宮廷賢者アルトリア 第11話「アルトリア、国の改革へ」
第11話「アルトリア、国の改革へ」
宮廷・政務室
書類の山。
重厚な机に向かい、真剣な眼差しのアルトリア。
アルトリア(心の声)
(……なぜこういうことになったか)
一枚の法案をめくる。
アルトリア(心の声)
(昨日のことだ――)
回想
王宮・レオニスの私室
重厚な扉が閉まる。
レオニスが立ったままアルトリアを見つめる。
レオニス
「アルトリア、王命である」
アルトリア
「はい」
レオニス
「国の改革に力を貸せ」
沈黙。
アルトリア
「えっ!?私に国の改革に力を貸せと!?」
レオニスは微動だにしない。
レオニス
「驚くことはなかろう?そなたは二週間アルゼリアに行ってきたのだ」
アルトリア
「……」
レオニス
「わが国にもその経験を活かしてほしい」
アルトリア、戸惑い。
アルトリア
「し……しかし僕はまだ二十歳にもなっていない若輩者です……!」
レオニス
「年齢で国は動かぬ」
一歩近づく。
レオニス
「そなたの父、バーンズ・フィリアが私の父に気に入られたのもそのぐらいの歳だ」
アルトリア、固まる。
アルトリア
「え……?」
沈黙。
アルトリア
「私の家族のことは……お話していませんが……?」
レオニス、静かに息を吐く。
レオニス
「うすうす疑問には思っていた……そなたの父にも聞いて確信した」
アルトリアの瞳が揺れる。
レオニス
「そなた、バーンズの三男だろう?」
空気が凍る。
アルトリア
「……」
レオニス
「隠す理由は理解している。だがな」
王の眼が鋭くなる。
レオニス
「血は関係ない。能力だ」
間。
レオニス
「バーンズの息子だから頼むのではない。“アルトリア・フィリア”だから頼むのだ」
アルトリア、ゆっくり顔を上げる。
アルトリア
「……陛下」
レオニス
「この国は今、転換期にある。旧貴族派は静かに牙を研いでいる。征服地は不安定。財政も限界が近い。若い知性が必要だ」
長い沈黙。
アルトリア、深く息を吸う。
アルトリア
「……分かりました。やれるだけやってみます」
レオニス、わずかに微笑む。
レオニス
「よい。明日より国家改革評議会を立ち上げる。そなたはその中核だ」
アルトリア、目を見開く。
レオニス
「覚悟せよ」
現在 政務室
アルトリア、書類をめくる。
アルトリア(心の声)
(……覚悟、か)
法案を読む。
「徴税制度改正案」
「征服地統治令改定」
「官僚登用規程改正」
アルトリア、眉を寄せる。
アルトリア
「……穴だらけだな」
ページをめくる。
アルトリア
「これでは旧貴族派に反対されて終わる」
机に手を置く。
アルトリア(心の声)
(父上は……この場にどう立ったのだろう?)
一瞬、バーンズの姿が脳裏をよぎる。
アルトリア、目を閉じる。そして開く。
アルトリア
「……まあ、やるだけやるとしよう」
ペンを取る。
さらさらと修正を書き始める。
執務室
アルトリアが椅子に座り、
イルハレム、ジェームズ、ダイムが向かいに立っている。
ジェームズ
「……本当に陛下のご命令で?」
ダイム
「……正直、信じられません」
イルハレム
「従兄上が国政にまで関わるとは……」
アルトリア、苦笑する。
アルトリア
「僕も信じられないよ」
ジェームズ
「改革、ですか……」
ダイム
「敵も多いはずです」
イルハレム、真剣な表情。
イルハレム
「旧貴族派は間違いなく動きます」
アルトリア、頷く。
アルトリア
「うん。だからこそ、僕一人では無理だ」
3人が顔を上げる。
アルトリア
「今回2人の協力者を得た」
ジェームズ
「協力者?」
アルトリア
「宰相の次男で法務官の――レオン・ガルサ」
3人が息をのむ。
ダイム
「宰相家の……!」
アルトリア
「そして、外務長官の次男で外交官の――ジャン・ホルン」
イルハレム
「ホルン家……」
アルトリア
「二人とも若いけど優秀だよ」
一拍置いて、穏やかに笑う。
アルトリア
「爵位も、君たちと同じ男爵」
ジェームズ
「つまり……」
ダイム
「若い世代で固めると?」
アルトリア
「そう」
アルトリア、机に手を置く。
アルトリア
「旧貴族派は“血統と伝統”で押してくる。なら僕たちは“能力と理論”で対抗する」
イルハレムの目が光る。
ダイム
「面白いですね」
ジェームズ
「法と外交の両輪……」
イルハレム
「従兄上、本気ですね」
アルトリア、静かに言う。
アルトリア
「これはただの改革じゃない。この国が、これから百年続く形を作る仕事だ」
部屋に緊張が走る。
イルハレム
「……僕は最初から従兄上の味方です」
