訊ねられる
◆ 本作は「悪い面も正直に話すべきか?」「相手の為とは?」「自分が楽になる、相手の負担の狭間」をテーマとした話である。
一昨日、昨日と二日も仕事が辛くて休んでしまったので、今日は流石に出ないといけないと思い、私は、重い心身に自分で鞭を打ち、電車に乗り込んだ。
職場が在る西側に進むにつれて、私の憂鬱な想いと、途方を失う感覚が、強くなっていく…。
そして、職場に着き肩に掛けているショルダーバッグを置く為に、更衣室に足を一歩踏みれた瞬間、
「あの、おたくはストップ対応(部署名)の方ですよね?」
と、右の斜めから、私より背は小さく、親しみ易い表情の男性から声を掛けられる。
「はい、そうですが。」
「あの…。悪いんですけれど、ストップ対応の仕事について、私に教えて頂けないですか?」
「良いですよ。でも、こんな所では、なんですから、食堂で教えますよ。」
「有難う御座います。 失礼しました。私は、須原といいます。」
「私は、権藤です。宜しくお願いします。」
食堂の椅子に座り、須原さんにストップ対応の仕事は、棚から落ちた商材を拾ったり、棚を持ち上げて運ぶ自動搬送ロボットと床の間に商材が挟まったら、除去する事が主な仕事…ストップが生じたら、一刻でも長時間化させないのが役目だと伝える。
そして、私は悪い事、大変な事も隠さずに、正直に話した。
「元々、ストップ対応は、他のピッキングや梱包、仕分けと違い、極めて少数の部署でありますが、先月も私と同期の人が会社自体辞めたりと、減少の一途なんです。
この物流センターのワンフロアは、学校の体育館の数倍広いと思いますが、それを一人で担わされるんです。」
これを、聞かされた須原さんは、即驚きを浮かべる。
私は続けた。
「このセンターは、南北に縦長ですね。南と北の端っこで、同時にロボットが商材と接触して、立ち往生する事も有りますよ。
作業台の前でそれが生じたら、棚から商材の出し入れが出来なくなるから、速やかに何とかしないとならない、プレッシャーもかなりです…!
因みに、ワンフロアでその接触で、ロボットが七、八台ストップという状況も珍しくないです。しかも、散在しているから移動の時間もかかります。その間に、新たなストップが生まれたり…。
そうそう、棚の中の塩や洗剤とかが漏れたら、その掃除も我々の役目ですから。」
須原さんは、驚きというより苦笑いを浮かべて、
「権藤さん。ご説明有難う御座いました。
大変なのが充分に伝わりましたよ。実は、私は以前上司にストップ対応の勧誘を受けましたが、断ったんです。でも、最近ストップ対応の仕事が気になり出し始めました。今私は、梱包に配属されていて、新しい事にチャレンジしたいなと思ってました。」
と、話してくれた。勿論、須原さんが、入ってくれたら、助かるし感謝し切れないけれど、今までの説明を耳にして、希望するとは思えない…。
私は、人間関係の事も須原さんに話す事にした。
「私は、三人の先輩方と一緒の日も有ります。
仕事中は、それぞれ会社から借りたパソコンで、連絡や相談をし合いますから、顔を合わせての会話なんて無いですが、三人はツーカーの仲です。
私だけ、後輩というのも有りますが、ホントにやり難いですね。立場なんて無いとしか言えません。
後輩に歩み寄るという発想は、有るとは思えませんな。」
須原さんは、とうとう発する返事に困り果ててしまった…!
私は、そろそろ作業場に行って準備をしなければならないから、解散しましょうと須原さんに言った。
別れ際に、須原さんに、
「これは、もし出来ればの話です。ストップ対応から外れたいです。須原さんの部署が、人が欲していれば、私を推して頂けませんか? 厚かましくてすみません…。」
と頼んだ。通る可能性は、零に限り無く近いだろうが、言うだけ言って見た。 完
