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出たとこCD談義・その14

脱線気味で


 8月に入りました。連日の酷暑、皆さんは、どうお過ごしでしょうか。
 最近はすでに「出たとこ」ではなくなっている僕のコラムです。仕方がないじゃないか書きたいアーティストが多いのですから。しかも、ヘヴィメタル/ハードロックから離れたアーティストが続いていますね。仕方ががないじゃないか気になるんだもん。
 とは言えよくよく考えていくとヘヴィでハードな音像の中にも、キャッチーだったり、ポップだったりするフレーズが時折顔を出します。これが80年代LAメタルの頃であれば尚更、それから派生した90年代、2000年代の楽曲にも必ずあって、僕はそこに強く惹かれる。「ヘヴィなリフも良いけど、このメロディーやコード進行がまた」的な感じで。ポップの極北(言い方…)にあるアイドルの楽曲はいわばそこを局所拡大したようなところもあるわけです。詳しくは僕の過去の駄文を気が向いた時に見ていただければ、と思います。というわけで今回も非メタルです…

こんなハズジャナカッター

 ハロー!プロジェクトといえばモーニング娘。ですが、もちろんそれ以外にも猛者たちが割拠する集団です。つい最近だとティックトックでバズったジュース=ジュースもそうですね。その中にあって今回紹介するビーヨーンズ(ビヨ。略します)は、現ハロプロのユニットの中でも極めて異形のグループです。
 現在のメンバーは、西田汐里、江口沙耶、大野茉乃、杉山結菜(CHICA#TETSU)前田こころ、岡村美波、清野桃々姫、小島はな(雨ノ森川海)平井美葉、小林萌花、里吉うたの(SeasoningS)
の3ユニット11人。ビヨ(略しますね)は、メンバーの脱退が続いていて、長らく新規加入がありませんでした。今年の春に大野、杉山、小島の3人が加入するまでは、8人体制が続いていました。

 なぜ、新メンバーを補充しなかったのか。

 それはビヨの特殊性にある、と僕は思っています。なにせハロプロですから、脱退したメンバーを含め全員がアイドルに問われるスキル(歌唱、ダンスなど)が高い実力を持っているのはもちろん、それぞれに一芸というか特殊な個性を持っていたので、メンバーの補充が難航したのではないか、と考えています。何せ2ndアルバムまでは収録楽曲の合間に、寸劇を入れていましたし、オーケストラと共演したりオペレッタをやっていたりもします。
 メンバー個々人もなかなか濃くて、小林は音大卒でプロデューサーである星辺ショウとともにアレンジに関わったりしていますし、清野はヴォイスパーカッションに加えサンプラー、ヴォコーダーなどを駆使し、岡村はターンテーブルを回してDJプレイを披露します。また脱退した高瀬くるみは、児童劇団出身でミュージカル風の歌唱をこなし、前田は空手黒帯…とまあ芸能に関係あったりなかったりする個性をメンバー全員が持っています。ここに新メンバーを補充となると、確かにハードルは高い。ビヨは普通のアイドルグループではなかったのです。もっともメンバーはメンバーは「コンナハズジャナカッター!」と自虐気味に歌ってますが。

寸劇ははずせない

 僕が、彼女たちに初めて注目したのがこの楽曲、「眼鏡の男の子」でした。

 最後にも出てくるのですが、わかる人にはわかる、まるで花とゆめコミックスのようなキービジュアル。なんだ、また変なのが出てきたぞ、と思ってPVを観てみると、寸劇を入れながら、まさにマンガの一場面のような世界が展開されます。当然ながら全員ハイクオリティな歌唱力。特に惜しくも脱退してしまった山崎夢羽に目と耳をひかれます。そして男装の麗人・前田こころ。ちなみ彼女の兄は『仮面ライダーリバイス』で主人公を務めた前田健太郎くん。(いるのか?その情報…)
 ビヨ初期は間違いなく山崎に注目が集まっていました。山崎はこの後も松坂桃李主演の『あの頃。』でなんと松浦亜弥役を務めます。これが結構似てました。他にもPVでは児童劇団出身である高瀬もすでにその片鱗を見せています。しかし、なんとまあドタバタとしながらもマニアックで個性的なPVですね。ここで僕はこれは面白いかも、と注目して1stアルバムに手を出して、サウンドプロデューサーである星辺ショウに出会いました。
 冒頭を飾る「オーヴァーチュア」から素晴らしい。

 

 メタル/ハードロックにも通じるケレン味に満ちていながら、スターウォーズにも通じる壮大な曲調。「ああ、これは間違いない。このアルバムは当たり確定」と確信したのを覚えています。
 続いて始まるのが「アツイ!」

 はい、パワーメタルです。それもXBABY METALのパク…いや、オマージュに満ち満ちたメタルナンバーですね。やはりここでも寸劇は外さない。とにかく彼女たちにとって寸劇はなくてはならないものとなりました。群雄割拠のアイドルシーンの中、特にハロプロの中でも彼女たちは強力な武器を持ったことになります。本人たちの気持ちや周りの声は別にして。

