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避けたい絡み安らかになれる絡み

「工藤さん、ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。
      ちゃんと見て下さい。」
 これは、私が勤務中に手が空いた為、手伝おうとしたら、仲間の川野から返されたメールである。
 私が、手を出そうとした案件は、既に他所の部署に対応の依頼のメールを出していたから、結構という事だ。この事は、パソコンで確認出来るから、良く見ていなかった私が悪かった。
 しかし、それにしてもこの同じ文章の繰り返しのメールを、会社からの借り物のパソコン、しかも仕事で用いるチャットに載せるのは如何かと思った。上司は川野のメールに「こわい」とコメントをした。
 川野は、自身でも不適切と思ったのか、上司がレスポンスを表すと直ぐに削除したのだ。しかし、これは己の不適切さを揉み消すとも捉えられるのではないか…。
 私は、今やっている仕事・部署は、苦労と疲労しかない。超が付く程の少人数の部署で、この様な可笑しな性質の仲間がいる、物理的に無理な仕事量や義務の範囲を担わされる…生活の為に働き嫌な事も耐えろとは言うが、私の心身や頭は、仕事への拒みが強くなっていく一途なのだ。

 仕事の有る日は、心身や頭が苦しむ私であるが、楽しみだってしっかり有る。職場の事なんか忘れ去れる!
 これから、新宿駅で去年五月まで働いていた職場の仲間、志垣さんと会える。彼は、わざわざ川崎市のお住まいから、足を運んで下さる。あちらから会おうと仰って下さった。
 十八時に駅の改札口で待ち合わせの約束をして、私がそこへ行くと、志垣さんは既に黒いスエットと、アイボリーのズボン姿で待って下さっていた。
「志垣さん、お久しぶりです!」
「工藤君。元気そうだね。」
 目が合った途端、お互いは屈託なんて無い笑顔が浮かび上がった。最近の一人でいる私には、間違ってもこんな表情や心地にはならない。
 私達は、少し駅の地下街を歩いた後、地上に上がり、牛タン定食屋へと辿り着いた。二人で同じメニューを頼んだ。
 運ばれて来たメニューは、スープが何だか池を連想する様な見た目だった。牛肉は噛み応えが有り、とろろを重ねて食べる麦飯の硬さも、私の好みにピッタリである。
 食事中に振って良い話かなと思いながらも、志垣さんに、私が職場で繰り返しの文章を送られて来た事を話した、
「はあ?」と志垣さんは、眉毛を歪ませて、得体の知れない物を見る様な顔を作り、
「何だよ、それ⁈ 可笑しな事をする人間だな。」
と返して来た。志垣さんのレスポンスを、私は味方をして頂けた、安心して良いのだという捉え方をする。
 志垣さんの方も私に話を持ち出して下さる。
 彼は、車やバイクが好きで、YouTubeに動画を上げているバイクの愛好家が、修善寺にバイク博物館を設えたので行って来た話。
 相変わらず近くに住む実兄は、自分は農作業なんてせずに偉そうに指示するだけだから、義姉は無論不満を抱えている話。
 かつて働いていた、学校に給食を配送する職場から、戻って来てくれとしばしば声を掛けられている話等を、私にして下さった。
 私は、志垣さんと一緒の時間、常に安らかに過ごす事が出来た。一緒にいて心地良い人の話は、どんな内容でも耳を寄せたいと思える…!
 いつしか二時間が経ち、
「ああ俺、そろそろ帰るよ。また、会おうぜ。」
 と言って志垣さんは席から腰を浮かせる。私は、握手を求めて、
「今日は有難う御座いました。また、宜しくお願いします。」
 と、相手して下さった事や、ご馳走して下さった感謝を申し上げて、彼の後姿を見送った。この時私の胸はジーンと、名残惜しさに痺れていた。
 改めて、他人との付き合いは、素晴らしいものだと、感じる事が出来たのだ。         完

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