた。

訳もなく胸が切り裂かれる思いは軈て恋の錯覚へと誘うだろう。同様に、場違いなふうわりとする環境音楽が精神に侵入すると神経を穿られた際にイダく正義感こそ迷路が手招く合図。切れ切れに何かを訴えるマジック・テープの姿をした輪状の医者には、誰の心も救えそうにないと匙を投げるにも秒読みであった。

有りもしない優しさが頭を撫でる幻想に狂って仕舞う前においでよ、パステルで完成された一角獣の所迄。スボレキサントよりずっとずっと素敵な夢へと瞬時に連れて行ってくれるのだから。半覚醒状態には薄紫の国に浮いている雲達が一斉に耳元へ集まって、囁く。人間共の大腿骨は今に新製品の菓子として田舎のコンビニエンスストアから順番に並んでいくのだよと。かわいそうにね、だけれど、すてきでもあるよね、と。

しくしく泣いている斑な極彩色の肺。此の目で確かめた訳ではないが、不思議と色形の確信が有る。胸から生えた針より鋭いパトスの尖端が憎まれ子の四時台半ば過ぎを串刺しに出来るのならば、ビイドロの中で逆さに写る像をじきに彩ってみせられるのだろう。

人生の宿題にあたる遺書は、未だ章毎に宛てた者の固有名詞すら穴埋めが進まずにいる。