不思議な朝
我が家では不思議なことがよく起こります。
冷蔵庫からソースをとって、さあ使いましょ♪と、見ると焼肉のタレでした。
なぜ。
朝にフルーツグラノーラを食べましょ♪と、買ってきたばかりの袋の封を切ろうとすると、もう切られていました。
なぜ。
気づかないで買ってしまったんだわ。
これは……
異物混入…!!!(思わず口元を手で押さえます)
どうしましょう!
通報!
どこへ!?
スーパー?
スーパーでいいですか?
(時計を見る。まだ7時。)
やってません!!
どうしたら、どうしたらー!!!
と、あたふたしてふと見ると、
袋の横に封の切れっ端が…。
私か。
私なのね。
切ったんだわ。
全然記憶にないけど。
だって、切れっ端があるもの。
と、そんな怪現象がしょっちゅう起きます。
夫も子どもも私があたふたしてても、もはや動じなくなりました。
そして、
「あ、あった。私か。」
と、言っている私をとても静かに冷ややかな眼差しで見守ってくれています。
ありがとう。
数年前、うちのお寝坊花子ちゃん(娘)が、あと15分で家を出ないとあなた遅刻ですよ。
という時間に起きてきました。
非常にゆっくりとした足取りで、はんなりはんなりと進んできて食卓に座ります。
(食べるんかい!?)
と、思いますが余計なことは言わず温かく見守ります。
もう、トーストは用意されています。
好きなジャムを濡れるように、数種類のジャムとスプーンも用意されています。
1分経過。
1ミリも動きません。
地蔵か。
「もう、あと10分後には出ないと間に合わないよ」
と、一応声をかけてみます。
右手がゆるゆると動き始めます。
ゆるゆると
ゆるゆると
ゆるゆると
遅っ!!!
やっと、トーストを捕まえ、ゆっくりと口に運びます。
かぁりぃ……
非常に小さい一口
もぉぐもぉぐもぉぐもぉぐ…
………………かぁりぃ
日が暮れるわ!!!
「は、花ちゃん。もうちょっと急がないと、ほんと、もうやばいよ!」
目が合う。
かぁりぃ。
ぬおぉぅあぅあぃぃぃぃぃーー!!!
代わりに食べてやりてぇーーー!!!
かぁりぃ。
迫る時間を知ってか知らずか、食べきることを諦めてはいない様子。だがしかし、フォームを崩す素振りもない。
大物です。
我が子ながら大物です。
しかし、もう本当に時間がやばい。
「花ちゃん!ほんと、もう無理だわ!諦めよう!
歯を磨いて着替えしてくれぇ!」
目が合う。
ゆるりゆるりと食べかけトーストを皿に戻す。
のそりのそりと、動き始めトイレへ向かった。
この間、無駄に足踏みする私。
娘はとても生真面目な性格です。
人の目を気にします。
先生に怒られることも絶対にしません。
遅刻なんてもってのほか。
おプライドが許しません。
が、悲しいかな朝が弱い。
そして、動きが遅い。
毎朝のようにこのような攻防が起こりますが、今日は特に時間がない。
頼む!早くトイレから出てきてくれ!!
寝てんのか!?ってくらい遅くないかい!?
ギィ…
出てきました。
のっそのっそと洗面台に向かいます。
私は足踏みします。
ゆるりゆるりと手を洗い、ふきふきしてのっそのっそ。
いやいや、そこで顔を!
お顔を洗ってらっしゃい!
のっそのっそ戻って顔を洗います。
そうそうよ!花ちゃん!いいわ!それでいいわ!
と、足踏み。
一事が万事こんな調子でもなんとかギリギリ今家を出ればっ……という時間に着替えまで終わりました。
時間割は真面目な花ちゃん、昨日の夜のうちに終わっております。
あとは、家から出すだけ。
と思った矢先、
「ママ、寝癖、なおして」
今から!?
もう寝癖なんていいがな!
はやく行きんしゃい!!!
「えー……やだ」
ぬぉうあぁいぃええぇいおうおうおぅぅぅ!!
「座って」
と、諦めて娘を食卓の椅子に座らせます。
でも、気持ちは焦ってます。
とりあえず、寝癖直しをブシュブシュ振りかけます。
まんべんなく、荒く、速く、ブシュブシュと…
……あれ?
ふんわりとファブリーズの香りがします。
「…ママ、ファブリーズの匂い、しない?」
…します。
恐る恐る見た私の手には、紛うことなきファブリーズが握られていました。
ヒィィィィィィーー!!!
ファ、ファ、ファブリぃーずぅ!!!
ファブリーズは人にかけていいものですか!?
大丈夫ですか!!??
小学生の頭皮にかけて、害はありませんか!?
毛穴からなにがしかのなにがしかが入っていきやしませんか!?
します!するでしょう!そうでしょう!!
ダメだぁ!!!!!!!!
「花ちゃん!
今すぐシャワーを!
2回!念入りに2回洗ってらっしゃい!」
と、叫びます。
この時ばかりは、娘も若干小走りでシャワーへ向かいます。
ああ、もうだめだ。
もう遅刻でもいい。
なんで遅刻したんだ!!
と、先生に怒られたら、
「ママに頭にファブリーズをかけられたんです」
と、答えなさい。
先生もそれ以上怒りはしないでしょう。
大丈夫。
ママは先生から変な目で見られてもいいのです。
そんな目は慣れっこです。
私を踏み台にあなたはゆきなさいっっっ。
と、諦めの境地でシャワーに入らせ、出てきた娘の髪を乾かし、車で送る。
間にあった。
あんなに時間がないと思っていたのに。
間に合った。
娘の髪もサラサラだった。
結果、寝癖はなくなった。
娘を送った帰り道、
清々しい朝日を浴びて、
鼻歌を歌いながら、
仕事に向かった。
そして、
いつもより早く会社に着いた。
不思議な朝だった。
