見出し画像

【どちらかが彼女を殺した 新装版】東野圭吾|読了

加賀恭一郎シリーズ④。

妹を失った兄が、自ら真相を追っていく。

容疑者は二人。

妹の元恋人か。

それとも、親友か。

登場人物も容疑者もかなり絞られている。一見すると、犯人当てとしてはシンプルにも思える。

でも、だからこそ面白かった。

二人しかいないのなら、どちらかが犯人。

それなのに、簡単には決められない。

誰が何を言ったのか。

なぜ、そんな行動をしたのか。

どこに違和感があるのか。

選択肢が少ないからこそ、一つひとつの情報をどう読むかが重要になる。

加賀の推理をただ見ているのではなく、自分も「どちらなのか」と考えながら読む。

シンプルな構図なのに、かなり推理する楽しさのある一冊だった。


二人しかいない。それでも分からない

この作品で一番面白かったのは、やはり読者自身も推理へ参加させられるところだった。

容疑者は二人まで絞られている。

普通なら、候補が減れば真相へ近づいたように感じる。

でも、この作品ではそう簡単にはいかない。

どちらの言葉を信じるのか。

どの行動に意味があるのか。

目の前にある情報の中で、本当に重要なのはどれなのか。

「二人のうちどちらか」という単純さが、逆に逃げ道をなくしていく。

第三の人物を疑って話を広げるのではなく、目の前の二人を徹底的に見るしかない。

だから自然と細かな描写まで気になってくる。

何気ない言葉にも意味があるように思える。

ちょっとした行動も疑いたくなる。

登場人物が少ないことで読みやすくなっているのに、同時に読者へ求められる注意は細かくなっていく。

その作りが面白かった。


加賀を見るだけではなく、加賀と一緒に考える

加賀恭一郎シリーズとしても楽しめた。

事件そのものでは、妹を失った兄の思いが強く前に出る。

その中で加賀が、何を見て、どこに引っかかり、どう真相へ近づいているのか。

そこが気になった。

加賀は派手に自分の推理を見せつけるタイプではない。

人の言葉を見る。

行動を見る。

小さな違和感を拾う。

そして、そこから少しずつ考えていく。

今回は読者自身も犯人を考えながら読むからこそ、その加賀の視線をいつも以上に意識した。

自分はここを怪しいと思う。でも、加賀は何を見ているんだろう。

そんなふうに考えながら読める。

ただ名探偵が答えを出すのを待つのではなく、自分の推理と加賀の推理を並べるような感覚があった。

そこもシリーズの中では新鮮だった。


少ない情報を、どこまで読めるか

登場人物が絞られていることは、単に読みやすさだけにつながっているわけではなかった。

むしろ情報が限られているからこそ、

すでに見せられているものの中に答えがあるはずだ

と思いながら読むことになる。

誰が何を知っているのか。

言葉と行動は一致しているのか。

自分が見落としているものはないのか。

新しい情報が大量に追加されて真相が見えるというより、すでに持っている情報をどう捉えるかが大事になる。

ここがかなり本格ミステリらしくて良かった。

「どちらか」というタイトルの通り、選択肢は最初からかなり狭い。

それでも迷う。

答えの候補が少ないことと、答えを見抜きやすいことは別なんだなと思った。

シンプルな設定の中で、推理すること自体を楽しめる作品だった。


推理だけでは終わらない感触

犯人当ての面白さが強い作品だけれど、読み終えて残ったものはそれだけではなかった。

事件が起きれば、その後にも人が残る。

妹を失った兄がいる。

事件に関わった人たちがいる。

そして加賀がいる。

誰が犯人なのかという論理的な問題だけではなく、人を信じることや、裏切られること、そのあとにも残る感情がある。

特に最後には、自分には友情のようなものも感じられた。

そこが良かった。

事件を解けば、失ったものまで元に戻るわけではない。

それでも、人と人との間に何かが残る。

犯人当てに集中して読んできたからこそ、最後にそうした人間関係の感触が残ることが印象的だった。

東野圭吾のミステリでは、こういう謎が終わったあとに人間の方が残る感じもやっぱり好きだ。


読後に残ったもの

『どちらかが彼女を殺した』は、かなりシンプルな構図のミステリだった。

妹が殺された。

容疑者は二人。

どちらかが犯人。

ここまで絞られている。

それでも、簡単には分からない。

むしろ二人しかいないからこそ、一つひとつの言葉や行動を細かく見ることになる。

容疑者が少ないことが、推理を簡単にするのではなく、読者の視線を細部へ向けさせる。

そこが面白かった。

加賀がどこを見ているのかを追いながら、自分でも考える。

この言葉には意味があるのか。

この行動は怪しくないか。

自分は何かを見落としていないか。

ただ真相を教えてもらうのではなく、最後まで自分の頭を使って読む感覚がある。

そして、犯人当てだけではなく、最後には人と人との関係や、友情のような感触も残った。

「どちらか」を当てるために読んでいたはずなのに、読み終えると事件のあとに残された人間の方も気になっている。

推理する楽しさと、人間関係の余韻。

その両方を味わえる、加賀恭一郎シリーズの中でも少し変わった一冊だった。

☃️ここまで読んでくださってありがとうございました。
ミステリ中心に読書の感想を書いています。
気が合いそうだと思ったら、フォローしてもらえたら嬉しいです。


🔽書影や詳細はこちら(Amazonアソシエイトリンク)

当アカウントはAmazonアソシエイトに参加しており、リンクから収益を得る場合があります。


👇あわせて、こんな記事も書いています。

いいなと思ったら応援しよう!