私という名の女性 ~秘密の女装が教えてくれた本当の自分~ ⑥
※この作品は18歳以上を対象としています。
※成人向けの内容が含まれています。
第6章 男でも女でも、あなたに壊されたい
「神崎さん。今日のプレゼン資料、完璧でしたね」
月曜の夕方、部長に褒められた悠斗は複雑な気持ちだった。
「ありがとうございます」
「それにしても、最近雰囲気が変わりましたね。なんというか... ...洗練されたというか」
同量たちも頷いている。確かに、悠斗の外見は以前とは明らかに違っていた。
「彼女の影響ですかね」
「ああ、そういえば最近お付き合いされてるって聞きました。今度紹介してくださいよ」
悠斗は曖昧に笑った。紹介ーー確かにできるかもしれない。ただし、その“彼女は自分自身だったが。
ーーーーー
その夜、アパートに帰った悠斗はクローゼットを開けた。
男性用のスーツと並んで、女性ようのドレス、ブラウス、スカートが掛かっている。もはや女性用の服の方が多くなっていた。
「今度のパーティ... ...本当に大丈夫かな」
早瀬に誘われた知人のパーティ。そこで“彼女”として紹介される予定だった。
スマホに通知が届く。早瀬からのメッセージ。
『明日、ドレスを見に行こう。きみには最高のものを着てもらいたい。』
心臓が跳ねた。最高のものーーそれは、もう完全に彼女として扱われることを意味していた。
ーーーーー
翌日の夕方、高級デパートの女性服売り場。
「いらっしゃいませ」
店員が早瀬とユウを迎えた。ユウは薄化粧で髪を下ろし、女性用のカジュアルな服装をしている
「彼女にパーティ用のドレスを」
「かしこまりました。どのような場でしょうか?」
「会社関係の正式なパーティです」
店員はユウを見つめた。
「とてもお美しい方ですね。こちらなど、いかがでしょう?」
差し出されたのは、深いネイビーのイブニングドレスだった。
「素敵... ...」
ユウが思わず呟く。
「試着してみますか?」
「はい、お願いします」
試着室で一人、ユウはドレスに袖を通した。体のラインを美しく見せるシルエット、上品な光沢、背中の開いたデザイン。
鏡の中には、完璧な女性がいた。
「どうだ?」
早瀬の声に、ユウは試着室から出た。
「... ...完璧だ」
早瀬の目が見開かれた。店員も驚嘆の声を上げる。
「本当にお美しいですから。このドレス、お客様のためにあるようなものですね」
「これにします」
早瀬が即座に決めた。
ーーーーー
パーティ当日、ホテルの化粧室。
ユウは最後の仕上げをしていた。プロのメイクアーティストに任せた化粧は完璧で、もはや男性の面影は微塵もなかった。
「お美しいですね。モデルさんですか?」
「いえ... ...ただの会社員です」
「そうは見えませんよ。とても上品で... ...」
鏡を見つめながら、ユウは自分でも驚いていた。この姿なら、誰も疑わないだろう。
ーーーーー
パーティ会場、高級ホテルの最上階。
早瀬と腕を組んでエレベーターを降りると、そこには華やかな社交界が広がっていた。
「緊張してる?」
「すこし... ...」
「大丈夫。きみは完璧だから」
会場に入ると、何人もの視線がユウに注がれた。
「早瀬さん、お疲れ様です」
知人男性が近づいてきた。
「お疲れ様。こちら、僕の恋人のユウです」
「はじめまして、ユウと申します」
ユウは優雅にお辞儀をした。
「美しい方ですね。早瀬さんが羨ましい」
「ありがとうございます」
その場にいた誰もが、ユウを“最初から女だった”かのように接した。
ーーーーー
パーティが進むにつれ、ユウは不思議な高揚感を覚えていた。
「楽しんでる?」
早瀬が囁いた。
「はい... ...思ってたより」
「どう? 女性として社交会にいる気分は」
「... ...自然です。不思議なくらい」
