ボブ③-14/24 秘密のガールズトークと、愛情増し増しの「あーん」
エルや江藤さんの奥さんも経験してきた、家族ゆえの「過干渉」。環境の変化が心を溶かすというアドバイスに、亜夢の心は軽くなる。
江藤夫人が、二人の会話に優しく割って入った。
江藤夫人:「亜夢ちゃん、大丈夫よ。こういう悩みは昔から一定数あるもの。実は、ウチも例外じゃないのよ」
亜夢ちゃん:「えっ? 江藤さんのお子さんもですか?」
江藤夫人:「ええ。ウチはお兄ちゃんと妹だけど、お兄ちゃんがもう……父親に近い感情なのね。服装が派手だの、あんな彼氏はダメだのと、妹のこととなるともう過干渉で。可愛いさ余ってなのかもしれないけど、それも立派なシスコンね」
亜夢ちゃん:「お二人のお話を聞いて、気持ちが少し楽になりました。私だけじゃないんだって……」
エル:「弟君は、彼女がいたことはあるの?」
亜夢ちゃん:「いえ、たぶん……ないと思います」
エル:「なら、ライクと同じね。環境の変化や時間が、自然とその尖った感情を薄めてくれるはずよ。この話、知ってるのはボブだけ?」
亜夢ちゃん:「はい。ボブさん以外には、お二人にしか話していません」
エル:「じゃあ、これは私たち三人の秘密にしておきましょう。ボブを驚かせるための『作戦会議』ってことで!」
亜夢ちゃん:「はい! ありがとうございます!」
パッと明るくなった亜夢ちゃんの顔を見て、エルが慌てて叫んだ。
エル:「あっ! 亜夢ちゃんごめん、話に夢中でほうれん草の仕上げが……!」
亜夢ちゃん:「ごめんなさい! 私こそ、お悩み相談室みたいになっちゃって……」
江藤夫人:「あら、これはほうれん草に何を合わせたの?」
亜夢ちゃん:「アーモンドとピーナッツとカシューナッツです。ボブさんのレシピなんですけど、歯応えが楽しいんですよ。……奥さんも、試食いかがですか?(笑)」
亜夢が小皿を取り出すと、奥さんは少し遠慮がちに言った。
奥さん:「ええ、いいの? 自分で頂くわよ」
亜夢ちゃん:「大丈夫です、誰も見てませんから。はい、どうぞ……あーん!」
奥さん:「ちょっと、こんなおばさんに……恥ずかしいわ(笑)」
エル:「大丈夫ですよ! 私もさっきしてもらったんです。その方が亜夢ちゃんの愛情をダイレクトに感じられて、美味しさ増し増しなんですから!」
促されるまま、奥さんはおずおずと口を開けた。
奥さん:「……んん! これ、絶品ね! 種類の違うナッツの食感が絶妙に混ざり合って。そこに亜夢ちゃんの愛情が加わって、最高だわ(笑)」
亜夢ちゃん:「ありがとうございます! 照れますけど、嬉しいです。じゃあ、盛り付けますね!」
種類の違うナッツのように、年齢も立場も違う三人のガールズトーク。
それぞれが響き合い、高め合う。そんな温かい空気の中で完成した料理が、次々とリビングへ運ばれていく。
キッチンの「秘密」を共有した三人の顔には、お鍋の湯気よりも温かな、晴れやかな笑顔が浮かんでいた。
