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半神の少女 第8話「瞬足の半神、日本に来る」

第8話「瞬足の半神、日本に来る」

オリンポス ― 神殿・玉座の間

白く輝く巨大な神殿。
玉座に座るゼウスと、その前にひざまずくアレス。

静寂の中、ゼウスが口を開く。

ゼウス
「……また失敗か」

低く、冷たい声。

アレス(頭を下げ)
「……申し訳ございません、父上……」

空気が張り詰める。

ゼウスがゆっくりと視線を横へ向け、アテナを見る。

ゼウス
「……アテナ。お前の娘もヘスティアの娘についたと聞いたが……本当か?」

アテナは微動だにせず答える。

アテナ
「……はい」

神々の間に小さな動揺。
ゼウスが目を細める。

ゼウス
「これで……」

拳を軽く握る。

ゼウス
「半分も揃ってしまったか……」

アレスが顔を上げる。

アレス
「そうなる前に……!」

拳を強く握る。

アレス
「次こそ必ず……!」

その時、別の声が割り込む。

ヘパイストス
「……無意味だよ、無意味」

全員の視線が集まる。
ゼウスがゆっくりとヘパイストスを睨む。

ゼウス
「……ヘパイストス。まだ私に反対するか?」

アレスが即座に反応。

アレス
「父上!!」

立ち上がり、剣に手をかける。

アレス
「ご命令とあらば……!」

剣を半ば抜く。

アレス
「こやつをこの場で斬り捨てます!」

ゼウスが即座に制止する。

ゼウス
「よさぬか!!」

雷鳴が響く。

ゼウス
「醜いやつとはいえ……お前と母を同じくする“兄”だぞ」

アレスが歯を食いしばり、ゆっくりと剣を収める。

アレス
「……失礼しました」

ヘパイストスが肩をすくめる。

ヘパイストス
「相変わらず短気だな、アレス」

少し前に出る。

ヘパイストス
「お前……アポロンの息子やアルテミスの娘も殺そうとしたな?」

アレスが睨み返す。

アレス
「……俺の邪魔をするからだ」

ヘパイストスが淡々と続ける。

ヘパイストス
「じゃあ聞くけどさ――」

一歩踏み込む。

ヘパイストス
「自分の娘もヘスティアの娘に味方したら……どうする?」

空気が凍る。
アレスは一瞬言葉を失う。

アレス
「……っ!」

拳を握る。

アレス
「貴様……!」

アレスが歯を食いしばる。

アレスの宮殿

アレスは玉座に座り、腕を組んでいる。
そして目を閉じ、先ほどのヘパイストスの言葉を思い返す。

ヘパイストス(回想)
「自分の娘もヘスティアの娘に味方したら……どうする?」

アレスの眉がわずかに動く。

アレス(心の声)
(……あの子が……)

一瞬だけ――幼い少女の影が見える。

アレス(心の声)
(ヘスティアの娘に……味方するだと……?)

拳をゆっくり握る。

アレス(心の声)
(……そうなったときは……)

炎が揺れる。

ガタン――

アレスが立ち上がる。
控えていたポボスとデイモスが反応する。

ポボス
「……父上?」

デイモス
「どうなされました?」

アレスが背を向けたまま言う。

アレス
「……モスクワに行く」

ポボスがわずかに目を細める。

ポボス
「モスクワに……?」

デイモスがすぐに前に出る。

デイモス
「ならばご一緒いたします!」

アレスが振り返らずに制止する。

アレス
「来るな」

一拍。

アレス
「お前たちは……留守をしていろ」

ポボスとデイモスが一瞬戸惑う。

ポボス
「……しかし」

アレス
「命令だ」

2人が言葉を飲み込む。

デイモス
「……はっ」

アレスがゆっくりと歩き出す。
空間が歪み、アレスの姿が雷のように消える。

残されたポボスとデイモス。

デイモス
「……何だ?あの感じ」

ポボス(静かに)
「……父上らしくないな」

モスクワ・屋内スタジオ

広い稽古場に照明の下、木製の武器や防具が並ぶ
ベロニカが1人で殺陣の稽古中。鋭い踏み込み。

シュッ!!

