節税のつもりが損になる?確定申告で国保・介護保険料が上がる“見えない落とし穴”
「税金が戻る」は、本当に得なのか
確定申告の季節になると、
「株の損益通算で税金が戻る」
「損失を繰り越して将来に備える」
といった“節税テクニック”が話題になる。
とくに新NISAの開始以降、老後資金の運用として株式投資に取り組むシニア層も増えた。
だが、この“正しいはずの節税行動”が、家計全体ではマイナスになるケースがあることは、意外と知られていない。
鍵を握るのは、国民健康保険料(国保)や介護保険料だ。
投資家が狙う「損益通算・繰越控除」
通常、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば、
株の利益から約20%の税金が自動的に差し引かれ、原則として確定申告は不要となる。
ただし、次のような場合は申告によって税金が戻る可能性がある。
• 損益通算:利益と損失を相殺し、払いすぎた税金を取り戻す
• 繰越控除:損失を翌年以降3年間、利益と相殺できる
投資家としては合理的な判断だが、
年金生活者の場合、ここに思わぬ副作用が潜む。
見落とされがちな「社会保険料の算定基準」
定年後、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している人の保険料は、
原則として前年の所得をもとに算定される。
特定口座で完結していれば、
株の利益は「申告しない限り」所得として表に出にくい。
しかし、節税目的で確定申告をした瞬間、
株の利益が自治体にも共有され、
国保料・介護保険料の算定対象になる可能性が出てくる。
税理士の村井綾乃氏は、こう指摘する。
「確定申告は税金のためだけの手続きではありません。
住民税や国保、介護保険料に波及し、軽減措置のラインを超えると
年間で数万円単位の負担増になることがあります」
1円で運命が変わる「軽減判定」
国民健康保険には、低所得者向けの均等割軽減(7割・5割・2割)がある。
だがこの軽減は、基準を1円でも超えると消滅する。
たとえば単身世帯の場合、
合計所得が約99万円を超えた瞬間に2割軽減が外れ、
保険料が一気に跳ね上がるケースもある。
つまり、
• 税金は2万円戻った
• でも翌年の国保料と介護保険料が8万円増えた
といった典型的な“逆ザヤ”が起こり得る。

さらに影響する「医療費の自己負担」
影響は保険料だけにとどまらない。
所得区分が変わることで、
• 医療費の自己負担割合(1割→2割など)が上がる
• 高額療養費の自己負担上限が引き上げられる
• 住民税非課税世帯向けの給付や支援から外れる
といった連鎖も起こりうる。
確定申告は、老後の生活防衛ラインそのものを動かす行為でもある。
判断基準は「税」ではなく「手残り」
では、どう判断すべきか。
ポイントはシンプルだ。
「税金が戻るか」ではなく、「最終的にいくら残るか」で考えること。
• 国保加入のシニアは、あえて申告しない選択も合理的
• NISA口座を活用すれば、非課税かつ保険料への影響を避けやすい
• 申告する場合は、自治体の保険料試算で事前確認が必須
検索は
「国民健康保険料 試算 ○○市」
「介護保険料 所得段階 ○○市」
で十分だ。
まとめ
節税のための確定申告が、
結果的に国保料・介護保険料を押し上げることは珍しくない。
日本の制度では、
税と社会保障は切り離して考えられない。
目先の還付金に飛びつく前に、
「申告した後の手残り」を必ず確認すること。
それが、老後資金を守るための
もっとも現実的な意思決定だ。
(参照記事=BUSINESS JOURNAL)
