天国と恥辱

男は齢三十九にして落とし所が結局見付からなかった拙い童話で全身を強く打って死亡したと云う。人魚姫の心臓にはとびきりの真珠が、狼の食べ残した赤い頭巾には縫い手に託された愛情が。綺麗ばかりを継合わせた情景は彼の何よりの憧れと渇望の対象であり、夢と現の境目が分らなくなり足元を誤ったのだろう、と、成金らしい縫製なのに草臥れた背広を着ている薄汚いコメンテーターが説いていた。

銀色は銀ではないし、水色は水でもない。口八丁の色鉛筆セットが子ども達の想像力を狭めているのだとするならば、其れを自覚する様なひねた成長をした身では虹の絵を一向に塗れず俯いているしかない。如何縛ったって潜在意識の巾着袋は中身が千千に逃げてゆくから、額に飾られている手も足も出せなかった人間の生首は増えていく一方だ。焦燥に駆られてのボディ・ピアッシングが、そうこうしているうちに相当な相乗効果の構想を早早に仕上げてくる。

名も顔も知らない〝いつもの人〟の裏返しが怖くって、先に螺子と尻尾を巻いておく自身の頭を自分で撫でていた。耳慣れない言葉を聞く度に己の学の無さを責められている気持ちがして、頭の良い人は易しい表現を選ぶと云う話に凭れ掛って、一息。