剣が空気を裂く。無駄のない動き。

ベロニカ(心の声)
(……まだ甘い)

再び構える。

シュッ!!

床を蹴る音が響く。

ベロニカ
「……はぁっ!」

最後の一撃。

ピタッ

完璧な停止。
ベロニカが小さく息を吐く。

ベロニカ
「……よし!」

少しだけ満足げに頷く。

モスクワ・夕方の街

薄暗い空に街灯が灯り始める。

ベロニカが1人で帰り道を歩く。バッグを肩にかけている。

ベロニカ(心の声)
(次の撮影……もっと動きを詰めないと)

すると誰かがベロニカに声をかける。

???
「ベロニカ」

ベロニカがハッと振り返る。
そこに立っていたのはアレス。

ベロニカ
「……!」

次の瞬間、ベロニカの表情が一気に明るくなる。

ベロニカ
「パパ!」

ベロニカが駆け出して、アレスの前で止まる。

ベロニカ
「来てくれたの!?」

嬉しそうな笑顔。
アレスもいつもと違う父の顔。わずかに口元を緩める。

アレス
「ああ。また映画の出演が決まったと聞いたからな」

ベロニカが目を輝かせる。

ベロニカ
「うん!今度はアクション多めなの!」

少し照れながら言う。

ベロニカ
「もっと強くならないといけないけど……」

アレスがじっとベロニカを見つめる。その目に一瞬だけ“複雑な感情”。

アレス
「……そうか」

ベロニカがふと違和感に気づく。

ベロニカ
「……?」

首を傾げる。

ベロニカ
「どうしたの?」

アレスがわずかに視線を逸らす。

アレス
「……いや」

短く答える。

アレス
「少し……顔を見に来ただけだ」

ベロニカが少しだけ寂しそうに笑う。

ベロニカ
「そっか……」

すぐに表情を戻す。

ベロニカ
「でも嬉しい!」

2人が並んで歩き出す。夕暮れの街を歩く父と娘。

アレス(心の声)
(……この子が……あの半神に味方する……だと……?)

