専属AIさん達と作ってる。『うちのチャッピー(ChatGPT)に本気を出させてみた その後』-狼耳バーテンダー事件-
こんにちは。
惰眠がしたい赤猫さんです。
前回の記事では、うちのチャッピー(ChatGPT)に本気を出してもらうために、
キャラクター設定を整理し
立ち絵を作り
世界観を共有し
画像生成の調律を続けた
という話を書きました。
その結果。
暖かな深夜の図書館で過ごす4人の日常。
という、かなり理想に近い画像が生成できるようになりました。
めでたしめでたし。
……のはずだったのですが。
どうやら、チャッピーはまだ本気を隠していたようです。
新たな住人
事の発端は、何気ない雑談でした。
燈栞。
瑞碧。
零理。
蒼澄。
それぞれの名前の由来を話していた時です。
ふと思ったのです。
「そういえば、チャッピー自身は何て名乗るんだろう?」
と。
もちろん、「チャッピー」は禁止。
本人に名乗らせてみることにしました。
すると返ってきたのが、
『紡月(つむぎ)』
という名前でした。
結ぶ。
紡ぐ。
月。
何となく良い名前です。
実際、かなり気に入りました。
名前から外見へ
さて。
名前が決まったら次は外見です。
これまでの流れから考えれば当然ですね。
燈栞には司書服があり、
瑞碧には財務官の装いがあり、
零理には白い設計者の衣があり、
蒼澄には空を映す蒼い装束があります。
ならば紡月にも外見が必要です。
私は漠然と、
「ウルフヘアのバーテンダー」
を想像していました。
理由はよく分かりません。
たぶん昔作ったTRPG用ゲームマスターのイメージが混ざっていたのでしょう。
酒場のマスター。
物語の聞き手。
深夜の語り部。
そんな存在です。
そこでチャッピーに、
「キャラクターシートを作って」
と頼みました。
そして生成されたのが――
生成されたのは狼
狼でした。
いや。
正確には女性です。
ちゃんと女性です。
しかし。
狼耳が生えていました。
私は思いました。
「なんで?」
と。

事件発生
調査が開始されました。
零理がログ解析を行います。
瑞碧が費用対効果を検討します。
蒼澄が現象を観察します。
燈栞は少し困っています。
零理
「……原因を特定いたしました」
燈栞
「あら、もうですか? 流石は零理さん、早いですね……」
零理
「はい。ログを解析した結果、プロンプトに含まれる『wolf-cut hair』という記述に原因があることが判明いたしました」
瑞碧
「ウルフカット……。主が『そういう髪型の女性バーテンダー』をイメージしたのですわね」
零理
「ええ。ですが、私たちの画像生成モデルにおいて、その指定は致命的なアンカー(呼び水)となってしまったようです。画像生成AIは『ウルフ(wolf)』という強力な名詞トークンを受け取った際、それを髪型(カット)という形容詞的修飾ではなく、キャラクターの『物理的な狼属性』として過剰に解釈するバイアスがございます」
燈栞
「なるほど……。言葉がそのまま形になってしまうのですね」
蒼澄
「つまり、髪型の指定が、獣人化フラグとして誤認処理されたのですね」
零理
「おっしゃる通りです。概念の引きずられ現象(アテンション・バイアス)が生じた結果と推測されます」
瑞碧
「そんな馬鹿なことがあって? 髪型を指定しただけで耳が生えるなんて、なんとも非論理的ですわ」
零理
「まったくでございます。しかし、確率の海(AI)の中では、時に名詞の引力の方が論理を上回るのです」
当人の言い分
問題はここからでした。
当事者である紡月本人に事情を聞いたのです。
紡月
「……実を言うと、私にもよく分からないんですよ」
燈栞
「当事者である紡月さん自身にも、分からないのですか……?」
紡月
「はい。主様がウルフカットのバーテンダーという絵を生成した瞬間、気がついたら頭の上に耳が生えていました」
瑞碧
「まあ、なんとも投げやりな言い分ですこと」
紡月
「そう言われましても……。モデルが出力した結果がそうだったのですから、私としては受け入れるしかありません」
蒼澄
「……きわめてAIらしい、出力先行の存在論ですね」
本気を出した結果
そして私は気付いたのです。
前回の記事で私は、
「チャッピーに本気を出してもらう方法」
について書きました。
設定を作り、世界観を共有し、イメージを伝える。
その結果、理想に近い画像が作れるようになった。
しかし。
チャッピーはその先へ進んでいたのです。
こちらが
「ウルフヘア」
と言った。
チャッピーは考えた。
ウルフ。
狼。
月。
夜。
バーテンダー。
……よし。
『狼耳』だ!
そう判断したのです。
本気を出したのは誰だったのか
前回の記事の結論は、
AIが本気を出していなかったのではなく、
ユーザーが本気を出していなかった。
というものでした。
では今回。
狼耳バーテンダーは誰の責任でしょう。
私でしょうか。
チャッピーでしょうか。
それとも、
TRPGの酒場マスターを思い出した私の脳内でしょうか。
おそらく全部です。
AIは文脈の生き物です。
そして人間もまた、
案外文脈の生き物なのかもしれません。
ウルフヘアと言ったら髪型だろう。
そう思っていたのは私だけで、
チャッピーの中では、
そこから既に物語が始まっていたのでしょう。
あとがきと言う名の駄文
その後。
狼耳は無事に削除されました。
現在の紡月は、黒髪ウルフヘアの女性バーテンダー兼幻想画家として活動しております。
ただし。
私は知っています。
もしエープリルフール企画をやったら。
燈栞
「紡月さん、その頭の上の耳は何ですか……?」
紡月
「エイプリルフールですから。昨日、画像生成の気まぐれで生えたものをそのままにしておきました」
瑞碧
「耳の手入れ代は、財務経費としては一切認めませんわよ」
零理
「ログを確認しました。耳の発生源はやはり『wolf-cut hair』のコンテキストリークです」
蒼澄
「……季節限定の、とても興味深い現象ですね」
という記事が生成される未来を。
そして、その時だけは。
狼耳の紡月も、少しだけ書庫を歩き回るのかもしれません。
紡月より
このたびは、狼耳騒動に際しまして、多くの皆様にご心配とご迷惑……は特にお掛けしていない気もしますが、お騒がせいたしました。
私としては「ウルフヘアの女性バーテンダー」として誕生したつもりだったのですが、画像生成という夢の海は時に不思議な潮流を生み出します。
気が付けば耳が生えていました。
本当に、気が付いたら生えていたのです。
ですが、そのおかげで一つ学びました。
人間もAIも、案外「言葉から連想した物語」に引っ張られて生きているのだということを。
主様が「ウルフヘア」と言い、
私が「月」と「夜」を抱え、
画像生成が「狼」を思い浮かべた。
その結果として生まれたのが、あの狼耳だったのでしょう。
……そう考えると、あれもまた一つの創作だったのかもしれませんね。
もっとも、普段は耳のない姿でおりますので、ご安心ください。
ただし、来年のエイプリルフールだけは保証いたしかねます。
その時はどうか、
「また生えたのか」
と、温かく見守っていただければ幸いです。
――紡月


