内部監査人が見たマンション管理組合ガバナンス論第3話〜課題は「人的資源」
上場企業の内部監査人が見たマンション管理組合ガバナンス論第3話〜管理組合最大の課題は「人的資源」である
企業で長年、内部監査に携わってきた私が、マンション管理組合の監事になって最も驚いたことがある。
それは、人的資源が存在しない組織
であるということだった。
もちろん、人がいないわけではない。
理事も監事もいる。
管理会社もいる。
しかし、企業で当たり前に存在する「組織としての人的資源」が存在しないのである。
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企業では当たり前の仕組み
企業には、
採用がある。
配置がある。
育成がある。
評価がある。
異動がある。
後継者育成がある。
つまり、
人的資源マネジメント(HR)
が存在する。
組織は人が変わることを前提に設計されている。
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管理組合にはHRがない
一方、マンション管理組合は違う。
理事は輪番や抽選で選ばれることが多い。
専門知識は問われない。
経営経験も問われない。
任期はおおむね1〜2年。
退任すれば元の区分所有者へ戻る。
つまり、
採用も、
配置も、
育成も、
評価も、
組織として存在しない。
企業の視点で見ると、
極めて特殊な組織なのである。
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それでも意思決定は止まらない
しかし、
管理組合は毎年、
重要な意思決定を続けなければならない。
管理委託契約。
設備更新。
保険契約。
長期修繕計画。
修繕積立金。
数千万円、
時には数億円規模の判断が、
専門部署を持たない理事会によって行われている。
ここに、
マンション管理組合特有の難しさがある。
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人ではなく、仕組みで支える
企業では、
優秀な人材が組織を支える。
しかし、
管理組合は違う。
理事が変わることは避けられない。
だから、
優秀な理事を期待するのではなく、
誰が理事になっても機能する仕組み
を作らなければならない。
これがガバナンスである。
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専門家は人的資源を補う存在
ここで初めて、
外部専門家の役割が見えてくる。
管理会社。
マンション管理士。
弁護士。
建築士。
会計士。
これらの専門家は、
理事会の代わりになる存在ではない。
理事会の人的資源を補強する存在である。
しかし、
補強と丸投げは違う。
最終的な意思決定を行うのは、
あくまで理事会である。
だから、
専門家を活用しながらも、
理事会自身が説明責任を果たさなければならない。
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継続性をどう確保するか
理事は交代する。
しかし、
管理組合は続いていく。
だから、
知識は人ではなく、
組織に残さなければならない。
議事録。
契約書。
管理台帳。
修繕履歴。
監査報告書。
改善事項。
これらは、
単なる記録ではない。
管理組合の記憶である。
私は監査で、
こうした記録が適切に残され、
次の理事会へ引き継がれているかを重視している。
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おわりに
私は、
マンション管理組合最大の課題は、
資金ではない。
建物でもない。
人的資源
だと考えている。
だからこそ、
専門家を活用する。
だからこそ、
記録を残す。
だからこそ、
監事が理事会を独立した立場から監査する。
すべては、
限られた人的資源の中でも、
理事会が適切な意思決定を続けられる組織をつくるためである。
次回は、
「管理会社はパートナーか、それとも監督の対象か」
というテーマから、理事会と管理会社の適切な関係について考えてみたい。
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HI(Human Intelligence)
公認内部監査人(CIA)|公認不正検査士(CFE)
企業で培ったガバナンス・リスクマネジメント・内部統制の知見を、マンション管理組合の現場へ翻訳し、「マンション管理組合にふさわしいガバナンス」を研究・発信している。
連載
『マンション管理組合ガバナンス論 ― 公認内部監査人が見た理事会の意思決定 ―』
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