ダイム
「俺もです。最後まで」
ジェームズ
「同じくです」
アルトリアは少しだけ安心した表情。
アルトリア
「ありがとう」
王宮・大食堂
長い楕円形の食卓に豪奢な料理が並ぶ。
王族が席につき、穏やかな灯りの中で会話が交わされている。
レオニスが静かに口を開く。
レオニス
「アルトリアに国政を任せた」
一瞬、空気が止まる。
セリア
「……アルトリアに国政をですか?」
レオニス
「ああ。昨日から任せている」
ガイナスが腕を組む。
ガイナス
「思い切りましたね、父上」
ドルゴンがにやりと笑う。
ドルゴン
「さすが僕が見込んだ通りの方です」
ユリナが目を輝かせる。
ユリナ
「アルトリア様が国政に……」
アグニスがフォークを止める。
アグニス
「ですが……さすがに若すぎませんか?」
フリアも穏やかに頷く。
フリア
「アグニスの言う通りです。まだ十九歳では?」
レオニスがゆっくりとワインを置く。
レオニス
「歳は関係ない」
視線が鋭くなる。
レオニス
「有能な者が政治を動かさねば、この国は生き残れん」
静寂。
エリスが静かに微笑む。
エリス
「やはり父上の信頼が厚いのですね」
セリアは視線を落とす。
セリア
「……」
アグニスがじっとセリアを見てニヤリとする。
アグニス
「ところでよ、セリア」
セリア
「え?」
アグニス
「お前、あいつとは最近どうなんだよ?」
セリアが固まる。
フォークが小さく音を立てる。
セリア
「な、何のことですか……?」
ガイナスが咳払い。
ガイナス
「アグニス。その話はやめておけ」
アグニス
「? そうなんですか?」
ガイナス
「いろいろあるのだ」
ユリナが小声で言う。
ユリナ
「……アルゼリア殿のことですよね」
セリアが顔が真っ赤になる。
セリア
「ユ、ユリナ!?」
アグニス、目を輝かせる。
アグニス
「なんだなんだ!?面白そうじゃねぇか!」
フリアはやれやれと微笑む。
フリア
「食事中ですよ、アグニス」
レオニスは静かにセリアを見る。
レオニス
「……セリア」
セリアは姿勢を正す。
レオニス
「アルトリアはこれから多くの敵を作る。そなたはどうする?」
一瞬、冗談の空気が消える。
セリアは真剣な瞳で答える。
セリア
「……私は、彼の隣に立ちます」
アグニスが小声で言う。
アグニス
「やっぱそうかよ……」
エリスは優しく微笑む。
エリス
「頼もしいですね」
レオニスはゆっくりと頷く。
レオニス
「ならばよい」
セリアの頬はまだ赤い。
フィリア家・書斎
窓の外には月明かり。
机の上には分厚い法典と地図。
アルトリアは椅子に腰掛け、本を読んでいる。
ページをめくる音だけが静かに響く。
やがて、手が止まる。
アルトリア、目を閉じる。
アルトリア(独白)
「……干ばつの問題を解決したことがきっかけで王宮に召し出されて、もう九ヶ月か」
窓の外を見る。
アルトリア
「ユリナ姫様の毒を解毒して……」
一瞬、あの夜の緊迫した宮廷がよぎる。
アルトリア
「隣国イルカンへ赴き、戦争を止め……」
戦場の空気、剣戟の音。
アルトリア
「アルゼリアの王都で魔導暴走を止め……」
ヨハン王の視線、イルーシャの真剣な瞳。
アルトリア
「そして今は……国政に関与している」
苦笑。
アルトリア
「本当に、何がどうなってこうなったんだか」
本を閉じる。
静かな沈黙。
アルトリアの目が遠くを見る。
アルトリア
「……兄上達の一件があって以来、窮屈に感じたレグナリア」
一瞬、影が落ちる。
アルトリア
「都を出て、エルメア平原で畑仕事をしながら育った」
風に揺れる麦畑の記憶。
泥だらけの手。
汗と土の匂い。
アルトリア
「ただ静かに生きるつもりだった」
小さく笑う。
アルトリア
「まさか王宮で法案に目を通す日が来るなんてね」
再び机を見る。
書類の山。
アルトリア、深く息を吐く。
アルトリア
「……父上」
バーンズの姿が脳裏に浮かぶ。
アルトリア
「あなたは、どんな思いで政治の舞台に立ったのですか?」
拳を軽く握る。
アルトリア
「僕はまだ、あなたの背中に追いつけていない」
月明かりが横顔を照らす。
アルトリア
「でも……」
視線が強くなる。
アルトリア
「逃げない。畑を守るために理論を磨いた。なら今度は――国を守るために理を使うだけだ」
静かな決意。
外で風が吹く。
遠く、王宮の鐘が鳴る。
若き賢者は、静かに立ち上がる。
王宮・改革評議会執務室
机の上には整然と積まれた書類。アルトリアがペンを走らせている。
アルトリア
「……徴税再編の条文、まだ甘いな」
