ボブ①-9 容体は『超いいっす!』
病院のスタッフも呆気にとられた、救急隊長の高らかな宣言。
丸坊主になった不器用なヒーローを待っていたのは、最高のご褒美だった。
仲間たちの冷やかしと、愛おしい彼女。
救急車のハッチが開くと救急車の隊長が満面の笑みを浮かべて出てきた。
隊員2人も笑顔笑顔そして患者と付き添いの女性も楽しそうに笑って出てくる。
病院のスタッフがその光景に呆気にとられたが…
医師: 「隊長さん、血圧急上昇で容体急変って連絡でしたが…」
隊長さん: 「血圧正常、容体は超いいっす!」
医師: 「はあ?」
治療を終えたボブが病室にいる。ボブの頭は、治療のために丸坊主になっていた。
亜夢ちゃん :「ボブさん……その、意外と似合ってます」
亜夢ちゃんが恥ずかしそうに言うと、ボブは照れくさそうに短い頭を撫でた。
県の職員A:「池堂さん、本当に色々と…」
県の職員B:「今回は池堂さん達の迅速な対応で、被害を最小限に抑えられました。ありがとうございました」
ボブ:(静かに)「いえ、うちらだけでなくて、あそこにいた皆さんが協力し合ったからです」
そこに、洋太、果音、ライク、エルが賑やかに押し寄せる。
洋太:(ドアを開けるなり)「ボブ、おめでとう」
ボブ:「おい、俺怪我人だぞ!何だよおめでとうって!」
4人はニヤニヤしてから、果音の掛け声で盛大に拍手する。居合わせた県の職員2人もつられて拍手。
果音:「ボブ、亜夢ちゃん、お付き合いおめでとう!」
ボブ:(顔を赤くして)「な!何でしっ、だ、誰に聞いた?!」
果音:「ナースセンターで看護師さんが全部教えてくれたの、笑」
ボブ:「全部って…」
果音:「全部よ。容体急変、顔面紅潮から愛の告白まで全てよ!」
ボブ:(心の声:あの救急隊員め!)
ボブ:「わかった!もう言わなくていい。じゃ、改めて紹介します。“俺の彼女”の千寿亜夢ちゃんです」
ライク&洋太&果音&エル:「ヒューヒュー!」
ボブ:「ヒューヒュー言うな!」
ライク:「ボブ、顔面紅潮!」
洋太:「血圧上昇!」
果音:「容体急変!」
ボブ:「もう勘弁してくれ」
皆:「笑笑笑笑笑」
ボブ:「おい、あんまりはしゃぐな、ここ病室だぞ。それから俺はこの程度で済んだけど、あのママさんかなりの火傷だったろ?」
県の職員A:「あの、ちょっといいですかね。…奥さんの火傷はかなりでしたけど、皮膚移植する程のレベルじゃないそうです。
ただ、池堂さんがせっかく注意したのに、逆ギレして花火だなんて言語道断です。しかも旦那さんは未だに奥さんの元に来てないんですよ」
みんな:「えええーっ!」
呆然とするみんな。
県の職員がドアに向かう。
県の職員A:「池堂さん、本当に色々と…」
亜夢ちゃんが、ボブの脇にすっと立つ。
亜夢ちゃん:「お世話になりました、ありがとうございました」
そんな亜夢ちゃんを見て、洋太たちが微笑み合う。
4人:(心の声:亜夢ちゃんはもう、ボブの立派な彼女だな)
洋太:「初めて経験したけどカセットコンロの爆発ってすげーんだな」
ライク:「夕方のニュースに出るらしいぞ」
果音:「私も出るのかな」
前髪を整える。
洋太:「出る訳ないだろ!俺らがいる時にはそんな人いなかっただろ。しかも何だお前、今更前髪気にして、笑」
果音:「身だしなみの条件反射よ」
ライク:「条件反射と言えばボブ、お前の反射神経すげぇな!
あの瞬間で亜夢ちゃんをギュッとしたんだろ?やっぱり空手のおかげか?」
ボブ:「まぁ、そんなとこだ」
仲間たちの笑い声を聞きながら、ボブはそっと窓の外を見た。
(空手のおかげもある。でも、あのヤカラの所から戻る時、俺は決めてたんだ。もし今何かあったら、自分の命に代えてでもも亜夢ちゃんだけは守るって)
誰にも言わない、自分だけの誓い。それが果たせた安堵感が、今、じんわりと胸に広がっていた。
果音:「でもそのおかげで亜夢ちゃんの恋心も爆発したんでしょ?笑」
亜夢ちゃん:「えっ、やっ、果音先輩それは%〒♪」
ボブの肩をビシバシ叩く。
果音:「さっき言ったでしょ、全て聞いたの!笑笑」
亜夢ちゃんの頬がみるみる赤くなる。
洋太:「亜夢ちゃん、顔面紅潮!」
ライク:「血圧急上昇!」
果音:「容体急変!」
みんな:「笑笑笑」
亜夢ちゃん:「もうやめて下さい!」
両頬に手を当てて更に赤くなる。
ボブ:「そうだよ!悪ノリはもうやめてくれ」
果音:「ごめんね2人共。ちょっとやり過ぎたかもね。でもね、私ら嬉しい!」
洋太、ライク、エルが大きく頷く。窓から差し込む夕日は、ボブの青々とした坊主頭と、亜夢ちゃんの真っ赤な頬を優しく照らしている。
始まったばかりの二人の物語を祝うように、風がカーテンを静かに揺らしていた。
