見出し画像

車窓

 バスの車窓から、見慣れた田舎の風景を眺める。幼少期に訪れたことのあるスーパーの跡地は半ば廃墟に代わり、手入れのされていない畑も増えた。

 いつまで生きていられるだろう。足早に移り変わる世界を、いつまで見ていられるんだろう。車窓からの景色も、人との繋がりも、思っていたものとは違っていく。いつまで、僕は生きるんだろう。

 離れていくものや変わっていくものを力いっぱいに繋ぎ止めたとして、それはそこにそのままに残り続けるのだろうか。目的地のバス停が近い。ボタンを押して、降りる支度をする。
 変わらないものを探すには、もう「変わること」に慣れすぎた。

 降車して、過ぎていくバスを見送る。歩き出すために、足を踏み出す。足を踏み出すために、ただ黙ってバスを見送った。

 自分さえ、変わってしまったのに。

 もうすぐ、夏祭りの時期が来る。この町の薄暮に、色鮮やかな提灯が灯るときが来る。きっとそれさえも、子供の頃とは違って見えるけれど。

 今年は、夏祭りに来れるだろうか。夏の一部になる自分を思い浮かべて、少しだけ心を弾ませた。



いいなと思ったら応援しよう!

ナル いただいたチップは、通院費と岩手紹介記事のための費用に使わせていただきます。すごく、すごーくありがたいので、よろしくお願いします。チップって名前にちょっとだけ違和感ありません…?