イベントレポート:生成AI×デザインの実践知大放出!
こんにちは、LegalOn Technologies プロダクトデザイン ジェネラルマネージャーの駒ヶ嶺(@Koma_Studio)です。
2026年2月12日に、AI時代におけるプロダクトデザインの実践知を共有し、デザイナー同士の交流を深めることを目的に、弊社とUbie、Findyの3社による合同イベントを開催しました。
参加者は主にプロダクトデザイナーの方々で、AIをプロダクトや実務に組み込むことに関心を持つメンバーが集まりました。会場は終始和やかな雰囲気で、登壇者と参加者の距離が近く、活発な質疑応答が飛び交う場になりました。
今回はそのイベントの経緯と内容をお届けします!

イベント開催の経緯
このイベントは、私とUbieのはたけさん(@rhatake_jp)との何気ない会話から始まりました。 「AI時代のデザインについて、もっと他社と知見を共有できたら面白いよね」、そんなやりとりから「だったらイベントをやろうよ!」という話に発展しました。
企画を進める中でFindyのたかなこさん(@mrt_kanako)にもお声がけし、3社合同での開催が実現しました。各社がそれぞれ異なる領域でAIを活用しているからこそ、多角的な視点を持ち寄れる場になるのではないか。そんな期待を込めて、本イベントの開催に至りました。
各社プレゼンテーション<のハイライト
ここからは、当日のLT6本とパネルディスカッションの内容を振り返っていきます。登壇者それぞれの視点から語られた「AIとデザイン」のリアルは、聴いている私たちにもたくさんの気づきをくれるものでした。
LT1:「親切なオンボーディング」が招く罠
登壇者:Zhaoli JIN(LegalOn Technologies, @godling_zlm)

このLTでJinさんが指摘していたのが、AIサービスのオンボーディングで簡単なタスクを案内してしまうという落とし穴でした。たとえばメール作成のような手軽な使い方を最初に見せてしまうと、ユーザーはこの程度のものかとアンカリングしてしまい、AIの能力の上限を無意識に低く見積もってしまうというのです。
そこで提案されたのが、「Time to Value(すぐ使える)」ではなく「Time to Magic(衝撃を与える)」を優先するという考え方です。まずは能力の上限を見せて、「こんなこともできるのか!」という驚きを先に届ける。あえて難しいタスクを投げて、AIの惜しい失敗をあえて見せることで、ユーザーの姿勢が操作する人から一緒に育てる相棒へと変わっていく。
多少の失敗があっても、惜しい体験のほうが信頼や探究心につながるという視点は、AIプロダクトならではの設計思想だと感じました。AIを道具ではなく相棒として出会わせるにはどうするか。その問いが、強く心に残る発表でした。
LT2:AI時代に必要なアイデアの形
登壇者:吉永 悠記(LegalOn Technologies, @yoshinaga2015)

「アイデアに価値はない」
プロダクト開発の現場ではよく耳にする言葉ですが、生成AIの登場によって、本当にそう言い切れるのでしょうか? 吉永さんの発表は、その問いから始まりました。
生成AIによって作ることのハードルが大きく下がった今、誰でもアイデアを形にできる時代になりました。だからこそ価値があるのは、単なる思いつきではなく、どう実現できるかまで見えている、解像度の高いアイデアなのだという指摘は、とても説得力がありました。
特に印象的だったのは、議論を重ねるよりもまず動くものを作るという姿勢です。Figmaのモックで止まるのではなく、自らコマンドラインで動く機能を作り、データ構造やプロトコルの設計にまで手を伸ばしていく。さらに、なぜその設計にしたのかをAIが説明できる状態をつくるという話も、AI時代ならではの実践として新鮮でした。
絵を描く前に知能としての動きを設計し、データとUIを行き来しながら解像度を上げていくプロセスは、ビジュアルを作るだけではない、プロダクトの本質そのものをデザインしている感覚です。デザイナーの射程がUIの枠を大きく超えて広がっていることを実感させてくれる発表でした。
LT3:AIと人間との関係性を設計する情緒的プロダクトデザイン
登壇者:渡辺 智保子(Ubie, @chihokotaro)

AIが医療という繊細な領域に踏み込むとき、正しい回答を返すだけでは適切なコミュニケーションにはならない。渡辺さんの発表は、そんなAIと人間の関係性をどう設計するかというお話でした。
たとえば、健康を気にしている人に対して正論をそのまま返すことが、本当に良い体験なのか。人間同士であれば文脈や関係性を踏まえて言葉を選びますが、AIにはそれが難しい。この情緒的なズレが、UXにおけるバグになり得るという指摘には、深く頷かされました。
その解決策として紹介されたのが、キャラクターをUIのガードレールとして活用するアプローチです。AIモデルがアップデートされても、キャラクターの見た目や口調といった人格の一貫性を保つことで、ユーザーは安心して心を開くことができます。裏側にある高度な技術やプロンプトの泥臭いチューニングを、親しみやすいキャラクターというフィルターで包み込みます。体験の連続性を保つこの工夫は、AIプロダクト特有の設計課題であると同時に、テクノロジーを人間に寄り添わせるための、とても優しいデザインのあり方だと感じました。
LT4:感性の時代──AIが解き放つ好奇心の可能性
登壇者:村越 悟(Ubie, @smurakos)

