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「よりみち」を目的地に。――絶望から生まれた、明日への希望

1月17日、あるセミナーが開催されます。登壇者のよりみちさんは、 画業、絵本作家、イベント主催、そしてセミナー講師と多彩な肩書を持つ人物です。その活動の核にあるのは常に「人と交流し、気づきを得る」という純粋な探求心。

しかし、その穏やかな佇まいからは想像もつかないほど、彼の人生は波乱に満ちていました。孤立した幼少期、21歳でのうつ病発症、そして数十年間に及ぶ闘病生活。

絶望の底から這い上がった彼が、今、セミナーで伝えたいこと。インタビューを通して見えてきたのは、完璧ではない自分を受け入れながら、一歩ずつ前に進んできた物語でした。

「応援アカウント」と呼ばれる理由

「よく人に言われるんですよ。『よりみちさんって応援アカウントだよね』って」
よりみさんの活動を見ると、一般的な成功法則とは一線を画す、不思議な引力が働いていることが分かります。2023年7月の鎌倉での個展は、完全無料。商品も名刺も置かないという異例の形式でした。

ビジネスとは無縁の場所から始まった活動は、今や多くの人を巻き込むムーブメントになりつつあります。
「応援アカウント」と呼ばれる理由は、その活動プロセスと人柄にあります。必死に襷をつなぐ駅伝選手のように、試行錯誤のプロセスをすべてさらけ出していくのです。

「駅伝の選手を見ていて、応援しない人って多分いないと思うんですよ」

彼はこれを「プロセスエコノミー」という概念で説明します。完成品だけを見せるのではなく、壁を作らず、走り続ける姿を見せることで、人々は自然と「応援したい」という気持ちになるのです。

しかし、このオープンな姿勢はもともと持っていた性質ではありません。その裏には、長年抱えてきた数々の困難と、それを乗り越えるために築き上げた彼自身の経験がありました。

「大縄跳びの輪」に入れなかった少年が、生を選び取るまで

「集団行動ができず、土いじりをし、独特な世界を作っていました。イマジナリーフレンド、空想の友達がいた気がするぐらい一人で人形遊びをして過ごしていましたね」
例えば、小学校時代の「大縄跳び」の記憶。何度もその輪の中に入ろうとしたけれど、うまく入れない。コミュニケーションが上手くいかなかったといいます。

当時は「発達障害」という言葉がまだ社会に浸透していない時代。集団に馴染めない彼に、周囲の大人たちは戸惑うばかりでした。そんな環境の中、よりみちさんは静かに孤立していきました。

彼が語る「生きづらさ」の本質は、社会の変化にも起因しています。
社会が効率化され、自動改札機のように「規格外」を許さなくなった現代。目に見えない障害を持つ人々は、生きづらさを感じやすくなっているのです。

「生きづらさは、生きられないことではない。人が一呼吸するところを、私は三呼吸しないといけない。人より頑張らないと、歩調が合わせられないんです」

この社会との歩調のズレは、少しずつ、しかし確実に彼の心を蝕んでいきました。コミュニケーションでの度重なる失敗。心のコップの水は溢れていきます。そして、ついに21歳でうつ病を発症しました。

「21歳。夢あふれる青年が、うつになり数年ベッドの中にいました。未来はないと思いましたね」

その後、時間が止まったかのような、真っ暗な日々が始まります。未来が閉ざされたように感じる日々だったそう。

しかし、転機は37歳の時に訪れます。父親の死をきっかけに「生活を立て直さなければ」と決意し、福祉施設に通い始めました。絶望の中から生を選び取った瞬間でした。

人生を変えたコミュニケーション訓練

福祉施設で受けたのは、「コミュニケーションの徹底的なトレーニング」でした。この経験が彼の人生を根底から変えることとなります。

「他人から指摘されたことを、自分の課題として認識する。問題意識として捉え直すことが大切です。この『振り返り』が、僕のコミュニケーション能力を飛躍的に向上させました」

現在の穏やかな姿からは想像もつかないですが、かつては衝突が絶えなかったといいます。「チームはすぐに破壊してしまいました。もともと巻き込み力は高かったようで、人は集まるのですが、うまくいかないことが多かった」

「振り返り」と「自己理解」を繰り返す努力を続けましたがコミュニケーションスキルの向上に即効性はありませんでした。少しずつ、少しずつヤスリがけをするように変化していったそうです。

そして今も、海面下で必死に足を動かしながら「心の調整」を続けています。人より疲れやすい特性は変わりません。

しかし、彼はその「疲れ」や「弱さ」の経験を、誰かの力になるための発信や行動に変えています。


「自分もたくさん失敗してきたからこそ、あなたの良さがわかる。一緒に活動しよう。こうすればもっと良くなるよ」

つい「おせっかい」を焼いて伴走してしまう。彼の言葉が多くの人の心を動かすのは、高みからのアドバイスではなく、同じ痛みを抱え、今も必死にもがき続けている仲間としての寄り添い型のスタイルだからです。

「よりみち」の始まり――5回目の不合格と運命の言葉

福祉施設での訓練を経て、彼は障害者雇用で採用され、生活の立て直しに成功します。40代を迎え、自分の人生を見つめ直し、キャリアコンサルタントの資格取得を目指しました。

