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真面目に取り組むだけではなく

 私が、家に戻るとポストの中に会社からの便りが届いていた。何かと思いながら封を切ると、数枚の紙が入っている。
「弊社は、須藤真司殿を二〇二五年十二月三十一日を持って解雇と致します。」
 私は、あまりにも急であった為に驚かずにはいられなかった…! そして、解雇通告の下記にも目を遣ると、私が(無断ではないが…)欠勤が少なくないというのが理由であった。
 仕事は、キャパオーバーでいつまでも続けられないと思ってはいたが、残り一カ月余りで会社から放り捨てられるとなると、落ち着きを保つ事なんて出来ない。
 私は、去年四月に以前働いていた職場で出会った、吉澤さんに、今年で会社をクビになる報告のメールをした。
 吉澤さんと先日会った時に、
「俺は、須藤ちゃんには、あんな会社でいつまでも働いてもらいたくないぜ! 俺の友達もかつて働いていたけど、滅茶苦茶な所だって不満だけだったし、俺も求人に応募して職場見学したけど、可笑しな事が少なくなかったさ…。
 俺は近々以前いた派遣会社にまた戻ろうと思っているんだ。もし須藤ちゃんが良ければ、俺の紹介としてどうかな?」
 と言ってもらえたのである。
 私がメールをして数分も経たない内に、吉澤さんは「こんばんは。急だけど明日某駅の中華料理屋の前で待ち合わせしない? 十一時頃にする?」と返事をくれた。勿論、私は直ぐに宜しくお願いしますと返す。

「須藤ちゃんが俺と同じ現場に来る気が有るなら、解散した後会社に連絡をするよ。紹介出来ても、駄目でもメールするからね。でも、忙しくて営業担当者から「吉澤さんの友達で紹介出来る人がいれば、教えて下さい」って言われた位だから、恐らく大丈夫だと思うけど…。」
「吉澤さん、本当に有難う御座いました。会社から解雇宣告された時は、どうやって稼がなきゃってパニクっていました。感謝です。」
「いやいや、まだ働けるって決まった訳じゃないから。
 あのさ…俺は、これから家の用事だから解散しよう。
またね。」
「さようなら。」
 私は、吉澤さんに感謝しながら、仕事を真面目に取り組むだけではなく、助け合える友人・味方もいなくてはならないと、この件から充分に学べたと思えた。言うまでもなく、吉澤さんが今度は何か困っていたら、必ず助けなければ!

 休日の午後、私は久しぶりに西日暮里駅前のカフェの中でゆっくりしている。吉澤さんと出会う前に働いていた工場の途中に、西日暮里が有る。その工場に通勤していた頃は、休日良くこのカフェで寛いでいたものだ。
 ミルクが入ったアメリカンコーヒーで温もりを摂りながら、私は一月から吉澤さんと同じ職場で働ける事を思い浮かべている。
 昨夜、営業担当者が職場の見学をさせて下さった。仕事内容は、倉庫内でドラッグストアに届ける商材の仕分けである。段ボールに入った洗剤等がコンベヤーで流れて来ており、人はあまり多くはなく、雰囲気は悪くなさそうであった。
「須藤さん。コンベヤーで流れて来た商材は、こうしてラックに載せて段ボールのテープを切って中身が見える様にして下さい。中には、複数の箱でワンセットの物も有りますが、それは全部同じラックに載せて下さい。」
 連れてきて下さった営業担当者は、柔らかな口調で丁寧に私に説明して下さる。この様な方が、私に業務で指示をして下さればと思った…。
 しばしばカフェの上を通る電車の響きを耳にして、窓の外の通過していく無数の車や人を目にしながら、もう失業の心配は要らないのだから、今月までの仕事は萎えたりしないで臨もうと私は心中で呟く。       完
 
 

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