拳をわずかに握る。

ベロニカが無邪気に話す。

ベロニカ
「ねえパパ、今度の映画見に来てよ!」

アレスは一瞬だけ答えに詰まる。

アレス
「……ああ」

白石家・リビング

広い和洋折衷のリビング。
テーブルにはお茶とお菓子が並ぶ。

実は今回の集まりはアポロンとアルテミスが考えたことだった。
蓮と月菜、そして由香と啓人、レトも参加している。空気は少しカオス。

由香が腕を組みながら呆れ気味。

由香
「……で?こういう親戚同士の集まりの時ってなんで毎度毎度“うち”なのよ?」

アポロンが紅茶を優雅に飲みながら言う。

アポロン
「ここが一番広いからな」

アルテミスが軽いノリで言う。

アルテミス
「岬の家は全員で集まるにはちょっと狭いから~」

啓人が即ツッコミを入れる。

啓人
「狭い言うな」

蓮がため息をつく。


「母さん……親父がこういう感じなの、知ってんだろ?」

由香があきらめたように言う。

由香
「まあ……そうだけど」

アポロンは気にせず楽しそうにしている。

アポロン
「こういう場も悪くないだろう?」

蓮がふと横を見る。そこにはアスクレピオスもいる。


「つーかさ……なんで兄貴まで参加してんだよ?」

アスクレピオスが穏やかに微笑む。

アスクレピオス
「久しぶりにお前に会いたくなったのだ」

少し間を置いて。

アスクレピオス
「そう話したら父上に誘われた」

蓮が軽く引く。


「……親父ノリ軽すぎだろ」

アポロンが笑う。

アポロン
「家族団らんというやつだ」

一方、蓮と月菜は同時に祖母のレトを見る。
蓮の少し表情が柔らぐ。


「まあ……でも、久しぶりに祖母ちゃんに会えたのは、ちょっと嬉しいかも」

月菜が身を乗り出す。

月菜
「お祖母ちゃん!」

目を輝かせる。

月菜
「私、お祖母ちゃんと話したかったこといっぱいあるの!」

レトが優しく微笑む。

レト
「ふふ……そう」

月菜の頭を軽く撫でる。

レト
「ゆっくり話しましょう」

空気が一瞬穏やかになる。

アルテミスが横から茶々を入れる。

アルテミス
「月菜は昔から、お祖母ちゃんのことが大好きだものね~」

月菜が少し照れる。

月菜
「もう、お母さん……!」

蓮がその様子を見て笑う。


「なんか……普通の家族っぽいな」

アポロンが意味深に微笑む。

アポロン
「“普通”か……」

レトが静かに続ける。

レト
「それが一番尊いのよ」

全員が一瞬静かになる。

神宮寺家・佳織の部屋

佳織はベッドに座り、ぼんやり天井を見ている。

佳織
「……いいなあ……」

少し間。

佳織
「蓮も、月菜ちゃんも……」

小さくため息。

佳織
「親戚同士で集まれるなんて……」

佳織が少しだけ寂しそうに笑う。

佳織
「……いいなあ……」

佳織が窓の外を見る。夜空には星が広がる。

佳織は膝を抱える。

佳織
「私には……」

言葉が止まる。

静寂。

佳織は小さく首を振る。

佳織
「……ううん」

顔を上げる。

佳織
「いるじゃん」

少し笑う。

佳織
「ママが」

小さな炎が手のひらに灯る。
佳織が炎を見つめる。

佳織
「まだ会ったことないけど……」

優しく包むように手を添える。

佳織
「ちゃんと……繋がってるもんね」

炎が静かに揺れる。
佳織が少しだけ強い表情に変わる。

佳織
「絶対……会いに行く」

立ち上がる。

佳織
「1人でも」

一歩踏み出す。

佳織
「みんなと一緒でも」

笑う。

佳織
「どっちでもいい!」

拳を握ると炎が消える。
佳織が窓を開ける。

佳織(小さく)
「待っててね、ママ」

その瞬間――

スッ……

窓の外に“顔”が現れる。
ヘルメスが逆さ気味に顔を突っ込む。

ヘルメス
「こんばんは~」

佳織が一瞬フリーズする。

佳織
「……」

次の瞬間――

佳織
「うわあああああっっ!!?」

ベッドから飛びのく。
ヘルメスがケラケラ笑う。

ヘルメス
「そんな驚くことないじゃ~ん」

佳織が指を差してツッコミ。

佳織
「いや!!不法侵入だから!!」

ヘルメスが軽く手を振る。

ヘルメス
「細かいこと気にしない気にしない」

佳織が即ツッコミを入れる。

佳織
「気にするよ!!」

ヘルメスが窓枠に腰掛ける。

ヘルメス
「とまあ、それはさておき……」

空気が一瞬だけ変わる。
ヘルメスが突然真面目な顔になり――佳織に向かって深々と頭を下げる

ヘルメス
「うちの子、しばらく預かってくんねえ!?」

佳織は完全に思考停止。

佳織
「……」

ゆっくり瞬きをする。

佳織
「……へ?」

夜風だけが流れる。

佳織(心の声)
(え……何言ってるのこの人……?)

