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寝息の記憶 *詩*

暗闇の中の空気はアゴーギク
布団をあごまで被っておもう
何万年の間、わたしは隣の人の寝息に耳を傾けてきたのだろう

背中は暮らしの変化を拾ってきた
このような情けない私なのに
先祖はここまで生き抜いてくれて
蓄積してきた生活の記憶
臆病な勇気の記憶
遠慮がちなずるさの記憶
濃厚な悲しみの記憶
食べ物の好みの記憶
怠けることに勤勉な記憶
大事にすべきと意識下で伝えられてきた何かの記憶
派生した分泌物の偏りの記憶
ウイルスの記憶
月の満ち欠けの記憶

途絶えさせて悪かった

横になったとき
その背中は
堅かっただろうか
硬かっただろうか
固かっただろうか
拾ってきた
たくさんの実たくさんの貝
たくさんの会話
たくさんの骨

いまは柔らかい
あるいは軟らかい

目の前にある景色
胸に映る景色
移り変わって
そのときどきにふさわしい
夢を見てきた

音は大きい
雨が立てる音
雨は変わらないのに
雨の受け皿が変わり
見つからないかもしれない
風が
ボリュームやバリエーション
アゴーギク
何万年も昔には
拾われて困る言葉など
あまり落ちていなかっただろうから
雨や風の音
他の獣の咆哮や
鳥や虫の羽音
ハート
アート
そのうちにぎやかすぎるとか
聞こえすぎるとかで
本という秘密の箱にも押し込めておくようになり
時には獣に似た歌になり
整理が下手で
人はおろか昆虫から発生まで
ハート
アート
ミステリー
馬の駆ける
果ては人類の滅亡
人が生きたり集ったりしているのは
もう本の中だけになるのかもしれない
そうしたら世界は静かだろう
たくさんの音はあったとしても
たくさんの昔があったとしても

月はまだあるだろう
目覚めると隣の人の寝息が満月のようにくるりと回転し
私は自分の位置を再び見出した
私は驚くほど平坦だった 

こんなに大きな寝息を立てながら
この人はどこに行っているのだろう

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