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函館ストーリー

「白い夜に浮かぶハート」

函館山の伝説を確かめに、 僕たちはロープウェイに乗り込んだ。

ガラス越しに広がる街の灯りは、 夕暮れの空に溶けながら、 ゆっくりと“夜の海”へと姿を変えていく。

「夜景の中に“ハート”が浮かぶんだって」
彼女がそう言ったとき、 僕の胸の奥にも小さな灯りがともった。

その“ハート”を見つけられた恋は、 永遠になる——
そんな優しい伝説が、 この山には昔からそっと息づいている。


山頂に着く頃には、 地上の星のような灯りが ひとつ、またひとつと増えていた。

あちこちから歓声が上がり、 そのたびに夜景がきらりと揺れる。

「見て!」

突然、Tシャツの裾をつかまれた。
彼女が指差す先——
そこには確かに、 光の粒が寄り添って描く「ハート」があった。

夕立にはしゃぐ子どものように、 彼女は眩しい笑顔を浮かべていた。

その笑顔を見た瞬間、 僕は心の底から思った。

——ああ、好きだ。

僕はそっと彼女の手を握った。
すると彼女も、 まるで答え合わせをするように ぎゅっと握り返してきた。


その夜の函館山は、 どこまでも白かった。

夏の函館は、 夜になると霧が山を包み込む。
光も音も輪郭を失い、 すべてが少しだけ夢のようになる。

白い霧の中で、 夜景のハートだけが 静かに、確かに輝いていた。

僕たちはお互いに頷き、 短いキスを交わした。

霧の向こうで、 街の灯りがふわりと揺れた。

まるで、 僕たちの恋をそっと祝福するように。


白い夜に浮かぶもの——
それは夜景のハートだけじゃない。

彼女の笑顔も、 握り返す手の温度も、 胸の奥に灯った小さな光も、 すべてが霧の中で静かに輝いていた。

あの夜の光は、 今でも僕の心にそっと届いている。


あとがき

函館山の夜景は、 ただの観光名所ではなく、 “恋の記憶が宿る場所”でもあります。

夏の夜霧に包まれた山頂は、 現実と夢の境界がふっと溶けるような、 不思議な静けさをまとっています。

今回の物語は、 そんな函館山の“優しい伝説”をもとに、 恋がそっと深まる瞬間を描きました。

夜景に浮かぶ「ハート」は、 誰かの願いが灯りとなって そっと形をつくったものなのかもしれません。

白い夜に浮かぶ光が、 誰かの恋を照らす——
そんな函館らしいロマンスを 物語に込めました。

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