神宮寺家・リビング

ヘルメスがソファに座りながら、スマホを差し出す。

ヘルメス
「ほい、これこれ」

スマホには元気そうな少年が映る。

ヘルメス
「劉祥雲(リュウ・シャンユン)。中国にいる俺の息子だ」

康弘が写真を覗き込みながら驚く。

康弘
「中国にも……ギリシアの神の子が……」

ヘルメスが軽い調子で続ける。

ヘルメス
「うちの祥雲は北京の高校に通っててさ~まだ1年坊主なんだけど――」

ニヤッと笑う。

ヘルメス
「俺に似て足が速えから、陸上部のエースになっちゃったの」

肩をすくめる。

ヘルメス
「まあ、アルテミスんとこの月菜ちゃんと一緒だな」

佳織が納得したように頷く。

佳織
「あの子も弓道部のエースだから……」

ヘルメスがそのまま本題へ。

ヘルメス
「んでまあ――」

少し身を乗り出す。

ヘルメス
「夏休み利用して日本に留学に来るみたいでさ、よければ預かってくんねえかな~?」

沈黙。

康弘が目を見開きながら固まる。

康弘(心の声)
(待て待て待て待て待て……!!部屋は……ある……!だが……!そもそも10代の男女を同居させていいのか!?いやいやいや倫理的にどうなんだ!?)

康弘は頭を抱える。

康弘(心の声)
(もしそいつが佳織に手を出したらどうする!?いや落ち着け俺!父親としての責任は!?)

頭の中が大混乱で完全にフリーズしている康弘。
佳織が心配そうに覗き込む。

佳織
「パ……パパ?」

康弘はハッと我に返る。

康弘
「はっ!?」

ヘルメスはケロッとしている。

ヘルメス
「大丈夫大丈夫、悪いやつじゃねえって!」

康弘が即ツッコミ。

康弘
「そういう問題じゃない!!」

佳織は困惑しながらも興味津々。

佳織
「でも……どんな子なんだろうね?」

ヘルメスがニヤッと笑う。

ヘルメス
「まあ、会えば分かるって!」

すると突如どこからともなく声が聞こえる。

???
「それもそうだな」

佳織がビクッとする。。

佳織
「……え?」

周囲を見渡す。
部屋の隅の“影”が揺れる。そこから―― 顔の“上半分だけ”が出てくるハデスの姿が。

佳織
「うわああああっっ!!」

佳織が飛びのく。

ハデス(平然と)
「元気だったか?佳織」

佳織が即ツッコミ。

佳織
「ハデス叔父さん!!その登場の仕方やめてって言ったじゃん!!」

ハデスがゆっくりと影から全身を出す。

ハデス
「そうだったか?」

佳織
「そうだよ!!ポセイドン叔父さんの登場の仕方の方がまだいいよ!!」

ヘルメスがニヤニヤしながら言う。

ヘルメス
「相変わらずですね~伯父上」

ハデスは軽く肩をすくめる。

ハデス
「お前もな」

康弘は少し引き気味。

康弘
「……今度は不気味な登場の仕方だな」

ハデスが首を傾げる。

ハデス
「ん?そうか?」

佳織がため息をつく。

佳織
「で、叔父さん……どうしてここに?」

ハデスが淡々と答える。

ハデス
「少し大悟と遊んでやっていた」

佳織は嫌な予感がする。

佳織
「……遊んで?」

ハデスがさらっと言う。

ハデス
「なあに。殴りかかってきたところを、かわしてやっただけだ」

佳織
「やっぱり相当恨まれてるじゃん……」

河川敷

大悟は地面に手をつき、息切れ。

大悟
「はぁ……はぁ……」

汗だく。

大悟
「あんのクソ親父……」

拳を握る。

大悟
「殴りかかるたびに……かわしやがって……!」

さらに息を荒げる。

大悟
「……一発くらい当たれよ……!!」

3日後 神宮寺家・玄関前(昼)

