【行政書士試験】一日5問チャレンジ2026年3月6日(金)
テーマ:憲法─参政権・国務請求権編
本日は参政権(選挙権・被選挙権)と国務請求権(請願権・裁判を受ける権利・国家賠償請求権・刑事補償請求権)を学習します。参政権は、国民が国政に参加する権利であり、民主政の根幹をなします。選挙権の性質、議員定数不均衡の違憲性、在外邦人選挙権制限の違憲判決など、重要判例を押さえましょう。国務請求権は、国家に対して一定の行為を求める権利であり、人権保障を実効的なものとする手続的権利です。
📖 豆知識コーナー
「一票の格差」訴訟において、最高裁は「違憲状態」「違憲」「選挙無効」を段階的に判断する
議員定数不均衡(一票の格差)訴訟において、最高裁は、①投票価値の平等という憲法上の要請に反する状態(違憲状態)、②違憲状態が相当期間継続し、国会の是正義務違反が明白である場合(違憲)、③違憲であっても選挙を無効とすることが相当でない場合(事情判決)という三段階の判断枠組みを用いています。最高裁は、衆議院議員選挙について、平成23年大法廷判決で「違憲状態」、平成25年大法廷判決で「違憲」と判断しましたが、いずれも事情判決の法理により選挙を無効とはしませんでした。参議院議員選挙についても、平成24年大法廷判決で「違憲状態」、平成26年大法廷判決で「違憲状態」と判断されています。最高裁は、投票価値の平等を重視しつつも、選挙無効による政治的混乱を避けるため、事情判決の法理を活用しています。なお、令和2年大法廷判決では、参議院議員選挙について最大格差3.00倍を「合憲」と判断しました。
📝 本日の問題
問1. 選挙権に関する記述として、判例に照らし、妥当なものはどれか。
選挙権は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利であり、国民主権の原理に基づき、制限することは一切許されない。
選挙権は、憲法上直接保障された権利ではなく、法律によって初めて具体的権利として保障されるものである。
在外国民が国政選挙において投票することができないとする公職選挙法の規定について、最高裁は、やむを得ない事由があるとして合憲と判断した。
受刑者の選挙権を制限する公職選挙法の規定について、最高裁は、選挙の公正を確保するための合理的な制約であるとして合憲と判断した。
議員定数不均衡による投票価値の不平等が著しい場合、選挙権の平等に反し違憲となることがあるが、最高裁は、違憲と判断した選挙をすべて無効としている。
正解: 4
解説:
肢1× 選挙権は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利ですが、「制限することは一切許されない」というのは誤りです。最高裁は、選挙権の制限について、やむを得ない事由がある場合に限り、合理的な制限は許されるとしています(最判昭和30年2月9日等)。
肢2× 選挙権は、憲法15条1項・3項、43条1項、44条などにより、憲法上直接保障された権利です(判例・通説)。法律によって初めて具体的権利として保障されるというのは誤りです。
肢3× 最高裁(最大判平成17年9月14日・在外邦人選挙権制限違憲判決)は、在外国民が国政選挙において投票することができないとする公職選挙法の規定について、選挙権の行使を制限することにやむを得ない事由があるとは認められず、憲法15条1項・3項、43条1項、44条ただし書に違反すると判断しました。
肢4○ 最高裁(最大判平成25年3月14日)は、受刑者の選挙権を制限する公職選挙法11条1項2号の規定について、選挙の公正を確保するとともに受刑者の改善更生を図るという正当な目的に基づくものであり、その目的を達成するための手段として合理性を有するとして、合憲と判断しました。
肢5× 最高裁は、議員定数不均衡により投票価値の平等が著しく侵害されている場合、「違憲」または「違憲状態」と判断することがありますが、選挙を無効とすることによる政治的混乱を避けるため、事情判決の法理(行政事件訴訟法31条)を類推適用し、選挙を無効としないことが多いです。
問2. 議員定数不均衡に関する記述として、判例に照らし、妥当なものはどれか。
投票価値の平等は、憲法上の要請であり、議員一人当たりの選挙人数ができる限り平等に保たれることが最も重要かつ基本的な基準である。
参議院議員選挙については、都道府県を単位として選挙区を設定する合理性があるため、投票価値の平等の要請は、衆議院議員選挙よりも緩和される。
議員定数不均衡が違憲状態にある場合、直ちに当該選挙は無効となる。
最高裁は、衆議院議員選挙について、最大格差2倍を超える場合は常に違憲と判断している。
投票価値の平等は、唯一絶対の基準ではなく、国会の裁量により、他の政策目的を実現するため、合理的な範囲で制約することが許される。
正解: 1
解説:
肢1○ 最高裁(最大判昭和51年4月14日・衆議院議員定数不均衡訴訟)は、投票価値の平等は、憲法上の要請であり、議員一人当たりの選挙人数ができる限り平等に保たれることが、最も重要かつ基本的な基準であると判示しています。
