色無し蜜柑
彼方からの遠吠えに耳を塞いで、自分の中の幻想に閉じ篭った。やけに家鳴りが多い今日此の頃、頭の中で編んでいたセーターは端から小動物に齧られて中々着られる出来に及べそうにありません。己の中の何某かへの差別意識が鬱陶しくって、鼠の土砂降りのもと、一人、傘を閉じました。中立者になりたい訳でも、差別をよしとしない訳でもなく。ただ、関連情報が視界にちらついた時に頭ではじけるグミのやり場にいよいよ困ってきているのです。
点滅する台所照明には金持ちの蛾だけが集い、過去かき捨ててきた筈の恥たちはコンベアに乗ってゆったりと順繰りにやって来ては丁重な挨拶をくれました。この出来事は、ええ、中学生の頃でしたっけ、ならば如何して決して取り返せやしない今のわたくしがこんな物を見せられ、こんな物に向き合わなければならないのでしょう。嘗ての通学路でわたくしの無邪気が傷つけた男の子を模した泥人形の笑顔がジッと様子を窺っていましたから、みっともなく叫び声を上げて飾り棚に皿を投げつけて全てを小鳥の群れへと変えました。
大人になってからは、〝みみ〟が付いたサンドイッチの両端が好きです。余り物めいた存在に屹度、親近感を覚えていたのでしょう。