扉が控えめに叩かれる。
コン、コン。
アルトリア
「どうぞ」
扉が開く。
整った黒髪に落ち着いた目の青年、レオン・ガルサが一礼する。
レオン
「失礼します」
静かな声。
レオン
「本日提出された法案です」
厚みのある書類束を机に置く。アルトリアが視線を上げる。
アルトリア
「……内容は?」
レオン、淡々と説明を始める。
レオン
「旧貴族派からの提案です。名目は“征服地安定化のための財政補助制度”についてです」
アルトリア、眉をわずかに動かす。
レオン
「しかし実質は、徴税権の一部を地方有力貴族へ戻す内容」
ページを開き、指で示す。
レオン
「第七条の文言が曖昧です。“特例的裁量”という語が危険です」
アルトリア、書類を読み進める。
アルトリア
「……なるほど」
レオン
「表向きは穏健ですが、十年後には中央の統制が弱体化します」
アルトリア
「財源は?」
レオン
「王庫の一部を担保にする案です。将来的に王権の財政自由度が削がれます」
アルトリアはゆっくり顔を上げる。
アルトリア
「……君は王太子妃殿下の弟のはずなのに、随分と仕事が丁寧なんだな」
一瞬の沈黙。
レオンの表情は変わらない。
レオン
「血縁は職務に関係ありません」
淡々と。
レオン
「むしろ姉が王家に嫁いだ以上、私が甘く見られるわけにはいきません」
アルトリア、わずかに微笑む。
アルトリア
「なるほど」
レオン
「この法案は、通せば旧貴族派の影響力が増します。否決すれば、“若造が伝統を否定した”と騒がれます」
アルトリア
「……巧妙だな」
レオン
「はい。カーン卿の匂いがします」
空気が少し重くなる。
アルトリア
「君はどう見る?」
レオン、即答。
レオン
「全面否決は得策ではありません」
アルトリアが興味深そうに目を細める。
レオン
「修正案を出し、主導権を握るべきです。“特例的裁量”を監査機関付きに変更。徴税権は中央承認制へ。財源は一時的国債に切り替える」
アルトリアがわずかに笑う。
アルトリア
「……いいな」
レオン
「ありがとうございます」
アルトリア
「君は法を守る側じゃないな」
レオン
「?」
アルトリア
「法を使って盤面を動かす側だ」
レオンはほんのわずかに目を細める。
レオン
「……それがあなたの望む形なら」
静かな共鳴。
アルトリアが立ち上がる。
アルトリア
「よし。修正案を作ろう」
レオン
「承知しました」
二人が並んで机に向かう。
若き知性が、国家の未来を再構築し始める。
レオンが退室し、静けさが戻った直後、再び扉が叩かれる。
コン、コン。
アルトリア
「どうぞ」
扉が開く。
明るい笑みを浮かべた青年、ジャン・ホルンが一礼する。
ジャン
「失礼いたします」
軽やかな口調だが、目は真剣。
ジャン
「周辺諸国の情報が入り、お伝えしにまいりました」
アルトリア
「聞かせて」
ジャンは素早く地図を広げる。
机の上に大陸全図が広がる。
ジャンが指で地図の北を示す。
ジャン
「北のロゴ王国は、先日国王が崩御」
アルトリア
「……後継は?」
ジャン
「王位継承を巡って三派が対立。現在、事実上の内乱状態です」
アルトリアが静かに言う。
アルトリア
「北方交易は滞るな」
ジャン
「ええ。冬までに収まらなければ難民流入の可能性もあります」
ジャンが指を東へ滑らせる。
ジャン
「イルカン王国」
アルトリアの表情がわずかに動く。
ジャン
「隣国バラチャッタ王国との戦争継続中。ジョルジュ王自ら前線で指揮を執っているとのこと」
アルトリア
「……彼らしい」
ジャン
「勝てば勢いを増します。負ければ不安定化。どちらに転んでも東方は揺れます」
ジャンが視線を西へ。
ジャン
「アルゼリア王国」
空気が少し変わる。
ジャン
「ヨハン王はレグナスとの正式同盟交渉の準備中」
アルトリア
「……早いな」
ジャン
「ええ。賢王ですから」
ジャンが少し意味深に言う。
ジャン
「“形式”も整える可能性があります」
アルトリア
「形式?」
ジャン
「血縁、婚姻、学術連携……色々と」
アルトリアが無言になる。
ジャンが地図を南へ。
ジャン
「南のベルナード連合。前国家が次の盟主の座を巡って内紛状態。統一意思なし」
アルトリア
「……南は当面脅威ではないな」
ジャン
「ええ。ただ、空白地帯は他国が狙います」
ジャンは地図の端を指す。
ジャン
「海上部族の動きが活発化。東方草原部族は移動開始。小国同士の同盟も再編中」
アルトリア、静かに地図を見つめる。
アルトリア
「……大陸は揺れているな」
ジャン
「はい。そして――」
