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【産んであげられない命を、産む】⑫流れ星だった、私の子〜死産の記録〜

この頃の私はタロットを主に鑑定をしていた。

人の悩みを聞き、カードを開き、
言葉を届ける日々。

迷っている人の心を整えることが、
自分の仕事だった。

これから起こす自分の人生の大きな出来事の前に、

タロットを教えてくれた師匠のことを思い出し、急だが鑑定してもらうことにした。

自分が読む側ではなく、
読んでもらいたかった。

誰かに見てもらいたい。
誰かに受け止めてもらいたい。

そんな気持ちだった。

快く引き受けてくれた師匠。

そしてたまたま空いていた。

今思えば、その「たまたま」にも救われた。

「お久しぶりです!」

久しぶりに声が張る。

最近ずっと沈んでいた声が、少しだけ元に戻った気がした。

「ね、本当に。今日はどうしましたか?」

その穏やかな声は昔と変わらなかった。

この先生とは地元で出逢った。

急に〇〇に行くと、言って

「もうタロットできないのかー」

と残念がっていたところ、

一年後に自分もその地へ、結婚して旦那さんの異動について行くことになった。

偶然なのか、

思い出した雨のあの日、調べてアポ無しでいったことを覚えている。

濡れた道路。
急に浮かんだ名前。
今行かなきゃと思った感覚。

そして、驚いている師匠に弟子入りし、タロットを学んで今までやってきたのだ。

人生の節目には、
いつも不思議な流れがあった。

────

今の事情を話した。

師匠もお子さんが二人いる。

内容をすぐに分かってくれた。

説明しなくても、
母としての重さを理解してくれる空気があった。

「どうしてこの子が来てくれたのかなぁ、なんて。産んであげられないのに」

「自分で、視れなくて」

ポロポロと本音が交じる。

けれど、一生懸命泣かないようにはした。

ここで崩れたら止まらないと分かっていた。

「この子は、流れ星みたいな子だったんじゃないかなぁって」

「………あー………流れ星………」

その言葉が、胸にすっと入った。

「そう、〇〇さんのところに、ふっと来てくれた子。ずーっと来たかったとかではなく、本当に通りすがりで」

通常こういったことを言われたら、

いやいや!そんなはずはないです!
絆や縁があるんです!

と言いたくもなるが……

「あー、分かる。通りすがり…ちょっと寄っただけ……なんか、目があったなぁって思った時があって」

「うんうん」

私はよく空からメッセージをもらう。

空気や自然の流れを見ているのだと思う。

確か、妊娠がわかる日の二ヶ月くらい前、

「あれ?」

と思った日があった。

急にザワザワして。

理由のない胸騒ぎ。
何かが近づいてくるような感覚。

その日から、空の写真を撮ると、雲の形で子どもや赤ちゃんになっているものが多く撮れた。

何だろうな?と思ってはいたが、

あの時から繋がったのかもしれない。と思っていた。

「……入れてしまったんですねー」

「うん、だから、重くないですよ」

(重く……ないかぁ…)

そうなればいいなと思ってはいたが。

自分には重かった。
命も、決断も、責任も。

「私が、最後まで、責任もって、考えて、出してあげれば、いいのかなぁ」

「うん。それがいいって、出てる。ちゃんと光がある。大丈夫」

(……大丈夫か…)

師匠は中絶を勧めているわけではない。
けれど、どうしようもない赤ちゃんの状態を聞いて、私の気持ちによく寄り添ってくれた。

その時間が欲しかったのかもしれない。

未来が明るいと言われたいのではなく、
この選択の先にも光があると知りたかった。

リーディングは、答えをくれるものだとは思っていない。

不思議と、心の整理をしてくれる。

決めるのは、自分だ。

ずっと──

自分が人に鑑定としてやってきたことを、
今、自分が受け取っていた。

「わかりました。ちゃんと最後まで面倒をみる。ごめんなさい、ちょっと時間オーバーしちゃって」

「いいの!また元気で来てくれれば!」

(……元気………)

不思議と、自分が向き合ってきた言葉ばかりが出てくる。

元気でいて。
大丈夫。
光がある。

いつも人に伝えてきた言葉たちだった。

状況はまだ変わっていない。

けれども、今お腹の中にいる子は、怒ってはいなさそうだ。

責めてもいない。
恨んでもいない。

そんな気がした。

きっと、こうなることも、分かって、
寄り道しに来た。

自分では、視れなくて。
感じたくなくて。

自分は、前世から持ち越してきたものがある。

この子もきっと、持っていく。

なら、少しでも、今だけでも、お腹をさすってあげたいと思った。

────

【入院の日】

朝の空気は静かだった。

いつもと同じ朝のはずなのに、
家の中だけが少し違う時間で動いているようだった。

旦那さんにはお休みを取ってもらった。

まだ小さい子どもたちを見てもらう。

一日の全部を任せる日だった。

「写真、撮りたい」

そんな一言を言ったので、みんなで写真を撮ることになった。

突然だった。
自分でも、なぜ今そう言ったのか分からなかった。

「どうしてしゃしん?」

「うん」

何も言えない。

子どもたちは不思議そうにしながら並ぶ。
旦那さんも、深くは聞かなかった。

ただ、少しでも形にしたかっただけなのかもしれない。

家族という形を。

この瞬間、確かに五人だったことを。
まだ見えない子も含めて、家族だったことを。

自分はこれから、ひとつの命に、
生きる場所を与えないという決断をする。

何が正しいかなんて、わからない。
中絶が出来るギリギリまで、お腹にいていいよとしたって──

その間だけ生きていいよとすることが優しさなのか、
命をコントロールしてしまっているようで。

子どもたちの生活を守るため?

