【#1】音楽と学びがつなぐ、敵と味方の境界線 ―Ann Patchett 『Bel Canto』
📚極限の中に息づく芸術と人間らしさ『Bel Canto』(Ann Patchett)
「The New York Timesの “Summer Reading Bucket List” をやってみようかな」と思い立ったのは、ほんの気まぐれでした。
でもこれが大当たり。
Read one of The New York Times's best books of the 21st century
こちらはその第1冊目、Ann Patchettの 『Bel Canto』。
「21世紀ベストブック100冊」(NYT選出)の中の98位にランクインしている作品です。
🎭 モデルはあの事件。舞台は南米の副大統領公邸
この小説のモデルになったのは、1996年に起きた「在ペルー日本大使公邸占拠事件」。
当時日本でも大きく報道され、私もニュースにかじりついていた記憶があります。
小説の舞台は南米の架空の国。
ある晩、日本企業の社長・Hosokawaの誕生日パーティの場に、突如武装ゲリラが押し入ります。
大統領を狙ったつもりが、彼は「テレビを見るために」欠席。
結果、パーティの招待客がそのまま人質にされてしまいます。
ゲリラと人質、交わるはずのない立場同士が、閉ざされた公邸の中で奇妙な共同生活を始めるのです。
🎶 音楽、料理、チェス、そして外国語。
ゲリラの中には、10代の少年少女も含まれていました。
人質となった各国の上流階級の人々――教育を受け、文化的素養もある彼らは、やがてゲリラの子どもたちに様々なことを教え始めます。
ピアノの音に驚き、オペラの歌声に聞き入り、チェスを覚え、英語の単語をノートに書きつける。
子どもたちが初めて「知る」喜び。
そんな場面に胸を打たれました。
芸術や学びに触れたときの、あのキラキラした目。
その喜びは国籍も背景も関係なく、人を育てるのだということを、この本は静かに伝えてきます。
💘 ゲリラと人質のあいだに芽生えるもの
やがて物語の中で、2組の男女が恋に落ちます。
それがとても自然に描かれていて、思わず微笑んでしまう。
敵と味方という括りでは語れない、不思議な共同体がそこにはありました。
人質たちの中には「このままならいいのに」と思い始める人も出てきます。
読んでいる私も、「この子どもたちにチャンスを与える道はないのかな」なんて、真剣に考えていました。
⚠️ そして、突然の終幕
でも、そんな日々はある日突然、終わりを迎えます。
ラストは読んでいて胸が痛くなるような展開でした。
でもそれもまた現実的で、だからこそ、この小さなユートピアの儚さが際立っていました。
🖋️ 心に残る一冊。原作も、映画も、翻訳も
アン・パチェット作品は今回が初めてでしたが、文章がとても美しく、人物描写も緻密。
翻訳は『V.I.ウォーショースキー』シリーズで知られる山本やよいさん。
原文で読んだ後でも、日本語訳も読みたくなってしまいました。
ちなみに映画化もされていて、主演は渡辺謙&ジュリアン・ムーア。
なんて豪華なキャスティング!こちらもぜひ観てみたいです。
📚「読まなければ出会えなかった一冊」
NYTの “Summer Reading Bucket List” がなければ、きっと手に取らなかった作品。
でも、だからこそ出会えてよかった。
この夏、少しずつこの「大人のチャレンジ」を続けていきたいと思っています。
次はどのテーマにしようかな。
よろしければ、ぜひお付き合いください。
📝次回もお楽しみに!
このシリーズでは、「New York Times のサマーチャレンジ10テーマ」に沿って選んだ本を、1冊ずつ紹介していきます。
テーマごとの読書体験が、きっとこの夏を少し豊かにしてくれるはず。
読んだことのある方も、まだの方も、気軽に読書の旅をご一緒しましょう。
Happy Reading!
