雑草の眩暈

全てが満たされた幸福と云う情景は或る種グロテスクだ。頭上を閃光の如く駆け抜けてゆく希望の尻尾を握る事すら叶わない。床に転がって呻くだけで、間も無く鴉が突付きに来ます。片付け切れていない後悔は赤い粒子に姿を変えて部屋中を浮遊しながら此方を俯瞰し、音を殺しての失笑で発生する微振動が大腿骨に伝わってきます。窓も開けずに助けを呼ぶにも吝かでない。屹度頭部を強かに打付けて零れた目玉の代りに壁が跳ね返す制裁の球が眼窩に食い込んで、甘ったるいガムを膨らませるのでしょう。

アンプリファイアを通した自己紹介が場を纏める者に届かなくって、だけれど一目で魅入ってしまった蟻の姫さまが受け止めてくれたので、充分でした。メダカの学校で一番に手癖の悪い奴が凸レンズをくすね、処罰として見通しのよい晴れ間に焼魚にされてしまったと聞いています。わたくしときたら変わり映えの無い寝たきり生活で日々を殺してばかりおりますから、最寄りのコンビニエンス・ストアの陳列も憶えておりませんし、あちら側だって形を留めてもいないと思います。建物ごと無くなってしまったかもしれない。確かめに行くのは、なんだかおそろしい。

碌に捕まえていられない夢の後先は憐憫のザッピングに吸い込まれてゆくのです、とても残念でならないのだけれど、ね。