ジャンは真っ直ぐアルトリアを見る。
ジャン
「この状況で、レグナスが内部で揺れれば……」
アルトリア
「周辺は一斉に動く」
ジャン
「その通りです」
沈黙。
アルトリア
「つまり、国内改革は外交戦略でもある」
ジャンが微笑む。
ジャン
「ええ。国内が強固であれば、同盟も有利に結べる。弱体化すれば、干渉されます」
アルトリア
「……君は若いのに随分冷静だな」
ジャン
「外務長官の息子ですので」
少し悪戯っぽく。
ジャン
「それに、イルハレム殿とよく議論していますから」
アルトリアが軽く笑う。
アルトリア
「なるほど」
ジャン
「一つだけ、提言があります」
アルトリア
「何だ?」
ジャン
「アルゼリアとの同盟は、時間をかけすぎると他国に警戒されます。迅速に進めるべきです」
アルトリアが静かに頷く。
アルトリア
「……分かった。国内改革を急ぐ理由がまた一つ増えたな」
ジャン
「ええ。大陸は待ってくれません」
アルトリアは地図の中央――レグナスを見つめる。
アルトリア
「……ならば、急ごう」
若き賢者の視線は、国境を越えていた。
王宮・謁見の間(非公開報告)
広い謁見の間だが、今は人払いされている。
玉座の前に立つアルトリア。レオニスは静かに座っている。
レオニス
「報告を」
アルトリアが一礼。
アルトリア
「は。まず、旧貴族派より提出された征服地財政補助案ですが――」
書類を差し出す。
アルトリア
「実質的には徴税権の一部を地方貴族へ戻す内容です」
レオニス、目を細める。
レオニス
「……やはりか」
アルトリア
「第七条の“特例的裁量”が危険です。将来的に中央統制が弱体化します」
レオニス
「対案は?」
アルトリア
「監査機関設置と中央承認制への修正。財源は王庫ではなく国債で一時的に賄います」
レオニスがわずかに口元を緩める。
レオニス
「レオンか?」
アルトリア
「はい。優秀です」
レオニス
「父に似たか」
アルトリア
「……おそらくは」
アルトリアは地図を広げる。
アルトリア
「周辺諸国の情勢も報告します。ロゴ王国は王位継承争いにより内乱状態。難民流入の可能性があります」
レオニス
「北方軍の警戒を強めよう」
アルトリア
「イルカン王国はバラチャッタと戦争中。ジョルジュ王自ら前線指揮」
レオニス
「勝てば勢力拡大、敗れれば不安定化か」
アルトリア
「いずれにせよ、東方は揺れます」
アルトリア
「アルゼリア王国」
一瞬の沈黙。
アルトリア
「ヨハン王は正式同盟交渉準備中」
レオニス
「……来るか」
アルトリア
「時間をかければ他国に警戒されます。迅速な判断が必要です」
レオニス
「縁談も含めて、か」
アルトリアが僅かに目を伏せる。
アルトリア
「可能性は否定できません」
レオニスはアルトリアを見る。
レオニス
「揺れるか?」
アルトリア
「……国益を優先します」
レオニスは静かに頷く。
アルトリア
「ベルナード連合は内紛中。当面は脅威ではありません」
アルトリアがまっすぐレオニスを見る。
アルトリア
「ただ、国内改革を急がねばなりません。外は揺れています。内が弱れば、必ず干渉されます」
沈黙。
広い空間に二人の呼吸だけが響く。
レオニスがゆっくり立ち上がる。
レオニス
「……よく見えている」
玉座から降り、アルトリアの前に立つ。
レオニス
「そなたは賢者だ。だが、これからは“政治家”でもある」
アルトリアは真っ直ぐ見上げる。
レオニス
「敵は増える。裏切りもある。それでも進めるか?」
アルトリアが迷いなく言う。
アルトリア
「はい。理がある限り」
一瞬の静寂。
レオニスが力強く言う。
レオニス
「ならば私が支える。思う存分やれ」
アルトリアが深く一礼する。
アルトリア
「……ありがとうございます、陛下」
王宮・中庭付近
アルトリアが戻ってくる。
そこにはイルハレムにジェームズ、ダイム、レオン、ジャン、五人が揃っている。
アルトリア
「……思う存分やれってさ」
一瞬、静寂。
次の瞬間、五人が一斉に頭を下げる。
イルハレム
「お供します」
ジェームズ
「最後まで」
ダイム
「命を賭しても」
レオン
「法で支えます」
ジャン
「外交はお任せください」
アルトリアはむずがゆくなる。
アルトリア
「いやいやいや、そんな大げさな……」
頬をかく。
アルトリア
「頭を上げてよ……」
その瞬間。
背後から――
アグニス
「うわあ!!」
アルトリア
「わあああっ!!」
突然の大声。
アルトリアが思い切り驚いてバランスを崩す。
ドンッ。
アルトリア転倒。巻き添えでイルハレムとジャンも倒れる。