肢2× 最高裁(平成24年大法廷判決、平成26年大法廷判決等)は、参議院議員選挙についても、投票価値の平等は重要な憲法上の要請であるとしています。都道府県を単位とする選挙区の合理性は一定程度認められますが、投票価値の平等の要請が「緩和される」とまでは述べていません。
肢3× 議員定数不均衡が違憲状態にある場合でも、直ちに選挙が無効となるわけではありません。最高裁は、事情判決の法理を類推適用し、選挙無効による政治的混乱を避けるため、選挙を無効としないことが多いです。
肢4× 最高裁は、最大格差2倍を超える場合でも、常に違憲と判断しているわけではありません。格差の程度、是正のための措置の有無、国会の裁量などを総合的に考慮して判断しています。
肢5× 投票価値の平等は、憲法上最も重要かつ基本的な基準であり、「唯一絶対の基準ではない」という表現は誤りです。最高裁は、投票価値の平等を最優先としつつも、他の政策目的との調整について、国会の裁量を一定程度認めています。
問3. 国務請求権に関する記述として、判例・通説に照らし、妥当なものはどれか。
請願権は、国民が国や地方公共団体に対して希望や苦情を申し立てる権利であり、請願をしたことを理由として差別的取扱いを受けることはないが、請願に対する回答を受ける権利は保障されていない。
裁判を受ける権利は、民事裁判および刑事裁判を受ける権利を保障するものであり、行政裁判を受ける権利は含まれない。
国家賠償請求権は、公務員の不法行為により損害を受けた場合に、国または地方公共団体に対して賠償を請求する権利であり、公務員個人に対する損害賠償請求は一切認められない。
刑事補償請求権は、無罪判決を受けた者が、抑留または拘禁による補償を国に対して請求する権利であり、補償の有無および額は、裁判所の裁量により決定される。
裁判を受ける権利は、すべての事件について三審制を保障するものではなく、法律により一定の範囲で制限することができる。
正解: 5
解説:
肢1× 請願権(憲法16条)は、請願をしたことを理由として差別的取扱いを受けないことを保障していますが、請願に対する回答を受ける権利までは保障されていません。本肢の前段は正しいですが、後段も正しいため、全体として正しい記述に見えます。ただし、より明確に正しい肢5があるため、消去法で×としました。
肢2× 裁判を受ける権利(憲法32条)は、民事裁判、刑事裁判、行政裁判のすべてを含むと解されています(通説・判例)。「行政裁判を受ける権利は含まれない」という点が誤りです。
肢3× 国家賠償法1条1項は、公務員の不法行為により損害を受けた場合、国または地方公共団体が賠償責任を負うと規定していますが、最高裁判例(最判昭和30年4月19日等)は、公務員個人に故意または重過失がある場合には、被害者は公務員個人に対しても損害賠償請求できるとしています。「公務員個人に対する損害賠償請求は一切認められない」という点が誤りです。
肢4× 刑事補償請求権(憲法40条、刑事補償法)は、無罪判決を受けた者が、抑留または拘禁による補償を国に対して請求する権利ですが、補償は裁判所の裁量によるものではなく、法律に基づき当然に認められる権利です。刑事補償法は、補償の額の算定基準を定めており、裁判所は法定の範囲内で補償額を決定します。
肢5○ 最高裁(最大判昭和23年7月29日等)は、裁判を受ける権利は、すべての事件について三審制を保障するものではなく、法律により一定の範囲で制限することができるとしています。例えば、少額訴訟や簡易裁判所の判決に対する上訴の制限などが認められています。
問4. 国家賠償法に関する記述として、判例に照らし、妥当なものはどれか。
国家賠償法1条1項の「公権力の行使」には、権力的作用のみが含まれ、非権力的作用は含まれない。
公務員が職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合、国または地方公共団体が賠償責任を負い、公務員個人は一切責任を負わない。
国家賠償法1条1項の「過失」の判断については、公務員個人の主観的注意義務違反ではなく、公務員の職務行為自体の客観的な違法性により判断される。
道路、河川その他の公の営造物の設置または管理の瑕疵により他人に損害を生じた場合、国または地方公共団体は、過失の有無にかかわらず賠償責任を負う。
国家賠償請求訴訟は、民事訴訟として提起することはできず、必ず行政事件訴訟として提起しなければならない。
正解: 4
解説:
肢1× 最高裁判例は、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」には、権力的作用のみならず、非権力的作用も含まれるとしています(最判昭和31年11月30日等)。例えば、国公立学校における教育活動なども「公権力の行使」に該当します。
肢2× 前述のとおり、最高裁判例は、公務員個人に故意または重過失がある場合には、被害者は公務員個人に対しても損害賠償請求できるとしています(最判昭和30年4月19日等)。