確かにそうだった。男性として参加したビジネスパーティよりも、女性としてのこの場の方がしっくりきていた。
「ユウさん、お仕事は何を?」
ある女性に話しかけられた。
「広告関係の仕事をしています」
「素敵ですね。お美しいし、きっとセンスもおありでしょうね」
女性たちとの会話も自然だった。むしろ、男性同士の会話よりも楽しかった。
ーーーーー
パーティの後、ホテルの部屋で。
「どうだった?」
「... ...楽しかったです」
ユウはドレスを脱ぎながら答えた。
「本当に?」
「はい。女性として扱われることが... ...こんなに自然だなんて」
早瀬が近づいてきた。
「ユウ、きみはもう完全に女性だ」
「... ...そうかもしれません」
「なら、次のステップを考えてみないか?」
「次のステップ?」
早瀬が机の上に何かを置いた。クリニックのパンフレットだった。
「これは... ...」
「性別適合手術のことが書いてある」
ユウの手が震えた。
「きみが本当の女性になるための手術だ」
「でも... ...それって... ...」
「もう戻れなくなる。でも、きみはもうとっくに戻る気なんてないだろう?」
図星だった。男性として生きることに、もう何の魅力も感じなくなっていた。
「怖い... ...でも」
「でも?」
「でも、考えてみたいです」
ーーーーー
その夜、ユウは早瀬に今まで以上に深く愛された。
「今日のきみ... ...本当に美しかった」
ベッドの上、ユウは早瀬に抱かれながら呟いた。
「私... ...もう男じゃいられない」
「そうだな」
「でも、怖いんです。完全に女性になることが」
「なぜ?」
「もし... ...あなたに飽きられたら」
早瀬がユウを抱きしめた。
「そんなことはない。きみは僕だけの女性だ」
「本当?」
「本当だ。だから... ...」
「だから?」
「もっと美しくなってくれ。僕だけの、完璧な女性に」
ーーーーー
翌朝、ユウは鏡の前に立っていた。
化粧を落とした素顔は、男性っぽさが消えつつあった。エステで整えられた肌、細くなった眉、薄くなった体毛ーーすべてが女性っぽさを醸し出していた。
「おはよう」
早瀬が起きてきた。
「おはようございます」
「今日はどうする?」
「... ...会社、休みます」
「そうか」
「男性の服を着るのが... ...辛くて」
早瀬が微笑んだ。
「じゃあ、今日は一日ユウとして過ごそう」
「はい」
ーーーーー
その日の午後、二人は街を歩いていた。ユウは自然な女性の格好で、誰も振り返ることはなかった。
「どう? 昼間の街を女性として歩くのは」
「... ...家にいるみたいです」
「家にいるみたい?」
「自然で、安心できて... ...これが本当の私なのかもって」
カフェでお茶をしながら、早瀬が言った。
「ユウ、本気で手術を考えてみないか?」
「... ...」
「きみはもう、心も体も女性だ。足りないのは、最後の一歩だけ」
ユウは震える手でコーヒーカップを持った。
「でも... ...仕事とか、戸籍とか... ...」
「全部何とかなる。僕が支えるから」
「本当に?」
「本当だ。きみと一緒に乗り越えよう」
ユウは小さく頷いた。
「... ...考えてみます」
ーーーーー
その夜、アパートに一人で帰ったユウは、クローゼットの前に立った。
男性用のスーツを見つめながら、もうこれを着ることがなくなるかもしれないと思った。
「私... ...本当にどうしたいんだろう」
でも心の奥では、答えは決まっていた。
もう男性として生きることはできない。女性として、ユウとして生きていきたいーーそう思っている自分がいた。
ーーーーー
第6章 終了
いいなと思ったら応援しよう!
可能なら応援をお願いします❣️いただきましたチップはクリエイター活動に使わせていただきます❣️