人生は案外、ブルーベリー
庭に、ブルーベリーの樹がある。剪定さえろくにせず、大きく成長しすぎてしまった樹だ。
畑仕事が午前中で中断になり、帰宅したあとはぼんやりと降り続く雨を見ていた。庭で賑やかに鳴くヒヨドリの声を視線で追いかけて、伸びっぱなしのブルーベリーのことを思い出した。
雨に濡れながら、ブルーベリーの樹の下に立つ。思っているよりもたくさん、実をつけていた。雨に濡れて夜明け前のような色をした実を、そっと摘み取る。
剪定もしていない、肥料も与えていない。それどころか、雨以外に水を与えていた記憶もない。それでも、鮮やかで美しい実が成った。
剪定していないせいで、僕の背丈よりも高いところにも実をつけている。雨に濡れて少しだけ気持ちの悪いサンダルのまま、爪先立ちになって実を摘んだ。片手の掌からこぼれそうなほど、幾つものブルーベリーができていた。ここ二年ほど、この樹がこんなに実をつけたことはなかった。
夜明けの空に似た実を見つめていたら、なんとなくこんなものかもしれないと思った。手をかけたか否かだけが全てではないのかもしれない。人生の全部が、自分の努力で決まるわけではない。剪定していない樹が美しく実をつけるように、思わぬ偶然が人生に訪れることも、きっとある。
雨に濡れたブルーベリーの、その色は人生そのもののような気がした。朝が来るまではきっと、僕らの人生は美しい夜明け前の色をしている。爪先立ちで摘み取ったその実の甘酸っぱさが、いつか夜を掬い上げるように。
あとがき
今後、ショートエッセイを一つのマガジンにまとめて、エッセイ集のような形にすることにしました。
千字以下で、とりわけうまく書けた(ナルの主観)と思うものをこのマガジンに収録します。無料公開の予定です。マガジンもフォローしてくれたら嬉しくて泣いちゃう。
それでは、また後でね。
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