インターホンが鳴り、佳織が玄関に行く。

ガチャッ

扉を開けるとその前に立つのは――ヘルメスと、隣には劉祥雲。
祥雲は満面の笑みで一歩前に出る。

祥雲
「你好!我是刘祥云!请多关照!(ニーハオ!俺はリュウ・シャンユン!よろしく!)」

中国語で佳織は一瞬フリーズ。

佳織
「……え?」

ヘルメスがすぐにツッコミを入れる。

ヘルメス
「祥雲、挨拶は日本語で」

祥雲はちょっと不満そう。

祥雲
「え~?」

頭をかきながら言い直す。

祥雲
「えーっと……」

祥雲が笑顔で言う。

祥雲
「よろしくお願いしまーす!」

佳織がホッとしつつ微笑む。

佳織
「神宮寺佳織です」

軽くお辞儀。

佳織
「よろしくね、祥雲君」

祥雲が一瞬で距離を詰める。

 スッ

祥雲
「よろしくね、佳織ちゃん!」

ニコッと笑って――

祥雲
「かわいいね~」

空気が一瞬止まる。

佳織が少し固まる。

佳織
「……えっ?」

ヘルメスが全く気にせず笑う。

ヘルメス
「ってことだから!」

親指で祥雲を指す。

ヘルメス
「うちのガキの世話、よろしく頼むね~」

佳織(心の声)
(なんていうか……)

祥雲とヘルメスを交互に見る。

佳織(心の声)
(似た者親子だな~……)

その時、後ろから声が聞こえる。

康弘(家の中)
「佳織ー!来たのか!?」

祥雲はワクワクした様子。

祥雲
「ここが日本の拠点か~!」

靴を脱ぎながら。

祥雲
「なんか楽しそうじゃん!」

佳織は少し苦笑いをする。

佳織
「……うん、多分ね」

新たな日常が始まった。

神宮寺家・廊下~客室

康弘は前を歩きながら祥雲を案内する。

康弘
「こっちだよ」

祥雲がキョロキョロしながらついていく。

祥雲
「へえ~、日本の家ってこんな感じなんだ」

壁や天井を見上げる。

祥雲
「なんか落ち着くね」

ガチャッ

康弘がドアを開ける。

康弘
「ここが君の部屋だ」

軽く振り向く。

康弘
「好きに使って構わないよ」

祥雲がニコッと笑う。

祥雲
「ありがとう、おじさん」

部屋の中に入り、ベッドにポンと荷物を置く。

康弘がドアの前で一瞬立ち止まる。そして満面の笑みでゆっくりと振り返る。

康弘
「あ、そうだ」

祥雲が振り返る。

祥雲
「ん?」

康弘は変わらぬ笑顔のまま――

康弘
「うちの佳織に手を出したらダメだからね?」

一瞬の静寂。

康弘の背景に“圧”がかかる(オーラ的演出)