しかし、試験に5回連続で不合格。「やっぱり自分には価値がないのかな」と、再び自信を失いかけます。
そんな時、知人から過去の作品に対してかけられた言葉が人生を変えました。

「なんで自分の作品を公開しないの? それは人に対しての損失だよ」

自分では価値がないと思っていたものが、世界にとっては「損失」かもしれない。この劇的な認識の転換が、2023年にX(旧Twitter)で「よりみち」としてのアカウントを始動させる直接的なきっかけとなりました。

長い苦しみの時期を経て、ようやく彼の「よりみち」が本道になる可能性を秘めた瞬間だったのです。

「走りながら修正する」という哲学

そんな、よりみちさんの活動スタイルは独特。彼は自分のスタイルを、旅に例えます。

「何の準備もせずに旅に出るけれど、旅先で人と話してカバンを手に入れ、地図を手に入れる。最初の旅はボロボロだったかもしれないけれど、2回目の旅は徐々に道具が揃う。もうすでに皆さんからたくさん宿題をいただいているから、それを直していけば、結果として良くなるんです」

完璧な準備を待たず、まず行動する。福祉施設で学んだ「振り返り」の力があったからこそ、彼は道中で得たフィードバックを成長の糧に変えることができました。

今回のセミナーも、まさにそのスタイルで動き出しました。たった一日で構想を描き、スピード感を持って動きながらも、人への配慮を忘れないよりみちさん。
セミナーについて、率直に語ってくれました。

「ふんわりして始まったセミナーですが、だからこそ、みんなの意見を反映しやすい。完璧に作っていなかったからこそ、問題点もすぐにブラッシュアップできるんです」

完璧ではないことを認める。その弱さこそが、彼の強さであり、応援される人柄につながっているのです。

過去を肯定する力――リフレーミングという技法

長い苦しみの時期を経た今、自分の人生を肯定できるのはなぜか。それは「リフレーミング」という技法にあります。

「過去は変えられないけど、未来を変える。そのために今を変える。過去は変えられない。でも、過去の捉え方は変えられるんですよ」

これは単なるポジティブシンキングとは違うと強調します。
「ポジティブシンキングは、『気にしないで行こう』なんですよ。リフレーミングは捉え方自体を変えます。弱い自分がいることを認める。捉え方を変えると逆風に強くなるんです」

そして彼はこう続けます。
「痛みを知っている人間だからこそ、痛みについて解説できるんですよ。あの経験があるから今があります。だから、今、私は生きてると素晴らしく感じています」

21歳でうつになった青年は、その経験を価値へと変えていました。

セミナーに込めた想い


1月17日のセミナー。よりみちさんが壇上で伝えたいのは、キラキラした成功体験ではありません。

「セミナーに来たことで明日ちょっとした気づきがあって、違う人生を歩めるようになったらいいなと思っています。即行動じゃなくてもいいんです。だってすぐ行動するのは大変じゃないですか。でも、『セミナー来て良かったな』と思ってもらえればそれでいいんです」

彼は「先生にはなりたくない」と言います。上から教えるのではなく、同じ立場で伴走することで、誰にでもある可能性を引き出したいと。

「どんな方に対しても対等である気持ちを忘れちゃいけないと思っています。アカウントが大きかろうと、小さかろうと関係ない。自分が特性を持って押しつぶされ続けた結果、嫌だと思ったことはしたくないんです」

この誰に対しても対等な目線は、自身の経験からくる大切な気付きだったのです。

今も続く旅――完璧ではない自分を受け入れて

取材の最後、よりみちさんはこんな言葉を残しました。
「中学生の時に不登校になった自分が、もしも今の私に出会ってたら、不登校じゃなかったのかもしれない。そうしたら全然違う人生を歩んでいたと思うんですよね」

彼の旅は、過去の自分のような誰かを救うための旅。そして、その旅は今も続いています。完璧ではない自分を受け入れながら、今も戦い続けるよりみちさん。その姿を見せることで、誰かの背中を押せるかもしれない。そんな思いで、活動を続けています。

2023年から始まった「よりみち」の活動。この2年間で多くの人を巻き込み、気づきを与えてきました。商品は3冊の書籍のみ。それでも、人々は彼に惹きつけられます。

1月17日、セミナーの壇上に立つのは、完璧な講演者ではありません。「よりみち」を楽しみながら、私たちと同じ目線で歩く一人の旅人です。

「自信がないけど、やってみよう」

孤立していた少年は、コミュニケーションの壁にぶつかり、絶望を経験しました。それでも、自己と向き合い、人からの宿題を力に変えてきました。その計画なき「よりみち」は、いつしか多くの人を巻き込み、互いを応援する温かいコミュニティへと成長しています。

よりみちさんも、かつては、あなたと同じように迷い、悩み、それでも前に進もうと必死にもがいてきました。
そんなよりみちさんの言葉は、きっとあなたの心に、小さくても消えない、明日への希望の灯をともすはずです。


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森田かえ|神奈川の取材ライター よろしければ応援お願いします! いただいたチップは、大切に、今後の活動の向上のために使用させていただきます!

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