この子が、生まれてから苦しまないように?

全部、自分の都合なのではないか。

何度考えても、
答えはひとつにならなかった。

自分が責任が持てないからだ。

だからこの子に、還ってね、とするのだ。

来週になれば、戸籍に載る。

法律的に、罪にならない段階で、私は自分の子を、いなくさせる。

キレイ事なんてない。

まったくない。

慰めの言葉も、前向きな意味づけも、この時の自分には届かなかった。

自分は、命や流れを見る仕事をしながら、

もう、それをさせてもらえないくらい、大きなことをする。

今まで積み上げてきたものが、
崩れていくようにも感じていた。

現実的に考えて、なんて、
そんな正論は、いつまで持っていられるか。

明日の自分の精神面は大丈夫か──

終わったあと、自分は元に戻れるのか。

結局は自分の都合。
何も言い訳は出来ない。

これで、私もきっと、来世に持ち越すことになる。

自分の子を死なせたという記憶を。

────

「……はぁ、辛いな………でも、頑張る………」

病院に送ってもらった車の中で独り言を言う。

窓の外の景色はいつも通り流れていく。
信号。店。通学路。朝の町。

世界は何も変わらないのに、
自分だけが別の場所へ向かっていた。

ここから、自分一人だけ。

「……いってくる」

「行ってらっしゃい」

パタンッ 

ドアの閉まる音がやけに大きく響いた。

車が進んでいく。

子どもが中から手を振っているのが分かる。

小さな手。
笑っている顔。

(……行かないでほしいなぁ……)

自分でも驚くほど素直な本音だった。

誰かに止めてほしい。
今日はやめようと言ってほしい。
抱きしめて連れて帰ってほしい。

もう十分、悩んだでしょって。

代わってあげるよって。

そんなことは誰も言ってはくれない。

言えるはずもない。
代われるはずもない。

分かっている。
分かっているのに、そう思ってしまった。

誰かに決めてほしかった。
誰かに背中を押してほしかった。
誰かに、もういいよと言ってほしかった。

自分が一番、自分のことが嫌いだ。

結局、我が身可愛さで、

命の流れに背くことをする。

神様に顔が向けられない。

見えない何かにまで、申し訳なさを感じていた。

手を振って、気持ちが揺れるのを感じながら、

大きい病院に入った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

採血から始まる入院準備。

受け付けをして、説明を受けて、名前を呼ばれて、椅子に座る。

全部、いつもの病院の流れなのに、
今日は一つ一つが重かった。

お腹が大きいのを見た採血の方に、

「これから、出すんです。」なんて言って。

「ええー!そうなの、出産!」

なんてパアッと顔が明るくなられる。

少しでもこちらの気持ちに気づいてほしいとする。

普通の採血じゃない。
ただの入院じゃない。

この人に少しでも分かってほしい。
そんな甘えがあった。

なんと返されたかはよく覚えていないが、

採血室から出ていこうとした時に、自分の腕から血が流れているのを見つけた。

ボタボタ、垂れてしまうくらい、

貼られたコットンが真っ赤になった。

赤いしずくが床に落ちる。
自分の血なのに、ひどく他人事のように見えた。

慌てて引き返し、

「血が止まってなくて」と言うと、
状態を見たスタッフが慌てる。

「すみません、すぐ押さえてください!」

バタバタと新しいガーゼが出される。

こんなことは初めてだった。

よく、出産の時に説明がある。

出血が止まらなくて、とか、予想外のケースで、とかで、
母親が亡くなってしまう稀なケース。

私達は出産を甘く見ているのかもしれない。

けれども本当は命がけで。

赤ちゃんが生まれる話ばかりが表に出る。
でも、その裏には、母親の体が大きな危険を引き受けている。

そして自分はこれから、無理やり事を起こす。

自然に始まるはずの流れに、人の手で区切りをつける。

血がボタボタ止まらない状態で、
最悪なケースがいくらでも想像できた。

このまま大量に出血したら。
麻酔で何かあったら。
もう子どもたちに会えなかったら。

(…あれ……私、もう帰れないのかも……)

(最後、手を振ったので、終わりだったとしたら…?)

頭の中だけが先に暴走する。

自分だって、これから、手を振るのに。

それでも時間は進み、
入院の手続きは淡々と続いていった。

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この時、私の味方は
誰もいないと思っていました。

お腹の中にいる子でさえ、
私に、つらいことをさせに
来たのでは、と。

一人で抱え込めることと
そうでないことがあるのに。

誰のせいにもしたくない。

せいというのであれば、
自分が全部負うものだ。

そんな責める気持ちだけ。

うまく呼吸ができるはずもありませんね。

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あなたの人生の全てに、自分で意味を見つけてみませんか。
そのひとつに、産まれた時の地図というものがあります。
ホロスコープです。
あなたの人生にも可能性とテーマがあるのです。
一緒に読み解いてみたい方は、こちらから進んでください。

────

自分の妊娠、死産の経験の
物語を
今、このタイミングで着手して
書き始めました。

途中、止まってしまうところがあって、
なかなか思うように進まない時も多く。

それでも、この子のことをずっと
書きたいと思っていたのです。

私のもとに来てくれた命。
鑑定師として多くの命に触れていて
感じてきたことや
リアルな感情を残したい。

私の中で、それがずっと
ずっとあって。

今ようやく、書き始めました。

この物語が、どうか
命のことを考えている人に
そっと寄り添えますように。

妊娠や死産の経験でなくても、
その方の人生に触れられますように。

まだ…まとめていないのですが、
前書きでも出そう、と思ったこのタイミングで
綴り始めます。

よければ、読んでもらえたら嬉しいです。
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