イルハレム
「うわっ!?」
ジャン
「っ……!」
アグニスが大笑い。
アグニス
「なんだイルハレムも一緒か~!てかお前そろそろ慣れろよ~!」
アルトリア
「や……やめてください……」
アグニスが肩をボンボン叩く。
アグニス
「つかお前も驚いたのか~」
ジャンをじっと見る。
アグニス
「え~っとお前は~……」
ジャンが慌てて姿勢を正す。
ジャン
「先月から外務局配属になりました……テイラル・ホルンの次男、ジャン・ホルンです……」
アグニス
「あ?テイラル殿の次男……?」
一瞬、空気が止まる。
その背後から低く、冷たい声。
ティアナ
「お、う、じ、さ、ま?」
アグニスが硬直。
アグニス
「ティ……ティアナ……」
ティアナがにこやかに近づく。
だが目が笑っていない。
ティアナ
「うちの弟に何をしているのですか?」
ジャンは冷や汗が止まらない。
アルトリア(心の声)
「あ~やっぱりこうなった~……」
アグニス
「い、いや俺はちょっと挨拶をだな……」
ティアナがさらに一歩。
ティアナ
「“うちの弟”に?」
アグニス
「ひっ……」
ティアナ
「乱暴な真似を?」
アグニス
「してません!!」
ティアナが微笑む。
ティアナ
「では――逃げる必要はありませんね?」
アグニス
「うおおおおおっ!」
アグニスは全力で逃走し、ティアナが優雅に追いかける。
ティアナ
「待ちなさい王子様!」
アルトリアたちは呆然。ジャンが小声で言う。
ジャン
「……姉は怒らせると怖いんです」
イルハレムが起き上がりながら言う。
イルハレム
「見れば分かる」
アルトリアは土を払いながら立ち上がる。
アルトリア
「……平和だな」
レオンが静かに……
レオン
「嵐の前の……かもしれません」
ジェームズの微笑。
ジェームズ
「少なくとも、味方は賑やかですね」
アルトリアが仲間たちを見回す。
若い世代。笑いと緊張が混ざる空気。
アルトリア
「……よし。改革を始めようか」
遠くでアグニスの悲鳴が響く。
カーン邸
重厚な石造りの屋敷。暖炉の火がゆらめく。
書斎には二人の老人。バーンズ・フィリアとアントニウス・カーン。
そして少し離れて控えるピエール。
静かな沈黙。
アントニウスは低く笑う。
アントニウス
「……久しぶりだな、バーンズ」
バーンズが穏やかに。
バーンズ
「久しぶりだ、アントニウス。昔はよくこうして夜更けまで語ったものだな」
アントニウス
「若かった。国を動かせると本気で思っていた」
バーンズ
「今も動かしているだろう?」
アントニウスは鼻で笑う。
アントニウス
「形だけだ……おぬしの息子が宮廷賢者として仕えているそうだな」
バーンズは誇らしげに言う。
バーンズ
「ああ。立派になってくれて嬉しいよ」
アントニウスがゆっくりとワインを回す。
アントニウス
「すでに長男と次男を失っているのに……」
暖炉の火が揺れる。
アントニウス
「三男に希望をかけるか?」
一瞬空気が凍る。
ピエールの手がわずかに動く。
バーンズが静かに答える。
バーンズ
「……息子に希望をかけるのは、父として当然だ」
アントニウス
「愚かだな」
バーンズ
「そうかもしれん」
視線がぶつかる。
バーンズ
「だが、あの子は強い」
アントニウス
「強い者ほど折れた時に音が響く」
沈黙。
バーンズが立ち上がる。
バーンズ
「今日は顔を見に来ただけだ。昔の友としてな」
アントニウスは微笑む。だが目は冷たい。
アントニウス
「……ああ。友、か」
カーン邸前
夜風が吹く。
バーンズとピエールが馬車へ向かう。
ピエール
「兄上。あの者はやはり信用なりません。まるで野心の塊のようです」
バーンズが馬車に乗り込みながら言う。
バーンズ
「そのようなことはとうに見えている」
ピエール
「ではなぜ……?」
バーンズ
「ともに宮廷に仕官し、ともに先王に召し出された仲だ」
バーンズは夜空を見る。
バーンズ
「私が止めてやりたいのだ」
ピエール
「……兄上」
馬車がゆっくり動き出す。
カーン邸・書斎
アントニウスが窓辺に立っている。去っていく馬車を見下ろす。
暖炉の火が背中を赤く染める。
アントニウス
「……もう戻れんよ、バーンズ。昔のようには」
アントニウスがゆっくり目を閉じる。
アントニウス
「お前の愛する息子たち――シャルルとハンスを殺したときから」
炎が揺れる。
アントニウス
「アルトリアも……」
冷たい声。
アントニウス
「殺してしまうかもしれぬ」
夜・アルトリアの屋敷
書斎の灯りがまだ消えていない。
アルトリアは机に向かい、法案に目を通している。
