着ていた服を思い出すとき
わたしは昔、趣味が飛び抜けて悪いのか、それとも飛び抜けて良いのか分からない、
明るい水色のコートを着ていた。
そのコートの表面はなぜかボコボコしていて、着心地はあまり良くなかった。
一方、今のわたしは、無難な紺色のコートを着ている。
なんの変哲もないコートだが、ふんわりとした生地で暖かく、着心地は最高だ。
わたしは、この水色のコートから紺色のコートに至るまで、さまざまなコートを着た。
クリーム色のロングコート。
黒のダウンジャケット。
白の短いコート。
他にもあったと思うが、もう思い出せない。
あの頃の時間を両手ですくっても、はっきりとした輪郭を見せてくれるものは、ほとんどない。
着ていた服のことも満足に思い出せないなんて、なんということか。
それとも、着ていた服のことも忘れるくらい、人生を颯爽と走り抜けていたということか。
わたしが忘れ去ったコートたちは、わたしの記憶が届かない場所で、光やら暗闇やらを放っているだろう。
わたしが生きた証として。わたしが生きた遺書として。
お問い合わせはこちらから。
もし気に入ってくださったら、こちらの有料エッセイもどうぞ。
文章を整えるお手伝いを始めました。ご依頼はココナラから。
文章のサムネイルの絵は、自分で描いています。
ゆっくりペースですが、絵のお仕事もお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください!
いいなと思ったら応援しよう!
気に入っていただけたら珈琲一杯分の応援をいただけると嬉しいです!チップは創作活動のエネルギーに変えさせていただきます☕️