人事課長より、後輩
会社は制服だった。
グレーのピンチェック、襟だけが黒に切り替えられたジャケット。
ボトムは同じくグレーのピンチェック、もしくは黒のタイトスカート。
夏はジャケットがベストになる。
白いブラウスにクロスタイ。
当然、会社に着いてから更衣室で着替える。
制服があるのだから、通勤服は自由でしょう。
私はそう思って、わりとラフな格好で通っていた。
入社当時は古参からいろいろ言われた。
けれど、言われたからといって変えるはずもない。
そのまま貫いた。
しばらくすると、周りも同じようにラフな格好になり、何の問題もなくなった。
ある日、人事課長に呼ばれた。
「髪を切るかまとめろ。爪を切れ。大きなピアスを外せ。指輪をたくさんつけるな。ヒールを履くな」
「はぁ?」
その頃の私は、背中の真ん中まである茶色のストレートロング。
白のネイル、直径5センチのフープピアス。
指輪は3つ。ヒールは7センチ。
ついでにグレーのカラコン。
まぁ確かにまわりには1人もいない反抗感丸出しのイデタチだった。
理由を聞いた。
「前例がない。人事部長に言われる前に伝えておこうと思って……」
「髪を括って、ローヒールを履けば、今の私以上に仕事ができるとでも?」
この組織の嫌いなところは、課長クラスが常に部長の顔色をうかがっていることだった。
総務課長も然り。そんな課長が多かった。
今なら、こんなやり取り自体が問題になるのだろう。
私はその格好のまま役員室にも出入りしていた。
専務は、私の見た目について一度も何も言わなかった。
ある日、雑談ついでに聞いてみた。
「専務は私の髪型、どう思います?」
「???」
「切ったり、まとめたほうがいいと思います?」
「別にそのままでいいんじゃないか?」
「ですよね~。ふふ」
これでお墨付き。
専務の威を借るmugiとなったわけだ。
人事課長に何を言われようが関係ない。
元より専務は外見云々より仕事でしか見ていなかったわけだから。
ただ、指輪だけは別だった。
ある日、後輩に突然、手を掴まれた。
「この、ティファニーゴロシ!!」
なぜか。
私は、ティファニーのアトラスリングの上に、クロムハーツを重ねづけしていたからだ。
自分ではイケていると思っていたが、どうやら“あり得ない組み合わせ”だったらしい。
そこだけは素直に従い、ティファニー単体に戻した。
私には、人事課長より、後輩のひと言の方が効いたな。
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