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【光媒の花】道尾秀介|読了

『シャドウ』に次いで、個人的にとても好きな道尾秀介作品。

全6章からなる連作短編集で、それぞれの物語には、人の弱さや罪悪感、後悔、失われたものが静かに描かれている。

どの結末にも、分かりやすい救いが用意されているわけではない。失ったものは戻らず、犯してしまったことも消えない。誰かの悲しみが、綺麗に解決されることもない。

それでも読み終えたあと、不思議と残ったのは暗さだけではなかった。

冷たい哀しみの中を、蝶がふわりと舞っていくような美しさ。

再読した今回、その感覚が以前よりも強く残った。


救いきれない現実を、そのまま描く

本作に描かれる結末は、いわゆるハッピーエンドとは少し違う。

取り返しのつかないこと。

言えなかったこと。

失ってしまったもの。

胸の奥に押し込めてきた悲しみ。

そうしたものが、物語の最後ですべて綺麗に片づくわけではない。

現実は、現実のまま残る。

そこが良かった。

無理に救いを与えるのではなく、変えられないものがあることを静かに受け止めさせる。

だからといって、ただ絶望だけを突きつけるわけでもない。

救いがないというより、救いという一言だけでは片づけられない人生を描いているように感じた。

その現実から目を逸らさない終わり方が、深い余韻につながっていた。


苦さの奥に残る、わずかな光

この作品には、ずっと苦さがある。

人の弱さや罪悪感。

誰かを守るためについた嘘。

選んでしまった行動の重さ。

そして、あとからどうすることもできない後悔。

道尾秀介作品で惹かれる部分が、本作にはかなり詰まっていた。

それでも、物語を読み終えたときに残るのは暗さだけではない。

冷たい哀しみの奥に、ほんの少しだけ光が見える瞬間がある。

それは、すべてを解決してくれるような光ではない。

過去を消してくれるわけでも、失ったものを戻してくれるわけでもない。

ただ、それでも人はその先を生きていくのかもしれないと思わせる程度の、かすかなもの。

その小さな光があるからこそ、苦い物語がただ重いだけでは終わらない。

そこが、とても好きだった。


一つの物語が終わっても、人生は続いていく

連作としてのつながり方も印象に残った。

一つの章で描かれた人物が、別の物語では違う角度から見えてくる。

ある物語のあとに、その人物がどう生きているのかが、別の場所からそっと示されることもある。

一つの話が終わっても、その人の人生まで終わったわけではない。

物語の外側にも時間が流れ、別の誰かと関わりながら生き続けている。

その感覚が良かった。

今回再読したことで、初読では出来事や結末に目を向けていた部分にも、別の感情が見えてきた。

視点が変わることで分かること。

その後を知ることで、以前の場面の印象まで少し変わること。

連作だからこそ、一人の人生を一つの出来事だけで決めつけない広がりがあった。


蝶が舞うような読後感

読み終えたあとに残った感覚を考えると、自分の中ではやはり「蝶」というイメージが一番近い。

物語には、悲しさもある。

残酷さもある。

どうすることもできなかった過去もある。

それなのに、最後に残るものにはどこか美しさがある。

蝶が強く羽ばたくのではなく、ふわりと静かに視界を横切っていくような感覚。

掴もうとすれば消えてしまいそうな、儚い美しさ。

人の弱さや悲しみを無理に美しいものへ変えているわけではない。

苦さは、最後まで苦いまま残っている。

そのうえで、同じ場所に美しさも存在している。

その矛盾した感触こそ、『光媒の花』で一番好きなところなのだと思う。


再読して変わったもの

再読して、やっぱり好きな作品だと思った。
道尾秀介作品の中でも、『シャドウ』に次いでかなり好きな一冊。

ミステリとして強い仕掛けを楽しむ作品というより、人の心の暗い部分と、その奥にあるかすかな光を見つめる作品だと思う。

読んでいて楽しいだけではなく、苦い、重い、救いきれない。でも、美しい。その矛盾した感覚が残る。

だからこそ、再読しても印象が薄れずに今の方が深く入ってきた気がする。


読後に残ったもの

『光媒の花』は、救いきれない現実と、その中にある静かな美しさが残る短編集だった。

どの物語も、簡単には救われない。失われたものは戻らないし、すべてが解決するわけでもない。それでも、読み終えたあとに残るのは、ただの苦さではなかった。

冷たい哀しみの中に、わずかな光がある。
蝶が舞っていくような、静かで儚い美しさがある。

その感覚が、この作品のいちばん好きなところだった。

一度読んだ物語なのに、再読することで見え方が変わった。前は気づかなかった感情に触れられた。時間を置いて読み返したからこそ、刺さる部分が変わったのだと思う。

現実から目を逸らさない。
でも、絶望だけで終わらせない。

その読後感まで含めて、やっぱり好きだと思える作品だった。

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