なりきり苺ケーキ

晴天の霹靂。やい、やい、空前絶後で前代未聞の出来事ぞ、と町に号外を撒き回る男が肌で背負った白虎画の贋作は、若気の至りだと当人のよく滑る革靴から辟易を余儀なくされちまう程には語り尽されていた。然し紙面の巨大な写真には御丁寧に大袈裟に二色刷りを施されている。虎を泉源にした青色の大溢流の為だけの待遇だ。そして指し添えられた、〝ああ、なんてかわいそう!〟の文字は角ゴチックのボールド体。此れでは宛ら、晒し首のセルフ・サーヴィスじゃあないか。
高い高い鼻っ頭に併設された建築物の応接間でしか味わえなかった黴臭さとよく似ていた。醜態を糖衣の代理とした後発品の粉薬だ。そんなもの、崩れきって屑籠の中でめそめそと泣いている生クリームの白粉にくれてやって仕舞え。

河川敷で拾ったキャベツはコウノトリに貪り食われ、婦人の下腹部あたりの内臓は抉り取られている。彼女が押している乳母車で微睡む人形は手垢だらけでナイロン髪も燻んでいた。とは云え、ヒトの心臓を模しているらしき縫い包みが与えられている様を見るに、誰より充分に、眩しいまでに愛されているのでしょう。
すると、給仕らしき姿格好の者が追い掛けてきて、都度転びながら婦人に帰宅を促すではないか。其のさま全てでわたくしは多幸感に満ち満ちて、良いのですよ、其のお子を腕に抱かせては貰えませんか、との頼みが無意識の層から跳ね上がって声になった。三人、または二人と一つはぎょっと訝しげに此方に目線をくれ、そそくさと去ってしまったのではありましたが。

自分の心に自分の言葉を用いて傷を付ける。結構じゃあないか、景気のよくって、たいへん元気な証左だよ。己に己で頭が真っ白な閃光に沈まるくらい、拍手を送りましょう。