外から控えめなノック。
コン、コン。
アルトリア
「……?こんな時間に?」
アルトリアは立ち上がり、玄関へ向かう。
扉を開けるとそこにはセリアが立っていた。
アルトリア
「ひ……姫様……!?」
セリア、穏やかな微笑み。
セリア
「こんばんは」
アルトリア、完全に固まる。
アルトリア
「こ、こんな夜に……」
セリア
「迷惑だったかしら?」
アルトリア
「い、いえ!そんなことは!」
慌てて扉を大きく開く。
アルトリア
「ど、どうぞ……!」
セリアは静かに中へ入る。
居間
簡素だが整った部屋。
セリアが椅子に腰掛ける。アルトリアは妙に緊張している。
セリア
「……聞いたわ」
アルトリア
「……何を、ですか」
セリア
「国政に携わっていると」
アルトリア
「もう広まっているんですね」
セリア
「王宮は噂が早いもの」
セリアが少し真剣な目をする。
セリア
「……大丈夫?」
アルトリアが目を瞬かせる。
アルトリア
「え?」
セリア
「あなた、無理していない?」
アルトリアは視線を逸らす。
アルトリア
「無理は……」
少し笑う。
アルトリア
「正直、しています」
セリア
「でしょうね」
アルトリア
「でも――やるしかありません」
セリアがじっと見つめる。
セリア
「敵は増えるわよ?」
アルトリア
「覚悟しています」
セリア
「……命を狙われるかもしれない」
一瞬空気が冷える。
アルトリア
「……それでも、進みます」
セリアがゆっくり立ち上がる。
セリア
「なら……」
セリアは一歩近づく。
セリア
「私はあなたの盾になる」
アルトリア
「姫様……」
アルトリアは目を伏せる。
アルトリア
「……どうしてそこまで?」
セリアが少しだけ頬を赤らめる。
セリア
「理由を言わせるつもり?」
アルトリア
「……」
セリアは視線を外す。
セリア
「あなたが倒れたら、困るのよ」
アルトリアが静かに笑う。
アルトリア
「……ありがとうございます」
セリア
「礼は改革を成功させてから言いなさい」
セリアがアルトリアを見つめる。
セリア
「……今晩はここに泊まっていくわ」
沈黙。
アルトリア
「……え?」
セリア
「泊まっていく」
アルトリア
「えええええ!?」
立ち上がりかけて椅子にぶつかる。
アルトリア
「い、いや、ここは私の家でして……!」
セリア
「知っているわ」
セリアがわずかに微笑む。
セリア
「でも城に戻るには遅い時間だもの」
アルトリア
「……確かに」
少し気まずい沈黙。
アルトリア
「客人用の部屋があります」
セリア
「用意がいいのね」
アルトリア
「父が時折訪れるので……」
セリアが頷く。
客間
アルトリアが戸を開ける。
アルトリア
「こちらです」
セリアが部屋を見回す。
セリア
「落ち着くわ」
アルトリア
「ご不便はないかと……」
セリア
「ええ。十分よ」
沈黙。
アルトリア
「……では、おやすみなさい」
セリア
「待って」
アルトリアが振り返る。
セリア
「……本当に無理しないで」
アルトリア
「……お気遣いありがとうございます」
少し近い距離。
セリア
「……おやすみ、アルトリア」
アルトリア
「……おやすみなさい、姫様」
セリアが微笑む。戸が静かに閉まる。
アルトリア(心の声)
(……心臓が持たない)
深夜
白い寝間着姿のセリアが、少し迷いながらある扉の前で立ち止まる。そこはアルトリアの部屋。
セリア(小声)
「……少しだけ」
ゆっくりと扉を開ける。
アルトリアの部屋
机には開きかけの本。法案の束。ランプが消えている。
ベッドには、深く眠るアルトリア。穏やかな寝息。
セリアはそっと近づく。
月明かりがアルトリアの横顔を照らす。
セリアが静かにしゃがみ込む。
セリア(囁くように)
「……本当にきれいな顔」
指先がわずかに震える。
セリア
「こんな顔で国を背負おうとしているなんて」
アルトリアは静かに眠っている。無防備。
セリアの瞳が柔らかくなる。
セリア
「強いのにどこか危うい」
少しだけ寂しそうに微笑む。
セリア
「だから放っておけないのよ」
セリアが目を閉じてゆっくりと身をかがめる。
そっと、アルトリアの頬へ――優しく、触れるだけのキス。そして離れる。
アルトリアは目を覚まさない。
セリアは立ち上がる。
セリア(小声)
「……守るわ。誰よりもあなたを」
扉へ向かう。
最後にもう一度振り返る。
セリア
「おやすみ、アルトリア」
静かに部屋を出る。扉が音もなく閉まる。
月明かりだけが残る。
眠る若き賢者はまだ知らない。その隣に立とうとする者の覚悟を。
王宮・政務室
