見出し画像

「むらさきのスカートの女 今村夏子」感想_理解不能から生まれる快感 その他3冊

3月も終わろうというところで遅すぎですが、2月に読んだ本のうち4冊の感想です。
直近で昔から大好きなウィキッドの後編を観て爆泣きしたので、そちらの感想も早く書きたいところ…

むらさきのスカートの女 今村夏子 ★★★★☆

今村ワールドにハマりつつあります。「とんこつQ&A」に続き読んだのは2冊目。何もわからなすぎて、それなのにどうしてこんなに面白いのか不思議。むらさきのスカートの女は多分、そこまで変な人じゃない。どころか、結構普通の人なんでしょう。主人公の「黄色いカーディガンの女」の方がよっぽど危ういし異常。

今村さんの書く主人公は、読んでいるこちらが「え?こいつ今何した?」と理解できないほどの自然さで、常識の一線を超えていく。あまりに普通のこととして描かれることにだんだん怖くなり、同時に目が離せなくなっていく。
予測不能な展開をなんとか自分のイメージの範疇で理解しようとする我々読者を拒絶し、置いていくような文章が癖になる。「何もわからない」ことが生む謎の安心感。朝井リョウさん、宮部みゆきさんなどの文章とは真逆。

文庫版に収録されている芥川賞受賞記念エッセイも、独特すぎてめっちゃ面白かったです。
なんだか、私が小説を読むのはこういう「理解不能な他人の頭の中を覗いてみたい」っていう欲求のためなんだなあと思いました。まあ、この小説を読んでもそれは全く解決されていないわけなんですが。むしろますます分からなくなってる笑
下世話ですが、こんな感性をお持ちの今村さんが、どんな人と結婚してどんな風に暮らしているのか気になりすぎる。

何様 朝井リョウ ★★☆☆☆

「何者」はかなり前に読んだので、記憶が曖昧。こちらは、「何者」の登場人物だったり、近しい人物のサイドストーリー集なのね。共感できる、感情移入しやすい等身大の主人公が多く、するする読めた。
けど、ちょっと王道すぎたかな。
意外な展開はなく、ああ、まあそうなるよね。というストーリー。
それこそ何様だという話ですが、あっさり塩味で万人ウケする美味しさなんだけどもそこまで迫力はないかな、という感想でした。

・きみだけの絶対
演劇という「アート」への視線。私は演劇には全然詳しくなく、劇団四季くらいしか見たことがない。おそらく、演劇以外のアート全般にも向けられている、「あってもなくても良いもの」という軽蔑と言ってもいいくらいの扱い。父親の態度に滲むその感情、生活に手一杯の彼女との対比。なんかこういうテーマって世界中、いつの時代も変わらないんだろうな。
作中のおじさんがいうように、「世の中のこういう人にむけて」とか言っちゃうからややこしくなるんだと思う。演劇でも小説でもなんでも、結局はその表現者本人が「やらずにいられないからやる」というだけの話なんじゃないか。「こういう人にむけて」っていうのも結局は、「こういう人に分かってほしい」「理解してほしい」という本人のエゴ、希望があるだけ。
作中の落とし所としては、「アートは、何を解決してくれるわけでもないし、必需品でもない。けど、人生のどこかで思いがけず自分を掬い上げてくれるお守りのようなもの」というところでしょうか。
受け手の目線として、確かにこう思ったことは私もある。特に音楽とか。
でも個人的には、表現とは究極に自己中心的なものだと思う。ただの、その人の感情の発露。

・むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった
私も長女なので、そして幼少期クソ真面目でやってきたので、分かる〜と思う場面が多かった。でもちょっと拗らせ方がテンプレすぎるかな。
長女は優等生で愛され下手で甘え下手、不倫に走っちゃったりする。次女はちゃっかりしていて甘え上手で、最終的には親の視線も愛も独り占め。
うーんとってもきれいなテンプレ。
私も妹を持つ長女として、共感する部分も多いだけに「そこなんだけど、そこじゃないんだよな~」感が惜しかった。

ツミデミック 一穂ミチ ★★★☆☆

初めて読む作家さん。
なぜだか、清純な恋愛小説を書く方だと思い込んでいたので、1話目から面食らいました。(多分別の人と勘違いしてた)
コロナによるパンデミックでおかしくなる人、救われる人。
ホッコリ話、ゾワゾワする奇妙な話、ミステリーチックな話、色々な趣向の短編が詰まっていて読んでいて楽しかったです。
なんだかんだ、王道的な良い話「特別縁故者」がじんわり沁みたのは年でしょうか…(「何様」で王道展開をディスっておいて何?)

風花 川上弘美 ★★☆☆☆

主人公、「のゆり」は自分の認識の通り、だいぶ鈍い。読者としてはもどかしいし、話し方もなんだかちんたらしている。私のようなせっかちオバサンにはちょっとテンポが遅かったかな。
地味に見えて結構な遊び人だった卓哉も、何が良いのかわからないし…っていうのは他所の夫婦あるあるかも。

もどかしいのも、理解不能なのも、自分ちのことは他人から見ればそう感じるのかもね。別れる別れないの気持ちも、決意も、夫婦でズレたテンポのまま流動的に動いていく。
この夫婦も結局別れないんだろうな~。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集