村越さんの発表は、AIをもう一人の自分や思考を映し出す鏡として捉えるという、とても内省的な視点から始まりました。日々の日記や散らばった興味をAIに渡し、対話を通じて自分の思考を構造化していく。それはAIを効率化の道具としてではなく、思索のパートナーとして使う実践でした。
最も心に残ったのは、AIは無限に答えを出せるが、問いを立て、選び取るのは人間であるという言葉です。無限に生成される選択肢の中から何を選ぶか。その判断力こそが感性であり、AI時代における人間の役割なのだと。楽器を弾けずとも審美眼で名盤を生んだリック・ルービンの例は、まさにその象徴でした。
AIによって好奇心が拡張される一方で、その質を決めるのは自分自身の視点である。AIを使いこなすだけでなく、自分の感性を研ぎ澄ますパートナーとして共に歩む姿勢に、大きな共感を覚えた方も多かったのではないでしょうか。
LT5:1人で作ったゲームの開発チームを紹介します!
登壇者:niccy(Findy, @niccy)

コードが書けないデザイナーが、AIを使って独力でゲームを作り上げた。そんな驚きの事例が共有されたセッションです。
最初は一人で制作に取り組んだものの、面白さが足りないと気づいたniccyさんが取った手段は、AIにゲームデザイナーやサウンドエンジニアといった専門家の役割を与えて、仮想チームを組成するというものでした。AIを単なるアシスタントとして使うのではなく、役割を明確にし、設計書を作り込み、反復的に壁打ちしていくことでクオリティを高めていくプロセスは、まさに実践知と呼べるものです。
AIは単体よりもチームとして組んだ方が力を発揮するという気づきは印象的でしたし、それでも最終的には人間の手直しが欠かせないというバランス感覚にもリアリティがありました。職能の壁がAIによって溶けていく中で、デザイナーが一人開発チームとして機能できる可能性を示してくれた発表は、ものづくりの民主化がすぐそこまで来ていることを感じさせてくれました。
LT6:デザインプロセスにAIを組み込む仕組みを作ってみた
登壇者:佐藤 友介(Findy, @satty_5695)

AIを成果物を生成するツールとして使うのではなく、デザインプロセスそのものに組み込む。佐藤さんの発表は、そんな実践的な取り組みの共有でした。
要件定義からユースケースの洗い出し、UXコンセプトの設計、画面構成へと、工程を一つひとつ分解し、段階ごとにAIに処理させていくアプローチが紹介されました。ここで印象的だったのが、分解しないままAIに渡しても、精度は上がらないという指摘です。工程ごとに何を確認するかを明確にすることで、AIの出力精度が高まるだけでなく、人間のレビューもしやすくなるのだと。
さらに、このプロセスをPdMやエンジニアとの認識合わせにも活用できるという話も実践的でした。作る工数が減った分、チーム全員で本当に解くべき課題は何かに注力できるようになる。デザインの作り方そのものをAIと一緒に再設計していくことで、デザイナーがより戦略的な立ち位置に進化できるというポジティブな展望が見えた、すぐにでも取り入れたくなるセッションでした。
パネルディスカッション・Q&Aサマリー

LTのあとに行われたパネルディスカッションでは、AIがデザインの現場をどう変えているのか、登壇者同士の生々しい議論が交わされました。
会話AIに対するユーザーのリアルな反応として、最初は何を話せばいいかわからないという壁があったものの、徐々に慣れてきている現状が共有されました。一方で、年齢層によっては導入支援がまだまだ重要であるという声や、Legal領域ではAIがヘルプセンター的な存在として機能しているという実例も語られました。
AI活用の評価についても興味深い議論がありました。個人利用から始まり、チーム展開、そして事業インパクトへと段階的に評価していくケースが多いとのこと。単なる効率化ではなく、チームや事業にいかにインパクトを与えたかという上位の視点に評価軸がシフトしている点は、会場の多くの方が頷いていたのではないでしょうか。
そして最も印象的だったのが、全職種のフルスタック化というキーワードです。デザイナーがコードを書き、エンジニアがプロトタイプを作り、医師やPdMまでもが手を動かしてアイデアを形にする。AIが共通言語となることで、職能の境界線が確実に曖昧になってきているという実感が語られました。
作る力が民主化されていく中で、人間に求められるのは、課題を鋭く見つける力、データから意味あるインサイトを導き出す感性、そして何を問うかという意思決定の力です。AIによって何ができるかではなく何を問うかが問われる時代に入っていることを、会場全体で強く実感したディスカッションでした。
最後に

今回のイベントでは、AI時代のプロダクトデザインの最前線に立つデザイナーたちが、それぞれの実践知を惜しみなく共有してくれました。異なる領域ごとに培われてきたノウハウは、どれも自社の取り組みに持ち帰れるヒントに溢れていたのではないかと思います。
残念ながら今回は予定が合わなかった方や、抽選から漏れてしまった方が多くいらっしゃいました。次回開催の際には、ぜひ会場でお会いできたら嬉しいです。一緒にAI時代のデザインについて語り合いましょう!