机の上には大量の書類と地図。
アルトリアが椅子に座り、真剣な表情で書類を見ている。
その周りには、イルハレム、ジェームズ、ダイムに加え、レオンとジャンが揃っている。
ジャンが地図を広げる。
ジャン
「ロゴ王国の内乱ですが、王位争いはまだ続いています」
アルトリア
「収まりそう?」
ジャン
「当分無理でしょう」
レオンが書類を差し出す。
レオン
「こちらは徴税法改正案の修正です」
アルトリア
「ありがとう」
アルトリアは内容を素早く読む。
アルトリア
「……この条文いいね」
レオン
「旧貴族派が反論しづらい形にしました」
イルハレム
「うまい」
ジェームズ
「法の抜け道を塞いでいる」
ダイム
「これなら評議会でも通せるかもしれません」
アルトリア
「うん。これで行こう」
廊下
柱の陰からセリアが覗いている。
セリア
「……」
政務室の中を見ている。
そこへ静かに近づく足音。それはエリスのものだった。
セリア
「エリス?」
エリス
「ひっ!?」
セリア
「どうしたの?」
エリスが少し赤くなる。
セリアが少し意地悪に微笑む。
セリア
「もしかして……イルハレムのことを見に来たの?」
エリス
「は……はい……」
セリア
「ふふ」
セリア
「じゃあ一緒に見ましょう」
セリアはエリスを柱の陰へ引き寄せる。
二人でこっそり政務室を覗く。
廊下の別の柱にはもう一人。
リーナが必死に覗いている。
リーナ
「ジェームズ殿……」
セリアがすぐ気付く。
セリア
「あら?」
リーナが振り向く。
リーナ
「ひっ!?」
セリア
「六軍将のリーナが、ほかの男を見るなんて珍しいわね……」
リーナ、慌てる。
リーナ
「い……いえ……!私はただ騎士として……!」
エリスがくすっと笑う。
エリス
「ごまかさなくていいのに」
リーナ
「ち、違います!私はただ……!」
セリア
「ただ?」
リーナは真っ赤になる。
リーナ
「……」
言葉が出ない。
セリアが楽しそうに言う。
セリア
「ふふ。今日は覗き見が多いわね」
3人で再び政務室を見る。
政務室(内部)
アルトリアが真剣に話している。
アルトリア
「旧貴族派は必ず反撃してくる。だから先手を打つ」
ジャン
「外交でも動いておきます」
レオン
「法の準備は整えます」
イルハレム
「財政案は僕が詰めます」
ジェームズ
「治安は任せてください」
ダイム
「情報収集も強化します」
アルトリア
「ありがとう。この国を良くするために」
廊下でセリア達が見ている。
エリス
「……頑張っていますね」
リーナ
「ジェームズ殿……」
セリアはアルトリアを見て優しく微笑む。
セリア(小声)
「……本当に、放っておけない人」
少し離れたところを――ユリナと侍女リリアが歩いている。
ユリナがふと足を止める。
ユリナ
「……」
リリア
「姫様?」
ユリナが柱の陰を見つめる。
ユリナ
「セリア姉上もエリス姉上も……執務室を覗いているわ」
リリアもそっと覗く。
リリア
「本当ですね。六軍将のリーナ隊長まで……御三方ともどうされたのでしょう?」
ユリナが少し笑う。
ユリナ
「あら、わからないの?」
リリア
「え?」
ユリナが小声で……
ユリナ
「恋よ、恋」
リリア
「ええっ!?」
大きな声を出しかける。ユリナが慌てて口を塞ぐ。
ユリナ
「しーっ!!」
リリア
「むぐっ!?」
ユリナ
「聞こえるわよ!」
リリアがこくこく頷く。
ユリナがそっと手を離す。
リリア(小声)
「まさか……」
ユリナ
「ふふ。王宮って意外と恋の名所なのよね」
リリア
「そ、そうなんですか……」
ユリナ
「だから静かにしてあげましょう。邪魔しちゃだめ」
リリア
「は、はい」
二人は静かにその場を離れる。
別の柱にはガイナスと、その妻マリエルがいた。
マリエルの腕にはジャックがいる。
ガイナスが政務室の中を見ている。
ガイナス
「……そなたの弟。法務官になってまだ間もないのに頑張っているな」
マリエルが柔らかく微笑む。
マリエル
「ええ。自慢の弟です」
ガイナス
「アルトリアと組めば、面白いことになりそうだ」
マリエル
「ええ」
ジャックが小さく笑う。
マリエル
「この子が大きくなる頃には……きっとこの国も変わっているでしょうね」
ガイナスが頷く。
ガイナス
「変わらねばならん。この若者たちの手でな」
二人は静かに政務室を見つめる。
中では――若き賢者と仲間たちが国の未来を議論している。
執務室
アルトリアたちが議論している。
その時――
コン、コン。
扉がノックされる。
アルトリア
「どうぞ」
扉が開く。