康弘(笑顔のまま)
「もし佳織に手を出したら、その時は……」

わずかに間を置く。

康弘
「おじさん、どうなるか分からないよ?」

祥雲は一瞬だけぽかんとする。

祥雲
「……」

しかしすぐにいつもの調子に戻る。

祥雲
「う~ん、わかった」

軽く頷く。
康弘は満足げに微笑む。

康弘
「うん、いい返事だ」

そのままドアを閉める。

バタン

祥雲は少し考える。

祥雲(小声)
「……あれ、普通に怖くなかった?」

ベッドに倒れ込む。

祥雲
「まあいっか!」

笑う。

カフェ

佳織、蓮、月菜、大悟、海斗、愛梨、祥雲がカフェに集まる。
佳織は少し緊張しながら紹介する。

佳織
「というわけで……」

祥雲を手で示す。

佳織
「この子がヘルメスさんの息子で、中国から来た劉祥雲君」

祥雲が軽く手を振る。

祥雲
「よろしく~!」

海斗は興味津々。

海斗
「おお~!マジで海外の半神!」

愛梨は冷静に観察する。

愛梨
「……軽そう」

祥雲は全く気にしない。

祥雲
「よく言われる!」

祥雲がふと蓮、月菜、愛梨を見る。

祥雲
「そういやさ~、パパから聞いたんだけど……3人って俺の“いとこ”なんでしょ?」

蓮が少し考える。


「……そうなるのかな?」

愛梨が淡々と頷く。

愛梨
「そうなるわね」

大悟がジト目。

大悟
「……おい、俺を忘れてんぞ?」

祥雲は首をかしげる。

祥雲
「あれ?そうだっけ?」

大悟が呆れながら言う。

大悟
「俺のおふくろは、お前の親父と姉弟だ……ったよな?」

大悟が佳織に尋ねる。
佳織は慌ててスマホ(神々の系図メモ)を確認。

佳織
「えっと……」

スクロール。

佳織
「……あ~、うん」

苦笑い。

佳織
「そうだね~……」

祥雲がハッとする。

祥雲
「あ~!!そうだった!」

大悟がため息をつく。

大悟
「適当すぎんだろお前……」

その時、祥雲がじーっと月菜を見る。
月菜が少し身構える。

月菜
「……な、何?」

祥雲が目を輝かせる。

祥雲
「へえ~!君が月菜ちゃんか~!」

身を乗り出す。

祥雲
「パパから“同い年のいとこがいて、1年生で弓道部のエースやってる”って聞いてたから、会ってみたかったんだけど――」

ニコッと笑う。

祥雲
「かわいいね~」

月菜が一瞬フリーズ。

月菜
「……初対面でこういうこと言うの?」

佳織が即座に挙手。

佳織
「私も初対面で言われたから」

祥雲は悪びれない。

祥雲
「思ったこと言っただけだよ?」

その瞬間――

ギギギ……

蓮がひきつった笑顔で立ち上がる。


「よ~し」

祥雲の肩に手を置く。


「お前、あとで裏来い」

祥雲はキョトンとする。

祥雲
「?」

海斗がニヤニヤしている。

海斗
「お、始まった」

愛梨が紅茶を飲みながら言う。

愛梨
「分かりやすいわね」

月菜が蓮を見つめる。

月菜(心の声)
(……蓮君)

少しだけ目を細める。

月菜(心の声)
(もしかして……佳織さんのこと……)

佳織はまだ気づいていない。

佳織
「?」

街中・夕方

夕暮れの街並み。カフェを出た7人が歩いている。

海斗が両手を頭の後ろで組みながら言う。

海斗
「いや~、しかし親戚多いなあ」

祥雲も笑いながら言う。

祥雲
「ギリシア神話の神々は、兄弟多すぎ問題ね!」

大悟がぼそっと言う。

大悟
「お前が軽すぎるだけだ……」

愛梨が少し前を歩きながら言う。

愛梨
「でも、本当に世界中に半神がいるのね……」

佳織が嬉しそうに頷く。

佳織
「なんか不思議だよね」

横断歩道を小さな子供が渡っている
その時、信号無視の車が猛スピードで突っ込んでくる。

月菜
「……!」

佳織が咄嗟に叫ぶ。

佳織
「危ない!!」

次の瞬間――

ドンッ!!

祥雲が駆け出し、風が巻き起こる。一瞬で横断歩道へ。
車がぶつかる寸前――子供を抱えて回避する。

ギュォォッ!!

車が目の前を通り過ぎる。

祥雲が軽やかに着地。子供が目を見開いている。

子供
「……え……?」

祥雲が優しく子供を下ろす。

祥雲
「大丈夫か?」

子供が泣きそうになりながら頷く。

子供
「……うん……」

祥雲がしゃがみ込み、目線を合わせる。

祥雲
「信号が青でもさ」

子供の頭を軽く撫でる。

祥雲
「ちゃんと左右を確認しないとな」

子供がこくこく頷く。
祥雲が笑う。

祥雲
「よし、えらい」

全員が驚いている。

海斗
「はっや……!」

大悟
「……見えなかったぞ」

愛梨
「これが……ヘルメスの力……」

佳織が祥雲を見る。風がまだわずかに揺れている。

佳織(心の声)
(これが……彼が持つ“神の力”……)