 そうして路線はほぼそのままに2ndアルバムがリリースされます。しかも今回寸劇は3幕。「ノービヨンダ!ノーライフ」、「こころとりかのドリームマッチ」「迷走委員会」が、それぞれにちなんだ曲と共に収録されています。
 個人的には、この2ndは寸劇が3幕もあるために、それにちなんだ楽曲と、その他の楽曲(既発のシングルなど)との統一感が薄れて、散漫に感じます。それぞれの楽曲は、メンバーの個性も生かしているし、クオリティも高いのですが。ちなみに僕がアルバムの中でのフェイバリットは、『英雄〜笑ってショパン先輩』です。

 

 星辺ショウの手腕がこれでもか、と感じられる凄まじい楽曲です。ショパンの名曲を現代のアレンジを加えながら、破綻するこなく完成させた手腕には驚くべきものがある。ここではメンバーの小林萌花のピアノも堪能できます。音大出身はダテじゃない。ちなみに彼女、服飾の技術も高く生誕祭の衣装を手作りしてます。さらにお菓子作りもパテシエ並みの腕の持ち主。天は何物与えてるのでしょうか。とにかくこの楽曲はアルバムの中でも出色の出来栄えです、というか突出しすぎていてバランスブレイカーかもしれない。
 しかし、先ほども書いたようにアルバムそのものは散漫な印象があり、彼女たちは次作に向け若干の軌道修正を図ります。

艱難辛苦を燃えてゆけ

 なんにしてもそうですが、一つのことを続けてゆくことは大変な労力が伴います。アイドルなども例外ではありません。きちんと卒業コンサートなど、有終の美を迎えるアイドルがいかに少ないか。ビヨも例外ではありません。初期メンにしてCHICA#TETSUのリーダーでもあった一岡玲奈も活動休止からのフェイドアウト。あれだけ注目され推されていた山崎夢羽もそうです。しっかりと卒業コンサートを行ったのは島倉りかとついこの前卒業した高瀬くるみだけです。
 とにかく個性を全面に押し出して一筋縄ではゆかないグループですから、存続してゆくのも大変なのですが、残されたメンバーは高瀬の卒業と共に加わった、大野、杉山、小島が現れるまで気を吐き続けます。それもあってヴォイスパーカッションやヴォコーダーを駆使する清野も活動休止の状態に。
 そんな中2025年年末にリリースされたのが3rdアルバムでした。
 僕はリリースされていたのは知っていたのですが、正直2ndの時のように寸劇攻めだと、ちょっとなあ、というのもあって手を出しそびれていました。が、大きな変化がありました。

 今回のアルバムには寸劇パートが一切ありません。

 既発の楽曲と新録を含めた純粋な楽曲のみで勝負に出たのです。
 内容は既発の13曲のシングルと新録の7曲の20曲。
 これは推測ですが、この間に彼女たちは、通常のコンサートと並行して演劇女子部としての舞台やオーケストラとの共演であるビヨフォニックもこなしていて、アルバムに収録する寸劇はちょっと一休み、となったのかもしれませんね。これは僕にとっては僥倖でした。
 そしてこの作品、僕の中の今年のアイドル部門のアルバムの中で、おそらく揺るがない首位をとってしまいました…
 
 アルバム解説が星辺ショウのYouTubeチャンネルにも上がっているのですが、確実にスキルアップしたメンバーが、アルバム制作の現場において、高瀬をはじめメンバーが、そこそこの発言をできたことや、同じくメンバーの小林が音大卒というスキルを発揮しておもアレンジにも関与するようにもなっており、とにかく力の入りかたがこれまでと違います。

 

 「求めよ…運命の旅人算」です。先ほども述べたように、メンバー全員のスキルが確実に上がっています、西田に関してはホイッスルヴォイス(マライア・キャリーなどが出す超音波のような超高音)までマスターしていて、これには腰を抜かしました。この楽曲には脱退した、一岡、山崎、島倉も参加していますが、メンバーの個性が磨かれた結果、良い意味で山崎が突出していません。ユニットとしてのまとまりが出てきたのだと思います。そして2曲目が「夢さえ描けない夜空には」です。

 この2曲目で僕の思いは確信となります。吹奏楽を下敷きにしたアレンジに王道のメロディー。僕がポップスに求める全てが詰まっています。思わず涙さえこぼれそうになるくらい素晴らしい。
 これ以降も収録されている曲全てに素晴らしいメロディがあり、コードがあり、アレンジが施されています。それはデトロイト・ファンクやハロプロお得意の(というか、つんく♂伝来の)フィリーソウルボサノバ交響曲にABBA(もう何言っているか分からない)まで多岐に及び、音楽をそこそこ聴いてきた方になら、ニヤリとすること請け合いです。それにメンバーの個性的かつハイクオリティな歌唱が絡むわけですから。
 
 確かに僕はハードロック/ヘヴィメタルが大好きですが、そもそもの根幹にあるのは、絶妙なダイナミクスとクサくてくどいメロディなのです。それは楽曲のジャンルさえ軽く飛び越えてしまう。僕は、こんな作品に出会えた時に「ああ、音楽を好きでいて良かったな」と思えるのです。

それでは最後に卒業した高瀬が星辺に、「BEYOOOOONDSの名刺がわりになる曲が欲しい」と発言して誕生した「灰toダイヤモンド」を。控えめに言って最強。


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