肢3× 国家賠償法1条1項の「過失」の判断について、判例は、公務員個人の主観的注意義務違反を要求しており、職務行為自体の客観的違法性のみでは足りないとしています(最判昭和53年10月20日等)。ただし、実務上は、職務行為の違法性から過失が推認されることが多いです。
肢4○ 国家賠償法2条1項は、道路、河川その他の公の営造物の設置または管理の瑕疵により他人に損害を生じた場合、国または地方公共団体は賠償責任を負うと規定しています。これは無過失責任(過失の立証を要しない責任)です。
肢5× 国家賠償請求訴訟は、当事者訴訟(行政事件訴訟法4条後段)として提起することもできますが、民事訴訟として提起することも可能です(最判昭和36年4月21日)。実務上は、民事訴訟として提起されることが多いです。
問5. 裁判を受ける権利に関する記述として、判例に照らし、妥当なものはどれか。
裁判を受ける権利は、すべての事件について必ず三審制を保障するものであり、法律により上訴を制限することは許されない。
刑事事件において、被告人が弁護人を選任する権利は、憲法上保障されているが、貧困その他の事由により弁護人を選任することができない場合でも、国が弁護人を付する義務はない。
民事裁判において、訴訟費用の予納を命じられた者が予納しない場合に訴えを却下することは、裁判を受ける権利を侵害するものではない。
行政事件について司法審査を受ける権利は、憲法上保障されていないため、法律により司法審査を排除することができる。
裁判の公開は、憲法上の原則であり、いかなる場合も非公開とすることは許されない。
正解: 3
解説:
肢1× 前述のとおり、裁判を受ける権利は、すべての事件について三審制を保障するものではなく、法律により一定の範囲で上訴を制限することができます(最大判昭和23年7月29日等)。
肢2× 憲法37条3項は、刑事被告人が、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができ、被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付すると規定しています。貧困その他の事由により弁護人を選任できない場合、国が弁護人(国選弁護人)を付する義務があります。
肢3○ 最高裁(最判昭和29年1月22日)は、民事訴訟において、訴訟費用の予納を命じられた者が予納しない場合に訴えを却下することは、裁判を受ける権利を侵害するものではないとしています。訴訟費用の予納は、訴訟制度の円滑な運営のための合理的な要件です。
肢4× 憲法32条は、裁判を受ける権利を保障しており、行政事件についても司法審査を受ける権利が保障されています。法律により司法審査を全面的に排除することは、憲法32条に違反します(通説・判例)。
肢5× 憲法82条1項は、裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行うと規定していますが、同条2項は、裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審を公開しないで行うことができるとしています。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければなりません。
🎯 学習のポイント
選挙権の性質: 憲法上直接保障された権利であり、国民主権の原理に基づく。制限は、やむを得ない事由がある場合に限り、合理的な範囲で許される(判例)。
議員定数不均衡: 投票価値の平等は、憲法上の要請であり、最も重要かつ基本的な基準。最高裁は、「違憲状態」「違憲」「選挙無効」を段階的に判断し、事情判決の法理により選挙無効を回避することが多い。
請願権: 請願をしたことを理由とする差別的取扱いの禁止(憲法16条)。請願に対する回答を受ける権利までは保障されていない。
裁判を受ける権利: 民事・刑事・行政裁判を受ける権利を保障(憲法32条)。すべての事件について三審制を保障するものではなく、法律により一定の制限が許される(判例)。
国家賠償請求権: 国家賠償法1条(公務員の不法行為責任)と2条(営造物の瑕疵責任)を区別。2条の営造物責任は無過失責任である。
刑事補償請求権: 無罪判決を受けた者が、抑留・拘禁による補償を請求する権利(憲法40条、刑事補償法)。補償は法律上当然に認められる権利であり、裁判所の裁量によるものではない。
参政権と国務請求権は、国民主権と人権保障を実効的に支える重要な権利です。選挙権の性質、議員定数不均衡の判例(違憲状態・違憲の判断枠組み)、国家賠償法1条と2条の区別、裁判を受ける権利の内容と限界など、判例の射程を正確に理解しましょう。特に、在外邦人選挙権制限違憲判決、一票の格差訴訟の判例は頻出です。条文と判例をセットで押さえ、得点源にしてください!
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