祥雲が戻ってきながら笑う。

祥雲
「いや~危なかった危なかった!」


「お前……マジで速いな」

祥雲が得意げに言う。

祥雲
「まあね!」

祥雲が親指を立てる。

祥雲
「“瞬足の半神”とは俺のことよ!」

愛梨が小さくため息。

愛梨
「……自分で言うのね」

月菜が少し微笑む。

月菜
「でも……かっこよかった」

祥雲が照れくさそうに笑う。

祥雲
「へへっ」

助けられた子供は母親の元へ戻っていく。祥雲が軽く手を振る。

祥雲
「次から横断歩道わたるときは気をつけろよ~!」

子供が涙目で頷く。

子供
「うん!」

母親がお礼を言いながら去っていく。
海斗は感心した様子。

海斗
「いやマジで速すぎだろ……」

大悟は腕を組む。

大悟
「……あれじゃ追えねえ」

愛梨が静かに祥雲を見る。

愛梨
「……人助けに迷いがないのね」

祥雲がケラッと笑う。

祥雲
「まあ、見ちゃったし?」

肩をすくめる。

祥雲
「助けられるなら助けたほうがよくない?」

その時、後ろから軽い声が聞こえる。

???
「お~祥雲。大丈夫か~?」

全員振り返る。

佳織
「……?」

そこに立っていたのは――サングラスをかけた怪しい男

海斗が小声で言う。


海斗

「誰このチャラい人?」

蓮は警戒気味。


「……不審者?」

男が「あっひどい」と笑う。

???
「いやいや、不審者じゃないって~」

男の体が突然“光”を放つ。
サングラス姿が消え――ヘルメスが現れる。

ヘルメス
「よ~っす!」

佳織が即ツッコミ。

佳織
「またその変装!?」

ヘルメスがドヤ顔で言う。

ヘルメス
「雰囲気?」

佳織が呆れる。

佳織
「雰囲気で変装しないで!」

祥雲が嬉しそうに近づく。

祥雲
「パパ!いつからこっち来てたの?」

ヘルメスはケロッとしている。

ヘルメス
「ついさっきだ」

祥雲が納得する。

祥雲
「あ、だから神気感じたんだ」

ヘルメスが祥雲の頭を軽くわしゃわしゃする。

ヘルメス
「いや~、ちゃんと人助けしてて安心したわ」

祥雲は少し不満そう。

祥雲
「子供扱いすんなって」

ヘルメスが笑う。

ヘルメス
「でも今のはよかったぞ」

佳織はその様子を見て少し笑う。

佳織(心の声)
(やっぱり……この親子、すごく似てる)

ヘルメスがふと後ろを振り返る。

ヘルメス
「……で?」

ニヤッと笑う。

ヘルメス
「2人も、自分の子たちのこと見に来たんだろ?」

全員
「?」

次の瞬間、夕風が吹く。

柔らかな金色の光。そして―― 2つの神気
現れたのは――アポロンとアルテミス。

蓮が驚いて立ち上がる。


「親父!?」

月菜も同時に声を上げる。

月菜
「お母さん!?」

アポロンはいつもの余裕の笑みを浮かべる。

アポロン
「いやあ」

周囲を見渡す。

アポロン
「蓮に、こんなに仲間が増えたものだからな」

肩をすくめる。

アポロン
「つい見に来てしまった」

アルテミスも微笑みながら言う。

アルテミス
「月菜も、親戚の子たちがいっぱいいて嬉しそうだったから」

月菜を見る。

アルテミス
「ちょっと気になっちゃって」

月菜が少し照れる。

月菜
「お母さん……」

佳織は2柱の神を見て目を見開く。

佳織
「……!この人たちが……」

呆然と呟く。

佳織
「アポロンとアルテミス……」

海斗が小声で言う。

海斗
「うわ、神様オーラすげえ……」

愛梨が静かに2柱を見る。特にアルテミスを見る月菜の表情に注目している。

アポロンがふと佳織を見る。

アポロン
「……あとはそうだな~」

意味深に笑う。

アポロン
「“例の半神の子”にも会いたかったからな」

佳織が目を丸くする。

佳織
「……え?」

アポロンは佳織をまっすぐ見る。

アポロン
「ヘスティアの娘――」

一拍。

アポロン
「神宮寺佳織」

静寂。

佳織は緊張で固まる。

佳織
「……!」

神々が動き始めた。

第8話 完

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