【SS】ダンス
目の前で踊る女は、体に密着するような黒いワンピースを着ている。
僕が手にしたビールジョッキから若葉色の金魚が飛び出し、盛岡の夜空へと舞い上がっていく。
そうだ、僕はビアガーデンに来ていた。目の前の女が誰か、思い出すことは出来ない。魂の深いところで繋がっていたような気もするし、ついさっき会ったばかりのような気もする。
女はなおも踊り続ける。コンテンポラリーダンスというのだったか。彼女が独創的な動きをするたび、ビールの中から若葉色の金魚が生まれ、夜空に舞い上がる。
女は肩の辺りで切り揃えた髪を金色に染め、真っ赤な口紅をしていた。僕は踊る彼女を見ながら、今自分の胃に入っているビールも金魚に変わってしまうのだろうかと考えていた。二日酔いで嘔吐することには慣れているが、奇妙な金魚を吐き出すのは勘弁してほしい。
女は、汗ひとつかかずに踊っている。
女のワンピースのボタンがひとつ、弾けて飛んだ。それは首元のボタンで、空色の烏になって夜空に消えた。あ、と僕は思った。
幸せの青い鳥。もし次にまたボタンが弾けたら、あの鳥を捕まえてみようか。そうしたら、何かが変わる気がするし、変わらない気もする。
若葉色の金魚は、胃からせり上がっては来ない。
女は突然踊るのをやめ、僕に体を寄せた。花に似た香りが僕を惑わせる。女は僕の首に手を回し、右に少しだけ首を傾げた。
僕は女の目を見た。そして、こう言った。
「ネックレス、捩れてますよ」
了(599字)
あとがき
「幻想小説です」と言い張ってみる。
咄嗟に出る言葉って、アホみたいであればあるほどいいよね。
普段書かないテイストのものなので、出来が不安。褒めていただけると嬉しいです。若葉色の金魚を郵送しますね。
ビアガーデン、行ったことないんだよね。盛岡にいたのに。ベアレンビールがあるのに。
いつかベアレンビールのイベントに、みんなで行こうか(冗談)。
それじゃ、また明日ねー。
みんな大丈夫になるからね、焦らず生きようね。
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