入ってきたのは二人の重鎮。宰相ロバート・ガルサと外務長官テイラル・ホルン。
空気が一瞬で引き締まる。
アルトリアたちはすぐに立ち上がる。
アルトリア
「宰相、外務長官」
レオン、ジャンも姿勢を正す。全員が頭を下げる。
ロバートが軽く手を振る。
ロバート
「かしこまることはない。倅の様子を見に来ただけだ」
テイラルも腕を組みながら言う。
テイラル
「私もだ」
レオンとジャンは完全に固まっている。
レオン
「……」
ジャン
「……」
アルトリアが少し苦笑い。ロバートがレオンの肩に手を置く。
ロバート
「これのことをよろしく頼むぞ。これでも繊細な子だ」
レオン
「父上……」
テイラルがジャンを見る。
テイラル
「これのこともな」
ジャン
「ち、父上……」
テイラル
「こいつは頭は回るが、少し調子に乗るところがある」
ジャン
「それは外交的自信といいます」
テイラル
「生意気な」
アルトリアが軽く頭を下げる。
アルトリア
「はい。二人とも非常に優秀です」
ロバートが満足そうに笑う。
ロバート
「そうか」
テイラル
「なら安心だ」
イルハレムが一歩前に出る。
イルハレム
「若い者同士、力を合わせてやっています」
ジェームズ
「国のために」
ダイム
「必ず成果を出します」
ロバートが真剣な目になる。
ロバート
「……期待している」
テイラル
「今の宮廷には、若い風が必要だ」
二人の視線がアルトリアへ向く。
ロバート
「陛下がそなたに任せた意味。よく分かっているな?」
アルトリアはまっすぐ答える。
アルトリア
「はい。必ず、この国を良くします」
沈黙。
ロバートはゆっくり頷く。
ロバート
「よし」
テイラル
「ならば我々も後ろ盾になろう」
王宮・玉座の間
巨大な柱が並ぶ荘厳な空間。
臣下、貴族、官僚、軍人たちが次々と入場する。
やがて王族も席に着く。
そしてレオニス王が玉座へ歩み、腰を下ろす。
近衛兵が槍を鳴らす。
衛兵
「陛下、ご入座!」
一斉に静まり返る。
レオニス
「本日の議題は、国家改革についてである。アルトリアよ」
アルトリアは中央へ進み出る。
アルトリア
「……はい」
レオニス
「そなたの口から皆に報告せよ」
アルトリアが一礼する。
アルトリア
「現在、我が国を取り巻く情勢は大きく変化しています」
地図が広げられる。
アルトリア
「北のロゴ王国は王位継承争いにより内乱状態、東ではイルカン王国がバラチャッタ王国と戦争中、西のアルゼリア王国は我が国との正式同盟交渉を準備、南のベルナード連合は盟主争いで内紛」
ざわめき。
アルトリア
「この情勢の中、我が国は内部改革を急ぐ必要があります」
イルハレム、ジェームズ、ダイム、レオン、ジャンが一歩前に出る。
アルトリアが書類を掲げる。
アルトリア
「徴税制度改革、征服地統治の再構築、官僚登用制度の刷新、そして外交戦略の再編。ここにいる我々でまとめた案です」
旧貴族の一人が立ち上がる。
旧貴族A
「ふざけるな!」
別の貴族も怒鳴る。
旧貴族B
「若造が何を言っている!」
旧貴族C
「レグナスはこの大陸で最強国だ!」
旧貴族D
「ならば力で抑えればよかろう!!」
貴族席がざわめく。
その瞬間、セリアが立ち上がる。
空気が一変する。
セリア
「お黙りなさい!」
静寂。
セリアの視線が旧貴族たちを射抜く。
セリア
「今まであなた達は何をしましたか!?国民から税を取り上げ!征服国の人間を奴隷のように扱い!国を疲弊させた!結果どうなりましたか!?」
セリアが続ける。
セリア
「暴動!貧富の格差!治安悪化!すべて、あなた達の政治の結果です!」
旧貴族たちが言葉を失う。
セリア
「ゆえに陛下はアルトリアに国政を任せたのです!それが理解できないのですか!」
玉座の間が静まり返る。
アルトリアが一歩前へ出る。
アルトリア
「……この国を建て直します」
静かな声だが強い。
アルトリア
「宮廷賢者として!そして――前宰相、バーンズ・フィリアの三男として!」
ざわめきが爆発する。
臣下A
「何!?」
臣下B
「バーンズ宰相の息子!?」
王族席。
ガイナス
「……名字が同じフィリアだと思ったら」
アグニス
「……そういうことかよ」
ドルゴンは満足そうに微笑む。
ユリナは驚いた顔。
レオニスがゆっくり立ち上がる。
その威圧感で場が静まる。
レオニス
「聞いたであろう!この者こそ――この国の最後の希望だ!私はこの者に賭けようぞ!」
王の声が玉座の間に響き渡る。
沈黙。
そして――ゆっくりと膝をつく者が現れる。
新しい時代が動き出す。
第11話 完
